(撮影:すがわらよしみ)
1993年に京都で設立以来、様々な領域で良質なデザインワークを世に送り出してきたデザインスタジオ、groovisions。その代表作のひとつである、人型のグラフィックデザインシステム「chappie」が、ついにリニューアル。1994年の誕生から18年間、全くフォルムを変えてこなかったというが、いったいどこが変わったの? どうして今なの? ということで、その真相を確かめるべく、銀座ポーラ ミュージアム アネックスで開催中の『groovisions Lesson 2012』にやってきた。
メインの壁には17点の新作が連なる(撮影:すがわらよしみ)
最初に目に飛び込んできたのは、1100×900mmの大判サイズにプリントされた新作chappieの平面世界。紙をクリップで吊るしただけのラフな展示が気持ちいい。色、形、構図――。groovisionsのグラフィックは、あたかもずっと前から馴染みがあったかのように、どれもスッと観る人の内に入ってくる。親近感があるのに新しい。心を伸びやかにさせる健やかなパワーだ(その健全さの理由が分からなくて、逆に怖くなったりもするのだけど)。自然光がたっぷり入る展示室で深呼吸。さて、どこが変わったのかじっくり観ていこうじゃないか。
ジークエンスプリント(撮影:すがわらよしみ)
まず第一印象。パッと見た感じは今までのchappieと大きく変わらない。心なしか瞳が大きくなったような? フレームがないのをいいことに、顔を作品ギリギリまで近づけてディティールを観察する。スタッフさん曰く「どこが変わったんですか? という質問は意外と少ないですね」とのこと。ファンが見れば、ちゃんとわかるということか。振り返ると立体chappieが立っていた。こちらも今まで通り、凛と前を見つめている。「ちょっと痩せました?」なんて心の中で声をかけてみたり。でもリニューアル点の確信は得られない。というより、本当はどう変わったか? ではなく、なぜ変えたのか? を知りたいのだ。
groovisions代表の伊藤弘さん(撮影:すがわらよしみ)
そこへgroovisions代表の伊藤弘さんが来場。リニューアルの経緯を伺った。「もう10年くらい前から変えよう、変えようと思っていたんです。それで、この機会にようやく(笑)。分かりやすい部分としては手。あとは目や眉毛なんかも。身体のバランスも少し。本当に微妙なマイナーチェンジですが、見る人が見ればわかると思います」。でも、そもそもなぜ変えようと?「ロングセラーなものはすべてマイナーチェンジを繰り返していますよね。多くの会社のロゴだって、創業当初と現在を比べたら全く違うはず。でも徐々に変わっているから気づかない。時代が流れれば、フォルムも変わるべきなんです」。
chappieのシステムをiPadでビジュアル化(撮影:すがわらよしみ)
また「chappieはシステムである」というのもこの展示の大きなメッセージだ。それを視覚的に伝えているのがiPadを使ったこの壁面。1人のchappieが2人に、さらに増えて横一列に、もっと増えて上下左右に…と枝葉のようにビジュアルが展開してゆく。18年間で少しずつ組み立てられたこのシステムは、今展示を経て、より細かく規定されていったという。それがいかに厳密なルールかは、グラフィックデザインを仕事にしていない人にも一目瞭然だろう。groovisionsがchappieを通して「Lesson」していることが少しずつ見えてきた。「chappieのシステムは、HIP HOPのブレイクビーツと同じ考え方なんです。僕らはそういうスタンスでずっとやってきた。でも、誰もそれを指摘してくれないから、ここらへんでちゃんと言っておかないとなって(笑)」。会場にはHIP HOPの手法で名曲をカットアップ&コラージュした『THE ULTIMATE LESSONS』が流れていた。
価格や納期は会場で確認を(撮影:すがわらよしみ)
最後にこの展示のもうひとつの目玉を。なんと会場ではオリジナルのchappie名刺をつくることができるのだ。ファン生唾のこの企画は、申込み状況によっては早めに受付終了になるかもとのことで、なるべく早く訪れることをおすすめする。
そしてもうひとつ吉報。この展示を記念して、groovisionsとCINRAがコラボレーション。新作chappieのiPhoneケースが誕生する。「まぁ、気軽に買ってください。iPhone5が出たらもう使えなくなるものですしね」と伊藤さん。iPhoneケースはCINRA.STORE限定での販売ということで、みなさんこちらもご贔屓に。
groovisions iPhoneケース「GRV2591」
タイトル『groovisions Lesson 2012』に込められた「Lesson」の意味。そして、グラフィック集団groovisionsの代表作chappieが「システム」だということ。可愛いでは済まされないchappieという存在を、このふたつのキーワードを抱えながらもう少し考えてみても面白いかもしれない。
(撮影:すがわらよしみ)
- イベント情報
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- 『groovisions Lesson 2012』
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2012年7月21日(土)〜9月9日(日)
会場:東京都 銀座 ポーラ ミュージアム アネックス
時間:11:00〜20:00(入場は閉場の30分前まで)
休館日:会期中無休
料金:無料
- プロフィール
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- groovisions / グルーヴィジョンズ
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東京を拠点に活動するデザインスタジオ。1993年の設立以来、グラフィックやムービーを中心に様々な領域のデザインを行う。
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