シーナへの愛を込めて、日本ロック史の縮図のようなステージとなった追悼ライブ

日本のロック史におけるシーナ&ロケッツの存在感

シーナ&ロケッツ(以下、シナロケ)は、夫婦である鮎川誠とシーナが1978年にスタートさせたバンドだ。以来、休むことなく活動を続け、日本のロック史に大きな足跡を残している。このバンドの歌姫であるシーナが、2月14日に急逝したことが大きく報じられたのは記憶に新しいが、改めて彼女の存在の大きさと、シナロケというバンドの影響力を感じさせるイベントが行われた。

「4月7日を『シーナの日』に決めました」と鮎川が呼びかけて行なわれた追悼イベント『「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』が、彼女が長年暮らし愛した下北沢のライブハウス「GARDEN」にて開催。シナロケと深い関わりを持つレジェンダリーなアーティストたちが集ったこのイベントは、日本のロック史の縮図のようだった。

この日は鮎川と、シナロケのリズム隊である奈良敏博(Ba)と川島一秀(Dr)に、サポートとして中山努(Key)がステージに常駐。鮎川が「マイ・ベイビー・ドーター!」と紹介した鮎川家の三女ルーシー・ミラーを皮切りに、そこに次々とゲストが加わるという趣向だ。

一世を風靡した「めんたいロック」から現代まで、日本のロック史を紐解くような夜

ゲストの中心になるのは、シナロケと同じ福岡出身のバンド、アーティストたち。同じ頃にメジャーデビューした、ARBの石橋凌、ザ・ロッカーズの穴井仁吉、ルースターズの花田裕之と池畑潤二、赤と黒の岩口タカと本間章浩といった面々だ。さらに終盤では、鮎川がシナロケ以前に在席したバンド・サンハウスの柴山俊之が登場。サンハウス時代に柴山と鮎川が作り、シナロケの代表曲になった“レモンティー”を歌うと、フロアからも「二人で飲みましょ レモンティー!」と大合唱が起きた。

友愛に溢れるこの顔ぶれは、1970~80年代にパンク / ニューウェイブとR&Bやブルース等を兼ね備えたロックで一世を風靡した九州発のロックバンドの歴史そのものだ。当時「めんたいロック」と呼ばれ、荒々しいエネルギーを爆発させるガレージロックの原石を転がした彼らから、影響を受けたバンドは少なくない。この日「俺たちの中では若手」と紹介されたThe Birthdayのチバユウスケや元BLANKEY JET CITYの中村達也と浅井健一は、その代表格と言えるだろう。チバと中村は、豊田利晃監督の映画『I'm Flash』のサウンドトラックでもカバーした“ホラ吹きイナズマ”をワイルドなタッチで演奏し、浅井は「シーナさん、いなくなって寂しいけど、こんな時こそ元気出して行こう」と、シナロケの“レイジー・クレイジー・ブルース”を丁寧に歌って敬意を示した。

『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』 撮影:積紫乃
『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』 撮影:積紫乃

『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』 撮影:積紫乃
撮影:積紫乃

さらにシナロケのルーツを遡っていく。鮎川は言った「歴史の勉強になります」

日本のロック黎明期から活動してきた同胞たちとの絆も強い。英米のロックからダイレクトに刺激を受け自分たちのものとしてきた彼らの、音楽への愛と信念は理屈抜きで心を震わせる。元ファニー・カンパニーのロメル・アマードと鮎川がギターで掛け合いながら歌った“Gloria”は、ヴァン・モリスンとパティ・スミスへの敬愛が込められ、関西R&Bシーンを牽引したウエスト・ロード・ブルース・バンドの永井“ホトケ”隆は、シーナとデュエットしたという“I got you(I feel fine)”でソウルの帝王ジェイムス・ブラウンへ表敬。また、鮎川がアマチュア時代にライブを観て、そのギタープレイに驚愕したというCharとの“White Room”は、両者エリック・クラプトンさながらの熱いギターセッションで圧倒した。

『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』 撮影:積紫乃
撮影:積紫乃

『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』 撮影:積紫乃
撮影:積紫乃

演奏する曲を紹介しながら鮎川が「歴史の勉強になります」と言ったが、彼らも歴史の1ページを飾っているのは言うまでもない。シナロケとは同志と言ってもいいRCサクセションの仲井戸“CHABO”麗市は、シーナへの哀悼を込めてRCサクセションの“雨上がりの夜空に”を歌い、鮎川が「下北のジャニス」と呼んだ金子マリは、シナロケの“You May Dream”に即興でシーナへのメッセージを歌い込み、素晴らしくソウルのこもった歌で魅了した。このイベントもまた、語り継がれるものの1つになることだろう。

全員出演のアンコールステージは、まさに日本のロック史の縮図

アンコールには、ARBに在席したことがある内藤幸也と元カルメン・マキ&OZの武田“チャッピー”治も飛び入りし、全員揃って“Johnny B. Goode”を演奏。レジェンダリーな人たちが所狭しと並んで次々に歌やギターでソロを取って行くところは、日本のロック史の縮図を見るようで、まさに圧巻だった。賑やかに幕を閉じたこのイベントを振り返って最も印象的だったのは、ゲストを入れず鮎川自身が歌った“ピンナップ・ベイビー・ブルース”。入り口のポスターで微笑むシーナが、こちらを見つめていた。

『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』 撮影:積紫乃
撮影:積紫乃

イベント情報
『鮎川誠 Presents 「シーナの日」#1 ~シーナに捧げるロックンロールの夜~』

2015年4月7日(火)
会場:東京都 下北沢 GARDEN
出演:
シーナ&ロケッツ(川嶋一秀、奈良敏博、鮎川誠)
浅井健一(BLANKEY JET CITY)
岩口タカ(赤と黒)
金子マリ(スモーキーメディスン)
柴山俊之(SONHOUSE)
仲井戸"CHABO"麗市(RCサクセション)
永井”ホトケ”隆(West Road Blues Band)
中山努(ピチカートファイブ)
花田裕之(THE ROOSTERS)
石橋凌(ARB)
MAGUMI(レピッシュ)
穴井仁吉(THE ROCKERS)
池畑潤二(THE ROOSTERS)
KEICOT(Dee Dee Fever)
中山加奈子(VooDoo Hawaiians)
澄田健(Moto Psycho R&R Service)
Romel Amado(ファニーカンパニー/KAMIKAZE)
LUCY MIRROR(DarkSide Mirrors)
中村達也(BLANKEY JET CITY)
チバユウスケ(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)
本間章浩(赤と黒)
チャッピー武田(カルメンマキ&OZ)&内藤幸也(SUPER BAD)

プロフィール
シーナ&ロケッツ

メンバーは、シーナ、鮎川誠、奈良敏博、川嶋一秀。1978年、鮎川誠、シーナを中心に結成。2012年で結成35年を迎え、常に時代の中で革新的な存在であり、その活動のブレのなさにおいても日本のロックシーンで抜群の信頼感、存在感を誇る。鮎川が以前やっていたバンド・サンハウスで培ったブルースロックへのリスペクトを基盤に、YMOチームとの邂逅から生まれたニューウェイブ・テクノサウンド、そしてパンク・ロック・ブルース・サイケデリックを全て包み込んだロックンロール、また彼らのソリッドなスタイルは、後の「めんたいロック」の基盤となり、デビュー早々から多くのアーティスト・ミュージシャンらに影響を与え続けている。また、海外の同志へ向けての活動も、時代の先を行くものである。エルビス・コステロやRamones、ウィルコ・ジョンソンとも共演。国内外を含め、これまでに通算35枚のアルバム・16枚のシングルを発表。



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