「かわいい」ものたちをどうアートに昇華させていくか

1939年にアメリカの美術評論家クレメント・グリーンバーグは「アヴァンギャルドとキッチュ」という短い論文の中で大衆的・大量消費的な「キッチュ」を批判することで「アヴァンギャルド」を擁護した。しかし2008年、なにもかもがスーパーフラット化した現在において「アヴァンギャルドとキッチュ」という対比はもはや意味をなさないだろう。むしろ住吉明子が日々奮闘する「かわいい」ものたちをどうアートに昇華させていくか、つまり「かわいい(kawaii)とキッチュ」を対比することでアートの今が見えてくるのではないだろうか?

そうした意味でも今回、住吉明子の作品が「第1回art_icle賞」でグランプリを受賞したことは非常に示唆的であるといえるかもしれない。石粉粘土による真っ白でつるつるとした動物の表面から、急に別の動物が顔をのぞかせたりするキュートだけれども少し不気味な一面を持つ作品たち。立体作品としてのクオリティの高さは言わずもがな、今回の個展「白く森」では、住吉の考える「かわいい」世界観がギャラリーに広がっているが、それがただの「可愛さ」ではないことは作品を見てもらえば分かるはずである。

※このコンテンツは旧「ピックアップアーティスト」の掲載情報を移設したものです

プロフィール
住吉明子

1981年千葉県生まれ。文星芸術大学美術学部ビジュアルデザイン科卒業。2005年より作家活動を始める。同年、画家・福津宣人氏に師事。動物や植物のイメージが入り交じった絵画、立体、インスタレーションを作成。日々かわいいものと奮闘中。



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