「永世中立国」スイス最新デザインの国際巡回展

スイスの優れたクリエイティブを紹介する『スイス・デザイン賞展』が東京・青山のスパイラルガーデンで11月18日まで開催されている。『スイス・デザイン賞』は1991年からスイス国内の作品を対象に開催されおり、コミュニケーション、デザイン、インテリア、ファッション、プロダクト、研究などの分野に分かれている。今回は受賞作品やノミネート作品を展示し、ソウル、オーストリア、ロサンゼルスなどを巡る、国際巡回展の一環として開催されている。

スイス・デザイン賞展

スイスは精巧に作られた時計のイメージだけでなく、グラフィックや建築、インテリアなど、洗練された質の高いデザインでも有名だ。時計でいえばロレックスやオメガ、スウォッチなどのデザインを思い浮かべる人も多いだろう。同賞の結果は市場にも影響を及ぼすことが認知されているため、今回の巡回展の内容は、スイスデザインの最新トレンドを知るための絶好の機会であるといえるだろう。

会場に入って、まず目に入るのは『クイックダイブ』というシンプルなデザインのダイビングギア。複雑な構造を持ったダイビング器具を思い切って軽量化した製品であり、初心者用の製品として開発された。潜水深度は10メートルまで対応しており、一般的に大体30kgある重量は6kgまで減量され、短時間で着脱できるなど、より気軽にダイビングを楽しめるように工夫されている。機能性、デザイン性、軽量性に配慮しつつ、市場のニーズに上手く応えた画期的な製品だと言えるだろう。

スイス・デザイン賞展

チューリッヒ応用科学芸術大学による研究プロジェクト『色彩と光』も会場でひときわ存在感を放っていた。一見、幻想的なインスタレーションアート作品のようにも見えるが、説明文を読むと、デザインにおける色彩と光の相互作用を研究したものだということが分かる。「今日まで、実用的なデザインにおいて色と明かりの両方を取り上げた理論はなかった」と説明文に前置きされたこのプロジェクトは、「空間という概念において、動きのある光と色彩の施された面が相互に及ぼす影響」などに焦点を当てている。この研究の成果が、今後どのような製品や作品に応用されていくのか、注目したいところである。

スイス・デザイン賞展

会場の奥に進むと、不思議な形をした木材が展示されている。『変化する木材―材料の革新』と題された研究プロジェクトによる製品で、特殊な切断加工を施された三次元に変形する木材なのだとか。実際に触れてみると木材がバネのように、柔らかく縦横斜めに自在に曲がることが確認できる。硬いイメージのある木材なだけに、なんだか不思議な光景だ。当然、木材は建築やインテリアなどに幅広く利用されているため、この技術によってデザインの考え方が大きく変わることは間違いなさそうである。また木材による吸音効果など、音響面でも注目を集めている製品だという。

スイス・デザイン賞展

さらに、同賞に協賛しているスイスのアーミーナイフメーカー「Victorinox(ビクトリノックス)」の専門ブースも出展している。ビクトリノックスは1884年創立の老舗メーカー。従来はアウトドアなイメージのナイフが主流だったが、今回展示されている『Tomo』は日常シーンで使用するイメージを前面に押し出しており、女性でも気軽に持ち運びやすいデザインが大きな特徴になっている。「ホワイト」「アップルグリーン」「カプリブルー」「ミントグリーン」「レモンイエロー」「ピンク」「ビクトリノックスレッド」の7色が揃えられていて、鞄などにつけてもアーミーナイフだとは分からない。もともと、はさみ、爪やすりなどの機能も兼ね備えていたため、日常で使用することを想定した製品だったが、デザインの力でさらに日常に溶け込みやすいツールとなった。専用に開発された再生紙100%のエコパッケージもデザイン性に優れており、ギフトとしても利用できそうだ。

スイス・デザイン賞展

ちなみに『Tomo』のデザイナーは日本人の山口和馬氏。本国スイス以外で制作されたデザインが世界展開商品に採用されたのは、ビクトリノックスの長い歴史上においても、わずか2度目だという。スイスの老舗メーカーによる技術と、日本のデザイン力が合わさった一品で、『スイス・デザイン賞』国際巡回展の日本開催に相応しい商品だといえる。会場ではビクトリノックスのロゴに差し色を入れた、会期中のみ入手できる限定モデルも販売されていた。

スイス・デザイン賞展

今回紹介したような実験的な製品のほか、インテリアやファッション、台所道具など、商業性が高いデザインの作品など、幅広いジャンルが展示されているため、見ごたえは十分。「永世中立国」として知られるスイスの最新デザインをチェックしに行ってみてはいかがだろうか。

イベント情報
『スイス・デザイン賞展』

2012年11月6日(火)〜11月18日(日)
会場:東京都 青山 スパイラルガーデン(スパイラル1F)
時間:11:00〜20:00
料金:無料

共催:スイス大使館、Design Preis Schweiz
会場協力:株式会社ワコールアートセンター
助成:プレゼンス・スイス、スイス・プロヘルヴェティア文化財団、スイス連邦内務省教育研究庁、ingenious switzerland
協賛:ビクトリノックス・ジャパン株式会社、チューリヒ芸術大学
ロジスティクス協力:シュナイダー=インターナショナル・フォアワーディング&ロジスティクス



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