CINRAと、現代日本における女性の健康推進にまつわる取組みを行うWomen's Health Actionのプロデュースによって、3月6日、7日の2日間にわたって開催された、心と身体について医師ら医療ヘルスケア分野の専門家とアーティスト、クリエイターたちが話し合うオンラインイベント『わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめよう~』。
3月1日から8日までの「女性の健康週間」と、3月8日の「国際女性デー」に合わせ、CINRA.NETのYouTubeと、She isのInstagramから配信されたイベントのダイジェストを、前後編でお届け(前編はこちら)。今回は2日目の模様をレポートする。
月経カップを世に広めたCEOがカナダから出演。起業家としての考えにスプツニ子!も共感
2日目、最初のセッションとなったのは『月経カップを世界に広めたキャリーンさんと考える、女性たちの可能性 Sponsored by Diva Cup』。前日に続きアーティストのスプツニ子!さん、そしてカナダからDiva International CEOのキャリーン・チェンバーズ=サイニさんが出演した。月経カップである「ディーバカップ」が発売されたのは2002年。現在は世界40か国で販売されているものの、理解を得ることが困難な時期も長かったそう。Diva社とゆかりの深いインテグロ株式会社の神林美帆さんは、ディーバカップの魅力として、商品の品質の高さ、発売20年の実績、サイズの豊富さをあげ、従業員の労働環境や、社会貢献、環境問題に取り組む姿勢を見て、世界中の女性から支持される理由が理解できたと言う。
スプツニ子!さんからは、キャリーンさんにいくつかの質問が投げかけられ、「新しいチャレンジをしたい女性へのアドバイスを」との問いに対する「クレイジーなアイデアは存在しない。恐れがあるからと言って自らの歩みを止めないでほしい」という回答には、自身もチャレンジし続けてきたスプツニ子!さんも、実感を込めて頷いていた。
犬山紙子、劔樹人夫妻が登場。パートナーと互いに支え合う「妊活」のかたち
『性別にかかわらず男女ともに考えたい、協力して支え合う「妊活」のこと Sponsored by ロート製薬株式会社』では、イラストエッセイストの犬山紙子さん、ベーシストで漫画家の劔樹人さんご夫妻と、男女がともに協力し、支え合う「ふたり妊活」の考え方を広めているロート製薬の小川未紗さんの3名で「妊活」をテーマに話し合った。自身の妊活時について、「(劔さんが)『サポート』じゃなく、自分も頑張ると言ってくれたから孤立感がなかった」と話す犬山さんに、「頑張る側と支える側ではなく、対等でありたかった」と言う劔さん。
ロート製薬が2018年から発表している『妊活白書』の最新版によると、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことにより、妊活に取り組む人たちにも意識の変化が見られ、「パートナーとより話し合うようになった」「ふたり妊活ができている」と答えた人の割合もぐっと増えたとのこと。こうした結果を受け、これから「ふたり妊活」に取り組む人たちに対し犬山さんは「ちょっとずつ話し合いの成功体験を積み重ねて、意見を尊重し合うことができたら、妊活も含めいろいろな話し合いがしやすくなると思います」とアドバイスを送った。
SHE IS SUMMERのトーク&ライブ。一人の時間を慈しむ女性を描いた新曲を披露
ここからは趣向を変え、今年4月をもってSHE IS SUMMERとしての活動を完結するアーティストのMICOさんを迎えた『SHE IS SUMMER・MICOと「女の子」を考える スペシャルトーク&ライブ』。活動を通じて、「女の子たちに自由な勇気を」というメッセージを発信してきたMICOさんは、「女の子を楽しみたい人も、女の子らしいことが嫌な人も、同じだけ自由になれるといいし、一人の中にどっちの面もあっても良いと思う」と自身の考えを話す。
ライブに移ると、アコースティックギターの音色に寄り添うように時折目を閉じながら、囁くようにしっとりと“会いに行かなくちゃ”を歌いあげ、「このイベントにぴったりだと思った」と、一人の時間を慈しむ女性を描いた新曲“moon & kitchen”を初披露。最後に、ファンからの悩みを聞くきっかけになった曲として“あれからの話だけど”をしなやかに歌いあげ、ライブを終えた。
シオリーヌ×瀧波ユカリ。ピルや避妊のこと、性に関することをそれぞれの視点で語る
『いまから話そう、知っているようで知らないピル・避妊のこと Sponsored by 株式会社ネクイノ』には、前日も出演した助産師、性教育YouTuberのシオリーヌさんと、漫画家の瀧波ユカリさん、あおもり女性ヘルスケア研究所所長の蓮尾豊医師が登場。生理を楽にする選択肢の一つであるピル。25年間、中高生を中心に性教育を行なってきた蓮尾医師は、性教育の現場で使用しているスライドをもとに、ピルは高い避妊効果だけではなく、副効用として生理痛の改善や生理周期の調節などの役割があることを説明し、婦人科のかかりつけ医を持つことの大切さを訴えた。
高校生の頃読んだティーン向けファッション誌の性に関する特集記事に書かれていた「身体に異変を感じたらすぐ病院に行きましょう」という言葉が印象に残っており、その後気になることがあったとき、病院に行くことができたという瀧波さん。シオリーヌさんは、性について発信を行う立場から、近所でかかりつけ医を見つけることが難しい人に対し、オンライン診療サービスについても紹介しながら「いろいろな選択肢を知って、自分の性格や生活に合うものを見つけることが大事」と話した。
和田彩花が医師の話を聞く。「いま子どもを持つことを考えていない立場から、信頼できる情報を知りたい」
「いま子どもを持つことを考えていない立場から、信頼できる情報を知りたい」と話すアイドルの和田彩花さんと、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室(産科)専任講師・リプロダクションセンターセンター長の浜谷敏生医師によるセッション『いつかやってくるかもしれない「生殖」の話 Sponsored by フェリング・ファーマ株式会社』。
子どもを持つことについては、一律の正解があるわけではなく、人それぞれの状況や考え方がある。そのうえで、子どもを望んだときに知っておくと良い知識として、妊娠しづらい場合に考えられるさまざまな要因、女性の卵子の変化、AMH(アンチミューラリアンホルモン)などについて、医学的な観点で浜谷医師が解説し、「生殖専門医としてはできるだけサポートしたいので、妊娠を考えたときだけでなく、女性が健康でいるために、まずは婦人科に行ってほしい」と話す。自身もいまでは気軽に婦人科へ通えるようになったという和田さんは浜谷医師の話を受け、「自分の身体で起こっていることや、起こりうることを知ることで、自分の未来にもっと可能性があるかもしれないと、前向きに考えられるようになりました」と語った。
婦人科ドクターにPMS(月経前症候群)との付き合い方を学ぶ
生理前、数日から2週間、気持ちや体調、言動が不安定になる症状を指すPMS(月経前症候群)。She isのInstagramでは、京都大学病院産科婦人科ヘルスケア専門外来担当の江川美保医師を招き、『婦人科ドクターに聞くPMS こころも体もいたわるための知恵袋』として、PMSの具体的な症状や、PMSとの付き合い方を教わった。
Instagramライブの様子はShe isのInstagramで公開中
PMS、そしてPMSの中でも主に精神症状を指すPMDD(月経前不快気分障害)は、いずれも人それぞれに症状の種類や度合いの個人差が大きいのだそう。改善にあたっては食生活や嗜好品、生活環境などを見直しつつ、病院で治療の対象にもなるので、医師に症状を相談するためにも、まずは日々体調の記録をつけることが大切だと江川医師は話す。司会のCINRA山本梨央も、体調について気軽にメモを取る方法として、アプリを利用しているという。また具体的な治療法として江川医師は、「ピルや漢方薬、精神症状にはSSRIという抗うつ剤も有効」と話し、「こういったものを組み合わせて自分に合った対処法を見つけてもらうよう、医師に相談しましょう」と呼びかけた。さらに視聴者からも、PMDDについて相談できる医療機関の探し方や、具体的な治療法など、さまざまな質問が寄せられ、PMSに関心を寄せる人の多さがうかがえた。
ゆうこす×青柳文子。口に出しづらかったPMSや生理のことを、身近な人に話してみる
PMSをテーマに話した『症状は改善できる。がまんせずにPMSと付き合っていく方法とは Sponsored by ゼリア新薬工業株式会社』。PMSとは月経前症候群ともいい、生理の3~10日ほど前に始まり、生理が来ると軽くなり消えていく症状。イライラ、頭痛、肌あれ、乳房のはりなど、その症状は人によってさまざま。日本医療政策機構が行ったインターネット調査「働く女性の健康増進調査2018」では、PMSや月経からくる不調によって、仕事のパフォーマンスが半分以下になると回答した人が、およそ50%にも及んだという。出演したタレント、モデル、YouTuberのゆうこす(菅本裕子)さんと、モデルの青柳文子さんも、PMSの症状に悩まされた経験があるのだそう。
PMSに関する発信も行っているゆうこすさんは、以前は生理について「話してはいけないこと」と感じていたが、身近な人に自身の症状を伝えたことで、気持ちが楽になったと自身の経験を話し、青柳さんも「ゆうこすさんのように発信する人が増えたことで、生理について口に出しやすい雰囲気を感じるようになった」と言う。そうした生活上の工夫のほか、PMS改善のための方法として、生活習慣を見直すことや、婦人科に相談することとあわせて、ドラッグストアで購入できるPMS治療薬「プレフェミン」※(要指導医薬品)の選択肢なども紹介された。
※一般用医薬品として日本でただ一つのPMS治療薬「プレフェミン」(要指導医薬品)
【効能・効果】月経前の次の諸症状(月経前症候群)の緩和:乳房のはり、頭痛、イライラ、怒りっぽい、気分変調
プレフェミンは、薬剤師から説明を受け、「使用上の注意」をよく読んでお使いください。
妊活と不妊治療の経験を持つ武智志穂が自身の体験を語る。不安や悩みとどう向き合う?
妊活と不妊治療の経験を持つモデルの武智志穂さんと、妊活中の人を中心に1000人以上のお悩みを聞いてきたBELTAの橋口和奈さんが、妊活について話し合った『気になる妊活の不安と悩み。あなたはどう乗り越えますか? Sponsored by 株式会社ベルタ』。
妊活中は病院に通うとともに、飲食物や、身体を温めること、サプリをとるなど、さまざまなことに気を配っていたという武智さん。先の見えない妊活に取り組む中で、頑張っても授からないことに苦しんだり、友人が妊娠した際、心の底から祝うことができず、自己嫌悪したこともあったと、率直に自身の経験を話す。専任スタッフに悩みを相談できるBELTAの顧客向けサービス「カスタマーサクセス」にも同様の声が寄せられるとのことで、橋口さんから実際に寄せられたお悩みを紹介。武智さんは「いま振り返ると、そこまで自分を追い詰める必要はなかった。悩みを抱えているのは一人じゃないし、あまり自分を責めずに、そういう自分も認めてあげてほしいと思います」と話し、治療中、辛いときには気分転換に趣味を楽しんだり、食べたいものを食べて、自分を思いきり甘やかしていたと、自身の体験を振り返った。
身体について正しい知識を得ること、医師や薬剤師などヘルスケアの専門家を味方にすることの大切さ
2日間にわたり、さまざまな視点から身体について話し合ってきた『わたしたちのヘルシー』。その締めくくりとして、『WHA×She isクロージングトーク「3人の医師から女性たちに今伝えたいこと」』に、慶応義塾大学名誉教授の吉村泰典医師、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座教授の大須賀穣医師、初日にも出演した対馬ルリ子医師、She isから竹中万季、野村由芽が登場。2日間、計16のコンテンツを振り返りつつ、3名の医師が、それぞれのテーマについて話した。
まずは大須賀医師が、「未来の自分のためにはじめる、からだへの気遣い」と題し、「痩せ」や「肥満」と健康の関係性を示しながら、自分の身体のために日々生活習慣の改善や体調管理に取り組みつつ、生理痛や生理不順は健康状態を教えてくれる身体からのサインであるため、まずは病院へ足を運んでほしいと話す。
続いて吉村医師が「『マザーキラー』と呼ばれる子宮頸がんの予防」として、先進国では子宮頸がんワクチンが普及しており、たとえばオーストラリアでは2028年頃には子宮頸がんが排除できると言われている一方、日本では定期接種でありながら若年層が長らく子宮頸がんワクチンの接種を受けられなかったことや、検診を受ける人の少なさに触れ、「日本人女性だけが不利益を被ることがない状況をつくってほしい」と締めた。
最後に対馬医師が「昨日と今日、女性の健康問題についてみんなで話し合ってきたが、女性に対する暴力、性暴力も立派な女性の健康問題なんです」という言葉から話し始めたのが「誰にも相談できない事情をもっている女の子たちの救済」について。望まない状況で性行為をされた女性たちに対し、自分が悪いと思わないでほしいということ、自分の心と身体、生活と尊厳を取り戻すためにも、産婦人科医を自分の味方にしてほしい、とメッセージを送った。
医師らの話を受け、竹中が「いろいろな行動の仕方があるとあらためて思った。できることから少しずつ始めたい」と感想を話し、「このイベントが自分の人生をよりよく生きるきっかけになったら嬉しい」と野村が締めくくった。
イベントを通じて繰り返し発信されていたのは、自らの人生を自分らしいものにするために、身体について正しい知識を得ることと、医師や薬剤師などヘルスケア分野の専門家の力を借りることの大切さ。もちろん、知ったうえで日々どれだけ自分の身体を気にかけていても、心身の調子が揺らぐことは誰にでもありうる。だとしても、正確な知識に触れることは、生き方の選択肢を増やすし、その分だけ人生は主体的になる。また、弱ったときの自分自身を的確に労わることができるだけでなく、さまざまな状況に置かれた他者への優しさや理解の可能性を開く。
そして、最後のセッションにおいて対馬医師が話したように、人生の中ではときに予期せぬ重荷を背負ってしまうこともある。そうしたとき、このような場を通じて、一人では守りきれないこともある身体と心について「味方でいる、気軽に頼ってほしい」という力強いメッセージを送ってくれる存在がいることが、いま困難の中にある人や、これから先、苦しい状況に置かれたときに思い出せる一つの心強い選択肢として、どうか届いてほしいと感じた。
「わたしたち」と言うとき、ひと固まりではなく、一人ひとりの「わたし」の集合体であるように、身体も心も健康も、一つのあるべき姿かたちがあるわけではない。適切に専門家の力を借りながら、それぞれが自分らしいヘルシーのあり方を手繰り寄せるきっかけの種子がこのイベントを通じて撒かれたのではないだろうか。
>前編:生理や性教育について学び、考えた。バービーらが医師と語り合う
※アーカイブ動画公開の終了に伴い、YouTube動画の埋め込みを削除しました(2021年4月1日追記)
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