「お前もムカデ人間にしてやろうか!」前作を遥かに凌ぐ奇跡的続編は残酷18禁

アメリカで活躍する日本人俳優・北村昭博が、人間ムカデ第1号となり、かつ先頭を務めたことで話題となった映画『ムカデ人間』。「人間を繋げてムカデみたいにしたい」という誰も得しない嗜好を持つマッドサイエンティストが、アジア人と白人女性2人で人間ムカデを作ってしまうというバカバカしい内容は世界中で大ウケ。あのクエンティン・タランティーノ監督も劇場に足を運んだ1人である。

©2011 SIX ENTERTAINMENT
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もちろん日本でも、映画のすべてを表したストレートなタイトルそのままの内容と、亀田興毅の父親がやくみつるとテレビ番組で口論する場面を見て役作りしたという北村のアグレッシブな芝居もあって、映画はヒット。監禁ジャンルのホラー映画だが、内容が内容だけに「笑える映画」と捉えていた観客が多かったのがその要因だろう。確かに外国人が描くステレオタイプの日本人から乖離した、もはや日本でも見たことがないようなキャラクターと化した北村の芝居は面白いし、人間ムカデのビジュアルは爆笑必至だった。先頭が排泄したものを2番目が必然的に食す、というインモラルな表現もあったが、直接的な残酷描写はほとんど見られず、観客は好意的なB級映画として楽しんでいた。

話題作の例に漏れず、早速続編が製作された。邦題もそのままシンプルに映画『ムカデ人間2』。しかし監督のトム・シックス監督の気合は前作を遥かに凌いでいた。まるでスティーヴン・スピルバーグ監督が「好意的な宇宙人映画ばかり作るヒヨッコ監督」と言われたことを根に持ち、大殺戮映画『宇宙戦争』を作ったように、シックス監督は「ホラー映画としては物足りない」というオタク、ファンたちに真っ向から勝負したのだ。まず前作の笑いを期待して本作を鑑賞するのは止めよう。映画を支配するのは、生理的嫌悪感を抱かせる見た目の持ち主である変態親父による、流血と糞尿と精液にまみれた阿鼻叫喚の地獄絵図だからだ。しかし一方で、ホラー映画としては前作を優に超える大傑作であるのは間違いない。前作と果たして同一監督の手によるものなのか疑いたくなるほど、ストーリーテリングは巧みであり、えげつなさは100パーセントだ。

©2011 SIX ENTERTAINMENT
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『ムカデ人間』の大ファンで、いつか自分でも人間ムカデを作ろうと妄想しているデブ・ハゲ・中年・無口のマーティンが主人公。彼は11人の男女を次々と拉致し、『ムカデ人間』に出演した女優アシュリンをまんまと騙して自らのムカデ工場に招き入れ、12人による人間ムカデを創造するための大手術を始める…。マーティンの神がかった容姿、そして人を食ったかのようなメタフィクション演出に痺れる。手術シーンはすべてダイレクトに映し出され、前作のマッドサイエンティストによってクリエイトされた人間ムカデとは似ても似つかない、苦痛がありありと伝わる12人の人間ムカデはグロテスクかつ汚らしい。カラーでなく、モノクロでの撮影も効果的。そしてそんな人間ムカデの存在さえも薄めるのが、マーティン役のローレンス・R・ハーヴェイだ。日本のピンク映画が大好きな親日ということで悪い人ではないのだろうが、オーディションではイスとfuckする芸当を見せ、シックス監督のハートを射抜いたというcrazy motherfuckerだ(褒め言葉)。

映画の場合、続編は成功しないとよく言われる。しかし本作はジェームズ・キャメロン監督の映画『ターミネーター2』並みに、内容的に成功した続編と断言できる。ちなみにイギリス、オーストラリアでは倫理観を逆撫でする内容ゆえ上映禁止。アメリカでは一部カットでの公開だが、日本はもちろん18禁映画として堂々公開される。ギャスパー・ノエ監督の映画『カルネ』、ユルグ・ブットゲライト監督の映画『シュラム 死の快楽』、そして『ムカデ人間2』の3本立てで『「デブ・ハゲ・中年・無口」映画祭』とかやってほしい。

映画情報
『ムカデ人間2』

2012年7月14日から新宿武蔵野館でレイトショー公開
監督・脚本:トム・シックス
音楽:ジェームス・エドワード・バーカー
出演:
アシュリン・イェニー
ローレンス・R・ハーヴェイ
マディ・ブラック
ドミニク・ボレリ
配給:トランスフォーマー



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