緊急事態宣言の再発令でさらに厳しい状況に。文化芸術に対する公的支援を求める「WeNeedCulture」
舞台芸術、ミニシアター、ライブハウス / クラブの三者が、文化芸術に対する公的支援を求めて取り組んでいるキャンペーン「WeNeedCulture」。このキャンペーンによる新たなアクションが始動し、1月28日に関係者らが記者発表を行なった。
昨年5月に始動した「WeNeedCulture」は、SAVE the CINEMA(映画)、演劇緊急支援プロジェクト(演劇)、SaveOurSpace(音楽)の3団体による共同キャンペーン。新型コロナウイルスの感染拡大によって文化芸術のあらゆるジャンルが苦境に立たされていることを受け、業界、団体の垣根を超えて「文化芸術復興基金構想」を提案している。
大都市圏を対象にした緊急事態宣言の再発令を受け、1月13日、14日には文化庁・財務省・経産省、超党派の国会議員へ要望書と、業界の置かれている厳しい状況を示すアンケート結果などを提出していた。
東京・新宿のライブハウス、新宿ロフトで行なわれた会見には、演劇緊急支援プロジェクトから劇作家・演出家の瀬戸山美咲氏、日本児童・青少年演劇劇団協同組合 代表理事の吉田明子氏(リモートで参加)、SaveOurSpaceからロフトプロジェクト社長・加藤梅造氏、LIVE HAUS・スガナミユウ氏、#SaveTheDanceから一般社団法人JDDA理事・クラブとクラブカルチャーを守る会のNaz Chris氏、SAVE the CINEMAから弁護士・プロデューサーの馬奈木厳太郎氏、司会を務めた映画監督の西原孝至氏が登壇した。
「#失くすわけにはいかない」。文化芸術を愛する鑑賞者やユーザーの声を集める新たなアクション
同キャンペーンでは引き続き関係各所に声を届けるため、1月28日から「アート・カルチャー・エンターテインメントを愛するすべての方への署名とアンケート」を呼びかけるアクションをスタートした。「#失くすわけにはいかない」のハッシュタグをかかげ、文化芸術事業に携わる当事者だけではなく、その受けとり手の声を集めることを目的にしたアンケートと署名だ。これまで「WeNeedCulture」が国や地方に求めてきた要望への賛同と、文化を愛する人々の声を集めるような内容になっている。
署名とアンケートの記入はこちらから
新たなアクションの始動についてスガナミユウ氏は、「僕らは(文化芸術事業に携わる)当事者の立場でやっているが、今回はいろんなジャンルの文化芸術を愛するユーザーの人たち、一人ひとりに文化は大事だという声を届けてほしいという考え。当事者はもちろん、ユーザーの人たちも一緒にアクションを起こしたいということで署名活動を始めました」と説明。現在支援が行き届いていない現状が、人々に見えづらくなっているという危機感が背景にあったと明かした。
「昨年から署名やクラウドファンディングなど、色んな形でサポートをいただいたが、また感染者が増えて状況が悪くなり、そんななかで二度目の緊急事態宣言があった。今年の方が地獄なんじゃないかという危機感があります。その状況を共有するために、発信を続けていきたい」
これまでにSaveOurSpace、演劇緊急支援プロジェクト、#SaveTheDance、SAVE the CINEMAの各団体でも署名を募っており、累計では50万筆を超えているという。減収に応じた適切な補償、フリーランスへの支援などを求めてきた。スガナミ氏は、「今後は全体で100万人くらいの、文化芸術を愛する人の声ということで、まとめて届けられたらと思っている」とし、今回の署名については「(現時点で緊急事態宣言の実施期間最終日である)2月7日までに10万筆くらい集められたら」と話した。
#SaveTheDanceでも現在署名を募っている。署名はこちらから
文化芸術はアーティストや業界の従事者だけでなく、受け手にとってもなくしてはいけないもの
新たに掲げる「#失くすわけにはいかない」という言葉については、西原氏は「今までは自分たちから発信して、自分たちを支えてほしいというような活動だったが、文化芸術って僕たちだけでなくて、見る人にとってもなくしてはいけないものだと痛感した」。
また瀬戸山氏は「積極的な活動」が条件であることや、対象が「文化芸術関係団体・文化施設」であること、申請者の建て替え払いが必要であることなどの課題がある文化庁第三次補正予算における支援策「ARTS for the future!」になぞらえ、「『ARTS for the future』ではなくて『now』、いま生きながらえないと未来もない」と訴えた。
スガナミ氏は「『#失くすわけにはいかない』はハッシュタグです。みんな大切なものってそれぞれ違うと思うので、ユーザーの人たちも含めて声を発していってほしいなと思う。ただ好きなものを守りたいという純粋な気持ちを引き上げていきたいという意図があります」と話し、Naz Chris氏は「あとは当事者が傍観者になったら全てが終わりだと思うので、そうなってほしくないなと思います」と付け加えた。
営業時間短縮の「働きかけ」に応じても協力金がないといった現状
また会見では、登壇者が各業界の窮状や政府による文化芸術への支援策の不十分さ、「使い勝手の悪さ」といった問題点を訴えた。今回の緊急事態宣言下では、飲食店に対し20:00までの営業時間短縮が要請されているが、飲食を伴わない施設に対しては「要請」ではなく「働きかけ」となっている。「働きかけ」には応じても協力金が支払われないため、ライブハウス、クラブ、劇場や映画館などは苦しい状況を余儀なくされている。
リモートで参加した日本児童・青少年演劇劇団協同組合 代表理事の吉田明子は、児童演劇の置かれている厳しい現状について述べ、幼稚園・保育園、小中学校での公演数が激減し、各団体が経済的に逼迫していると明かした。子供に舞台を届ける劇団がなくなっていき、子供たちが舞台芸術に触れる機会が減っていくと、ゆくゆくは舞台芸術の担い手の不足、舞台芸術を愛する人の激減にもつながると危機感を示した。
今回の緊急事態宣言下でも政府による支援策は打ち出されているものの、フリーランスに対する支援策が不足しているなど課題が多く、また政府は「補償はしない」という姿勢を貫いている。WeNeedCultureでは引き続き、議員らへのロビイングと世論喚起を行なっていく構えだ。
「#失くすわけにはいかない」を掲げる、新たな署名とアンケートはこちらのフォームから記入を受け付けている。
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