女子の創造力と発信力が高まる2015年、注目すべき新進女子クリエイター5組

母は強し、されど「女子」はもっと強し!

「女は弱し、されど母は強し」と言われたのも今は昔。「カワイイ」カルチャーが世界を席巻する今は、「母は強し、されど『女子』はもっと強し!」が実感としてむくむくと胸に迫る。自分の存在から放たれる想いを、さまざまな表現に変えて真っ直ぐに突き進んでいけるのは、わがままに力を放出する「女子」ならではの特権だ。では、これからのカルチャーを牽引する、今年注目すべき女子クリエイターは誰だろう? 毎年新しい才能をピックアップし、メジャーなカルチャーシーンへと輩出している女性クリエイターの祝祭『シブカル祭。』の実行委員会を務める工藤健士、室賀聡子に訊いてみた。

内にこもる男子、溢れるエネルギーを外に出す女子

そもそも気になるのは、なぜ今、女子クリエイターが元気なのか。昨年で4回目を数え、年々参加者が増えている『シブカル祭。』を通じて、工藤と室賀が感じるのは、「開く」ことへの男子との意識の違いだという。「10代、20代は、自意識がとても高まる頃。自意識はクリエイティブの源泉ではありますが、女性と比べて男性クリエイターは、なぜか内へ内へとこもる傾向にあるように思います。ところが、女子クリエイターはその自意識を、外に向けてどんどん開いていく」と、工藤は話す。ブログ、Twitter、Instagram、Tumblrなど、自己発信ツールが増えていることも影響し、若い女子クリエイターたちは「自分の見せ方」「セルフプロデュース力」が長けていることを、同性である室賀は指摘する。「街ゆく女の子のファッションを見てもそう。『私はコレが好き』と思えば、新しいものをどんどん取り入れるし、斜に構えることなく、ありのままの自分を思い切り表に出していく。だから元気があるし、セルフプロデュース力もものすごく高い」。

岡本太郎記念館で展示会を開催中のアートユニット「キュンチョメ」

その二人が最初に名前を挙げてくれた「キュンチョメ」は、セルフプロデュース力に長けた、ホンマエリとナブチによるアートユニット。筆者も参加した昨年の『シブカル祭。』オープニングレセプションでは、ホンマエリが店の開店祝いの花輪を身に纏って登場し、初参加ながら司会のルー大柴と来場者の度肝を抜いたことが印象的だった。開催中は、東日本大震災の被災地でひたすら遠吠えをする映像と犬のオブジェを融合した『遠い世界を呼んでいるようだ』を出展。

キュンチョメ『遠い世界を呼んでいるようだ』映像より
キュンチョメ『遠い世界を呼んでいるようだ』映像より

『第17回岡本太郎現代芸術賞』では大賞である『太郎賞』を受賞し、現在は岡本太郎記念館で展示会を開催しているキュンチョメは、今後ますます注目度が高まることだろう。その注目の理由を、工藤はこう話す。「キュンチョメの活動は、『生きるって何だ? という根底を掘って行く作業』と本人が語るように、ジャンルの枠にはまらず様々な手段と場所で、『生』をコンセプチュアルに大胆に表現するのが魅力です」。

最新テクノロジーを使った演出を手がける「惑星ハルボリズム」

大胆な手法でジャンルを超えたカルチャーを生み出しているクリエイターとしては、「惑星ハルボリズム」も注目すべき。彼女は、イギリスのブリストル大学演劇学科を卒業後、ドイツとイギリスにて演劇の総合演出に取り組み、日本に帰国後は広告業界にて活躍。そして現在は、空間・映像・インタラクションなどを組み合わせた企画演出を軸に、「体験」と「カルチャーの創造」を導く演出家 / プロデューサーとして活動している。彼女の存在を世に知らしめたのは、2013年にルイ・ヴィトンの『Timeless Muses(時を超えるミューズたち)』のレセプションパーティーで行なった、Charisma.comと東京バレエ団・上野水香のホログラムライブ。「彼女は最新テクノロジーの進化を、身近なクリエイティブや誰にでもわかりやすい演出に落とし込み、カルチャーとして提示できる人。女子ならではの繊細な感性も魅力的です」と、惑星ハルボリズムの才能を工藤は語ってくれた。


ファッションの枠を大胆に超えるデザイナー「NORIKONAKAZATO」

女子ならではの感性を作品に大胆に取り込んでいる、ファッションデザイナー「NORIKONAKAZATO」も期待の女子。海外で高い評価を受ける山縣良和主宰のファッションデザインスクール「ここのがっこう」を経て、東京藝術大学大学院美術教育専攻の博士課程に在籍。人間を取り巻く事象をファッションに落とし込み、唯一無二のクリエイティブを発揮しながら既存のアイテムを加工することで、新しい価値観を提示している。昨年は国際的デザイナーの登竜門である『欧州インターナショナルタレントサポート2014(ITS)』において、若手では異例のジュエリー部門グランプリを受賞した。工藤いわく、彼女の作品の特徴は「オリエンタリズム」とのこと。


全曲英詞で歌う、京都出身バンド「Homecomings」

音楽ジャンルでも、ひと際目立った才能を持つ女子たちが目に留まる。室賀がピックアップしたのは、京都在住の女子3人+男子1人の4ピースバンド「Homecomings」。『シブカル祭。』はもちろん、『FUJI ROCK FESTIVAL』でも注目を集め、海外アーティストとの共演も果たす、独特の個性に溢れたバンドだ。

「彼らの魅力は、DIY感覚のマイペースさと多幸感ですね。ボーカルの畳野さんの柔らかい声で歌われる英詞、心地よいメロディーと瑞々しいギター。フォーキーで素朴でどこか懐かしさのあるギターポップは、聴く人を幸せな空気に包んでくれる。決して速度が速いわけではないけれど、確実に磨きがかけられていくきらめきが、音楽からもバンド性からも感じられます。センス溢れるアートワークも見逃せません」


毒っけ満載のアニメーションをYouTubeから世界に発信する「Omamez」

独特の感性が溢れた女子クリエイターには、アニメーション分野でも光る個性が。武蔵野美術大学映像学科在籍中の大松美菜(作画担当)と望月裕実(編集担当)からなるアニメーターユニット「Omamez」は、NYLON×SONY MUSIC主催の『JAMオーディション』にてグランプリを受賞。アメコミ調のアニメーションで毒っけ満載のトークを作品化し、英語の字幕を付けてYouTubeにて発信している。


Omamez
Omamez

ここまでの5組に共通するもうひとつのキーワードが「海外」。Omamezの絵柄もアメリカンであり、『サウスパーク』にも通じるブラックな世界観がユニーク。そして、海外を意識したセルフプロデュースも、イマドキの女子クリエイターのパワーを感じさせる。こうしてジャパニーズカルチャーをパワフルに海外に向けて発信しているのも、新進女子クリエイターたちの魅力だ。

『シブカル祭。』も、6月には『SHIBUKARU MATSURI goes to BANGKOK』と銘打って、今回紹介したキュンチョメ、惑星ハルボリズム、NORIKONAKAZATOらの作品をひっさげ、タイ・バンコクで開催する。国境を越えて自己の想いを「外」に向けて発信していく女子クリエイターたちの活躍に、今後も注目したい。

アーティスト情報
キュンチョメ


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