この作品に、果たしてレビューが必要だろうか。『OBSESSION』――「妄想、強迫観念」。そうした想念の不気味さ、恐ろしさを、叙情をまじえつつ映像化する、その確かな手つき。この映画を理解するには、ただ真っ直ぐに画面を見つめるだけでいい。冒頭のニワトリを映した場面から、すぐに作品世界に引き込まれるだろう。誰もが感じる、10代の頃の鬱屈した気持ち。入江は終始、そうした気持ちを作品の基調に据えるが、ラストにはそれを打ち破る爽やかな可能性をも示唆した。監督自身、自らの気持ちに向き合って創ったことが、明瞭に伝わってくる作品である。それにしても、素敵な役者たちを集めたものですね…。
- プロフィール
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- 入江悠
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1979年生まれ。大学在学中より映画や映像作品の制作を始め、短編『OBSESSION』(02)と短編『SEVEN DRIVES』(03)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門に2年連続入選。2006年に初の長編映画『JAPONICA VIRUS』が全国劇場公開。新作映画「SRサイタマノラッパー」が3月14日より劇場公開。
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