日本の音楽カルチャーの潮流は、「ガラパゴス」から「ボーダレス」へ移ろいつつある
2010年代の日本の音楽カルチャーの潮流は、「ガラパゴス」から「ボーダレス」というふうに移り変わっているように思う。もちろん、どちらがよくて、どちらが悪いというわけではない。それに、多種多様なリスナーの感性やアーティストの価値観の変化を簡単なキャッチフレーズで括ろうとするのは、そもそも無理がある。
それでも、2010年代後半になってのここ数年間で、少しずつ音楽シーンのムードや風向きのようなものが変わってきたように感じる。海外の(より正確に言うならば、アメリカを中心にした英語圏のグローバルな)音楽シーンのトレンドを意識しアンテナを張る作り手と聴き手が増えた。めまぐるしいアップデートが続く海外の音楽シーンと共鳴する感性を持ったアーティストが目立つようになった。それらの楽曲に「わかりにくい」とか「とっつきにくい」ではなく、「先鋭的」で「かっこいい」という魅力を感じるリスナーが徐々に増えてきたように思う。
w-inds.は、まさにその変化を象徴するグループの一組と言えるだろう(参考記事:w-inds.の音楽性を先鋭化させた2つの理由と、その変遷を辿る)。
橘慶太によるセルフプロデュース体制で、w-inds.の先鋭化は決定的に
2001年のデビュー以来、数々の実績を打ち立て、まさにJ-POPのど真ん中で活躍してきたw-inds.。2017年にリリースされた橘慶太のセルフプロデュースによるシングル“We Don't Need To Talk Anymore”と、その曲が収録されたアルバム『INVISIBLE』は、グループのイメージを刷新する大きな契機になった。トロピカルハウスのサウンドを展開しボーカルドロップの手法を取り入れたこの曲は、まさに海外の最先端のモードと同時代性を持った一曲。この曲をきっかけに、新たな層のリスナーも獲得し、サウンドクリエイターとしての彼への注目も増した。
2017年9月にリリースされたシングル“Time Has Gone”も橘慶太が作詞・作曲・編曲を担当し、さらにトラックダウンまで自身で手がけている。こちらは“We Don't Need To Talk Anymore”の手法やテイストを踏襲しつつも、フューチャーベースのサウンドを意欲的に導入したナンバー。BPMを落としてダンスミュージックというよりチルの要素を増やし、また新たな境地を開拓した楽曲となっていた。
そしてニューシングル“Dirty Talk”も、やはり橘慶太がプロデュースを担当した一曲。オフィシャルサイトなどでは「最先端のトレンドと90年代のニュー・ジャック・スイングのテイストを絶妙に織り交ぜた新たなダンスミュージック」と紹介されている。
では、“Dirty Talk”には、どんなモードが見て取れるのか。一聴して感じるのはやはりニュージャックスウィングのテイスト。跳ねたシャッフルのビート、うねるベース、甘くスムースなメロディーが映える。オーケストラルヒットの音色も際立っている。
ニュージャックスウィングとは? なぜそれをw-inds.が?
アメリカの作曲家、テディ・ライリーがR&Bのサブジャンルとして提唱し、1980年代後半から1990年代初頭にかけて世界中で流行したこのスタイルは、日本人にとっては耳馴染みのないものではない。むしろある世代にとってはとても懐かしいものだろう。久保田利伸、ZOO、中西圭三、横山輝一など、当時のJ-POPのシーンでも多くの作曲家やアーティストがこのスタイルを取り入れたヒット曲を生み出している。
近年、そのリバイバルのきっかけになったのはブルーノ・マーズ『24K Magic』だった。今年1月に行われた『第60回グラミー賞』授賞式でも、「最優秀アルバム賞」「最優秀レコード賞」「最優秀楽曲賞」の主要3部門を制覇する快挙を達成した彼。その受賞スピーチでも、彼は15歳の頃に地元のハワイで観光客相手に歌っていたときの話のなかで「後から知ったけれど、僕が当時歌っていた曲はすべてBabyface、ジミー・ジャム、テリー・ルイス、テディ・ライリーが作曲した楽曲だったんだ」と、ニュージャックスウィングの時代を作り上げた先輩ソングライターへの敬愛の念を伝えていた。
また、ブルーノ・マーズは今年1月にアルバム『24K Magic』のなかでも最もニュージャックスウィングのテイストが強かった“Finesse”を、気鋭の女性ラッパー、Cardi Bを迎えたリミックスバージョンでシングルカット。グラミー賞授賞式のパフォーマンスでもこの曲を披露していた。
時代のトレンドを先読みする橘慶太の先見性と、“Dirty Talk”における挑戦
w-inds.は、このリバイバルの流れをいち早く体現していた。『24K Magic』のリリースは2016年の11月だったのだが、それに半年ほど先立つ2016年5月にリリースされたw-inds.のシングル“Boom Word Up”が、まさにニュージャックスウィングのスタイル。
アルバム『INVISIBLE』にも収録されているこの曲の作曲クレジットはサム・グレイとジョーイ・ローレンスだが、当時のインタビューによるとこの曲調を選んだのは橘慶太の意向が強かったそうだ。海外を見回しても当時はニュージャックスウィングのトラックを作るトラックメイカーが少なく、そのなかでトラックを探したのだという。先見の明があったわけだ。
それを踏まえて、今回の“Dirty Talk”は再びのニュージャックスウィング。ただ、単なるリバイバルというよりも、それを“We Don't Need To Talk Anymore”と“Time Has Gone”で確立した橘慶太のトラックメイキングの技術、トロピカルハウス~フューチャーベースのセンスと融合させたようなサウンドになっている。浮遊感のあるコーラスも聴きどころだ。「ニュージャックスウィングをどうアップデートするか」というキーワードに、彼らのここ1年の経験とアウトプットを踏まえて向き合った一曲と言える。
w-inds.“Dirty Talk”を聴く(Spotifyを開く)
同じく橘慶太が手がけるカップリングの“If I said I loved you”も刺激的だ。耳を引くシンセのフレーズと歌が絡み合い、ビートレスで始まるこの曲。基本的にはイントロで鳴っているシンセをずっと引っ張りつつ、1つのコード進行をループする曲構成なのだが、ゆったりと控えめなリズム、雨の音や力強く上昇するベースライン、様々な音を抜き差しすることで展開を作っている。サビの壮大なサウンドスケープも印象的だ。
w-inds.『Dirty Talk』初回限定盤ジャケット(Amazonで見る)
トラップやラテンがチャートを席巻する2018年。w-inds.の次の一手に期待がかかる
2018年に入っても、海外の音楽シーンのトレンドは目まぐるしく移り変わっている。たとえばジャスティン・ティンバーレイクは『Man of the Woods』でギターサウンドを導入し、カントリーやブルース、サザンソウルなどアメリカ南部のルーツミュージックとアーバンなダンスポップを融合させる新たな試みを展開している。
カミラ・カベロの“Havana”やMarshmelloとアン・マリーのコラボシングル“Friends”のようにラテンのテイストを取り入れたダンスポップもスマッシュヒットしている。記録的なヒットとなっているMigosの『Culture II』が象徴するようにトラップの隆盛は続き、“Si Te Acuerdas”が注目を集めるプエルトリコ出身の24歳、Bad Bunnyが体現するようなラテントラップという新たなジャンルも勃興している。
橘慶太が、そうした最先端の動きにクリエイターとしてどう応えるか。グローバルな音楽シーンの動きと同時代性を持った新しいJ-POPのスタイルをどう確立していくか。興味はつきない。
- リリース情報
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『Dirty Talk』初回限定盤(CD+DVD) -
2018年3月14日(水)発売
価格:1,500円(税込)
PCCA-04616[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
1. Dirty Talk Music Video
2. The Making of Dirty Talk Music Video
※個別サイン会参加券もしくはプレゼント応募券封入
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『Dirty Talk』RYOHEI盤(CD+DVD) -
2018年3月14日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,500円(税込)
BRCA-00092[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
・Behind The Scene -RYOHEI-
※個別握手会参加券封入(RYOHEI)
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『Dirty Talk』KEITA盤(CD+DVD) -
2018年3月14日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,500円(税込)
BRCA-00093[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
・Behind The Scene -KEITA-
※個別握手会参加券封入(KEITA)
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『Dirty Talk』RYUICHI盤(CD+DVD) -
2018年3月14日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,500円(税込)
BRCA-00094[CD]
1. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
[DVD]
・Behind The Scene -RYUICHI-
※個別握手会参加券封入(RYUICHI)
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『Dirty Talk』通常盤(CD) -
2018年3月14日(水)発売
価格:1,000円(税込)
PCCA-70521. Dirty Talk
2. If I said I loved you
3. Dirty Talk(Instrumental)
4. If I said I loved you(Instrumental)
※一斉握手会に参加可能な告知フライヤー封入
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- イベント情報
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- 『w-inds. FAN CLUB LIVE TOUR 2018 ~ESCORT~』
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2018年3月3日(土)
会場:北海道 Zepp Sapporo2018年3月14日(水)
会場:東京都 中野サンプラザ2018年3月16日(金)
会場:愛知県 Zepp Nagoya2018年3月18日(日)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside2018年4/1(日)
会場:福岡県 福岡国際会議場・メインホール2018年4月30日(月・祝)
会場:神奈川県 パシフィコ横浜
- プロフィール
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- w-inds. (ういんず)
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橘慶太、千葉涼平、緒方龍一からなる3人組ダンスボーカルユニット。2000年11月から毎週日曜日、代々木公園や渋谷の路上でストリートパフォーマンスを開始。2001年3月14日にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年リリースされた1stアルバム『w-inds.~1st message~』はオリコンチャート1位を記録。これまでに日本レコード大賞 金賞7回、最優秀作品賞1回を受賞し、NHK紅白歌合戦には6回出場と、実力・人気を不動のものとした。その活躍は、台湾・香港・韓国・中国・ベトナムなど東南アジア全域に拡がり、海外でも数々の賞を受賞。台湾ではアルバム4作連続総合チャート1位を記録。日本人として初の快挙を達成。21世紀という新しい時代に日本を中心に、世界中へ新しい風を巻き起こし続けている、男性ダンスボーカルユニット―――それがw-inds.である。
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