古くから日本人の生活に結びついてきた「銭湯」。そんな「銭湯」は、近年後継者問題や設備の老朽化などにより店舗数が減少しています。一方で、近年のインバウンド需要もあってかメディア露出が多くなっており、若い世代からも支持を集めています。 ということで今回は銭湯に行ったことがない、馴染みがない人でも行き易い「若い番頭がいる銭湯」をセレクト。この記事を読むと、銭湯のイメージが変わるかもしれません。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
「銭湯」は「地域のコミュニティーの場」
初めまして、「東京銭湯 - TOKYO SENTO -(以下、東京銭湯)」代表の日野と申します。今回「HereNow」で、都内近郊の銭湯特集記事を書かせて頂くことになりました。
「銭湯」というと「温泉」や「スーパー銭湯」との差が分からないかと思いますが、分かり易く分類すると「温泉」は「観光施設」、「スーパー銭湯」は「レジャー施設」、「銭湯」は「地域のコミュニティーの場」と分類されます。
「銭湯」が「地域のコミュニティーの場」と言われてもしっくり来ないと思いますが、実は50年程前は家に風呂はそれほど普及しておらず、地域の人がみんな町の「銭湯」にお風呂に入りに行く時代がありました。
しかし現在のように各家庭にお風呂が普及し始めると徐々に「銭湯」への客足は遠くなり、近年は年50軒ペース(週1軒ペース!)で減少し始めており、今後も減って行くと予想されます。
減少の原因は他にも老朽化や代替わりの問題など様々ありますが、「銭湯」の特徴である「地域のコミュニティーの場」としてのニーズが無くなって来ていることも一因かと考えています。
皆さん、今「地域のコミュニティーの場」を必要としていますか?僕自身、東京に住んでいると近所付き合いが希薄で、お隣さんの顔すら知らなかったりしますが、昨今、立て続けに起きている大震災などを考えると、地域の繋がりや「地域のコミュニティーの場」としてのニーズはまだまだあるものと考えます。
「銭湯」を通して地域を知り、地域と繋がり、地域と出会う。
もちろん「銭湯」の楽しみ方は人それぞれですが、僕はそんな魅力を「銭湯」に感じ、「東京銭湯」を運営しています。
今回より「銭湯」の多岐に渡る魅力を、国内のみならず国外への皆さんにも伝わればと考えています。初回は「若い番頭がいる銭湯」をセレクト。今回ご紹介する5つの銭湯はいずれも入口はフロント式で、シャンプー、ボディーソープ、タオルなどの貸出しや販売をしていますので、みなさんも手ぶらで是非行ってみてください。
お客と一緒に銭湯を変えていく。台東区のビル型銭湯『日の出湯』
銀座線稲荷町駅から徒歩4分。36 歳の田村祐一さんがオーナーを務めるアクセスの良いビル型銭湯が『日の出湯』です。昭和14 年にひいおばさまから受け継がれ、東京大空襲で奇跡的に焼け残ったこの銭湯を田村さんが31 歳の時に継ぎました。
2 階建ての作りをした『日の出湯』は、大きな古代檜の浴槽とジェットバス付きの浴槽が、真ん中にどんと鎮座しているのが印象的。
血行・新陳代謝を促進し神経を休める森林浴作用が期待できる古代檜の浴槽。2000 年に改修工事を行い、現在1 階にはスチームサウナ、2 階の岩風呂が設置されています。
そして『日の出湯』に来たなら、必ず体験して欲しいのが、炭酸シャワー! 5 分100 円で利用可能な炭酸シャワーは、男女問わず利用者が多く、抜け毛が減ったなんて声もあるのだとか。
そしてもう一つ。『日の出湯』の特徴は、銭湯に入った後スッキリした状態で仕事がしたい! というお客さまの声から生まれた「シェアオフィス」。今回の取材も、そのシェアオフィスでお話させていただきました。今は土曜日のみの開放ですが、1 人あたり1000 円で、入浴した後ビルにある部屋で仕事をすることが可能となっています。
これらの取り組みの根底にあるのは、「いま来てくれているお客さまがハッピーになる方法をこれからも考えたい」という『日の出湯』を愛するお客さまを大事に考える田村さんの想い。
奇をてらうような取り組みではなく、訪れるお客さまをよく見て、必要なことに真摯に取り組む田村さんの人柄が、とても印象的な銭湯です。
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日の出湯
住所:東京都台東区元浅草2丁目10-5
営業時間:15:00〜24:00 (最終受付23:40)
定休日:水曜日料金:中学生以上460円、小学生 180円、小学生以下 80円
URL:http://hinodeyu.com/
その他:毎週木曜日に、1 階と2 階が男女入れ替わります。
限られたスペースを最大限活用する! 北区の『殿上湯』
JR 駒込駅から徒歩9 分。原さん夫婦が運営に携わる、築50 年以上続く老舗銭湯が『殿上湯』。江戸時代に徳川幕府が鷹狩りや犬追物を上覧したこの地が御殿山と呼ばれていたことから、日本で唯一『殿上湯』という名がつけられ愛されてきました。
『殿上湯』は、地下135mから汲み上げた天然水を100 %使用した備長炭風呂が自慢。保湿力が高く柔らかい軟水で、お風呂はもちろん、シャワーも天然水を使用しているため、エステに通うよりも手軽に美肌ケアが叶うかも。お風呂上りには飲用の天然水も楽しめるので、身体の内と外、両方からスッキリした気分になるでしょう。
「銭湯は接客業。銭湯に来てくれるお客さまになにが必要か考えたい」と話す原さん夫妻。
様々なイベントスペースとしてやランニングステーションとしても銭湯を活用しているほか、敷地内に海外からのお客様も受け入れられるような簡易宿所の準備を進めいるんだとか。ホームページも多言語対応していたりと、海外からのニーズも積極的に取り組もうとしています。
そして来年からは、もともとゲルマニウム温浴のあったスペースをマッサージスペースに変えて、「銭湯×マッサージ」という新しいサービスも始める予定とのこと。
「銭湯のファンを増やすためにも、“銭湯×何か”の掛け合わせで新しいことに挑戦していきたいんです」と原さんはいいます。
銭湯という限られた空間を、上手に使うアイデアを次々と実践している『殿上湯』。今後の展開が楽しみな銭湯です。
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殿上湯
住所:東京都北区西ケ原1-20-12
電話番号:03-3910-6426
営業時間:16:00~23:00
定休日:金曜日料金:大人 460円、中学生 300円、小学生 180円、小学生未満 60円(親同伴無料)
URL:http://denjyoyu.tokyo/
2016年9月にリニューアルオープン! 東京・銭湯界の若手のホープが営む、荒川区『梅の湯』
JR田端駅より徒歩15分。業界では若さとそのルックスから「銭湯王子」としても有名な栗田尚史さんが営む銭湯が、荒川区の『梅の湯』。
後に紹介する『喜楽湯』は栗田さん家族が所有しており、現在は銭湯運営の未経験者の我々「東京銭湯」に経営を任すという、業界ではなかなか考えられない感覚の持ち主です。そして物腰の柔らかく、優しい彼の立ち振る舞いは誰から見ても好感を与える接客応対をしてくれます。
彼のいる荒川区の『梅の湯』は、今年の9月5日にリニューアルオープンしたばかり。2階に浴場スペースを備えますが1階には栗田くんの母が切り盛りする焼き鳥屋があり、銭湯と飲食が楽しめる複合型の銭湯です。
浴場のある2階に上がるとまずは広いフロントスペースと、『梅の湯』の代名詞であるカルタ絵が壁に飾られ向かえてくれます。これは建て替え前の『梅の湯』の天井にあった飾りをリニューアルに合わせて壁に移植したものです。
浴場は最新の設備を導入し、サウナ、薬湯、マッサージ風呂や露天風呂も備えます。そして最近のトレンドに合わせて「水素水風呂」も導入。有名な銭湯が立ち並ぶ荒川区ですが、今後も栗田さんと『梅の湯』は注目される存在であり続けるでしょう。
銭湯×シェアハウス。独自企画に注目の鶴見区『清水湯』
JR鶴見駅からバスを使って約10分。オーナーの髙橋政臣さんが営む、昔ながらの煙突を構えてそびえ立つ銭湯が『清水湯』です。創業は昭和24年。木材屋をしていた髙橋さんの祖父が、居抜きで銭湯を買い取ったことから『清水湯』が始まります。
『清水湯』の特徴は、何と言っても裏の住居スペースで取り組んでいる銭湯シェアハウス。この『清水湯』の銭湯シェアハウスでは、様々な方が暮らしています。
今の住人は8人。夫婦や子連れの方、犬を飼っている方、学生さんなど住居者はさまざま。しかし入居者は公開募集しているわけではなく、ご縁とスカウトで決めているんだそうで、これは髙橋さんが以前にシェアハウスで長年過ごした経験から。お互いのゆとりある部分で助けあえる、あたたかな空間が銭湯の裏に存在しています。
そして『清水湯』の特徴は、銭湯営業の休みの日等に開催している各種イベント。写真は2013年の「清水湯・花見祭り」の様子です。この大きな桜のオブジェを眺めながら他に飲食などの出展ブースを設け、演奏を聞きながら銭湯での花見を楽しめるというイベントを開催しました。
最近では、フロントをバーカウンターに見立てた銭湯バーイベントを開催するなど、『清水湯』では銭湯の浴場スペースすらも利用した試みを展開。銭湯を入浴だけでなく如何に活用するか。今後も高橋さんの独自企画にはますます注目です。
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清水湯
住所:神奈川県横浜市鶴見区潮田町3-137-2
電話番号:03-3893-1695
営業時間:15:00~22:00
定休日:毎月3日・13日・23日
料金:中学生以上 470円、中学生 370円、中学生未満 200円
WEBメディアが「銭湯」経営!? 「地域のコミュニティーの場」を目指す、川口市『喜楽湯』
川口駅から徒歩12分。最後に紹介するのは、我々「東京銭湯」が経営する『喜楽湯』。番頭を務めるのは、お笑い芸人としても活動するケンユウ(湊研雄)と、バンドマンのユースケ(中橋悠祐)の2人です。
元々前述の『梅の湯』の栗田さん家族が所有している『喜楽湯』ですが、2016年の4月より「東京銭湯」での経営がスタートし、現場は2人の若い番頭が運営をしています。ちなみにケンユウのお兄さんは京都の『サウナの梅湯』で頑張る三次郎(雄祐)さんで、兄弟共に銭湯の番頭をしています。
家族経営が多い銭湯の業界において、「東京銭湯」は会社経営のスタイルで銭湯文化を継承できないかと模索し、運営しています。
例えば今年の5月5日の「こどもの日」には、地域のお客さんに広く楽しんでもらえるよう、バー出店で飲食ができるようにし、普段の駐車場ではテントを張ってみんなが集まれるようなイベントを企画しました。
他にも近隣の小学校に入浴マナーの講習に行ったり、女性客をターゲットにしたサービス「ガールズ月間」を展開したりと、「銭湯」というものがまた地域にとって必要な場所になるよう日々切磋琢磨しています。
そして番頭2人はそれぞれのやりたいこと、お笑い芸人やバンドの活動も同じように力を入れており、最近はそれぞれのライブ活動の他に、ケロケロウェーブというFM川口の番組でケンユウがサブDJを担当し、番組中の選曲をユースケが担当する、というようなこともやっています。
まだ始まったばかりの『喜楽湯』ですが、今後の取り組みに注目してもらえたら嬉しいです。
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喜楽湯
住所:埼玉県川口市川口5-21-6
電話番号:048-258-7689
営業時間:15:00~23:00
定休日:月曜日
料金:大人430円、6歳以上12歳未満 180円、6歳未満 無料、サウナ 無料
URL:https://tokyosento.com/kiraku-yu/7838/
- プロフィール
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- 東京銭湯 - TOKYO SENTO –
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「東京銭湯 – TOKYO SENTO –」は、東京を中心とした銭湯情報をお届けするは銭湯特化型のウェブメディア。銭湯情報を中心に、銭湯をモチーフにした商品、銭湯でのイベントなど、「銭湯」をキーワードにした情報をキュレーション。2016年4月より埼玉県川口にある「喜楽湯」の経営もしている。
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