境さんの作品は、一度見ると、まさにあんこのように頭にべったりとこびりついて、なかなか離れない。和菓子や小豆は日本人に馴染みのあるものだが、それらが身近なモノに見立てられたり、見上げるほど大きなオブジェと化したり、はたまた帽子やヒゲや髪型などのファッションにもなっているところが面白い。和菓子の自由奔放な変身っぷりに、思わず笑みがこぼれてしまう。「現代美術は難解」と敬遠されがちな昨今で、境さんの作品は私たちと現代美術との距離をぐっと縮めてくれる。
ところで、普段和菓子や小豆などに馴染みのない海外の人々の目には、これらはどう写り、受け止められるのだろうか。本作が日本の伝統文化を知ってもらうきっかけになるかもしれないし、はたまた「日本人の間では小豆ファッションが流行っているらしい」と本気で誤解してしまうかもしれない。しかし実は、それこそが境さんの抱く「甘い思惑」なのである。現在モデルを募集中だそうなので、ぜひ実際に小豆のヒゲを装着して、艶やかな「日本の新しい顔・アズラー」になってみてはいかがだろうか。「黒光りする、昼のあたしを見てくれ。」…って、どこかで聞いたようなフレーズですが。
※このコンテンツは旧「ピックアップアーティスト」の掲載情報を移設したものです
- プロフィール
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- 境貴雄
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1978年東京都生まれ。2007年に東京藝術大学大学院デザイン専攻を修了。在学中より紙粘土や発泡スチロールを素材に、和菓子をモチーフとした作品を発表する。2005年のオオタファインアーツでの展覧会を機に本格的な作家活動をスタート。2009年にタグボート・アワード辛美沙賞を受賞。最近では、架空の小豆ひげファッション『アズラー・ポートレート』が話題となり、テレビや雑誌等のメディアでも注目されている。
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