3年前の「TOKYO FILMEX」で上映され、重度の脳性麻痺を持つ障害者が連続殺人を犯すというセンセーショナルな内容が話題となり、その過激さから一般公開が決まらなかった衝撃作が、ついに公開される。「おそいひと」と平仮名で曖昧に表記されているが、漢字では「襲い人」と書く。
主演の「襲い人・住田」役は、ライヴパフォーマーとして活躍する重度身体障害者住田雅清氏42歳が、実名のまま出演。移動は電動車椅子、コミュニケーションはトーキングエイドというキーボードで音声を出す機械を使い、介護者のサポートを受けながら自活する傍ら、ショッキングなライヴパフォーマンスが熱狂的な支持を受けるなど、幅広く活躍している人物。本作は本名のままに体当たりの演技で挑戦した初主演作品となる。
全編を覆う狂気を孕んだモノクローム映像に、耳から離れないノイズ・ミュージック。音楽を手がけているのは「world's end girlfriend」。『おそいひと』の、斬新なカメラワークと相俟って、観る者の身体から鮮烈なカタルシスを放出させる。
電動車椅子で移動し、ボイスマシーンで会話を交わす。重度の身体障害者である住田(住田雅清)は介護者のサポートを受けて一人暮らしをしている。また、住田のよき理解者でもあるバンドマンのタケ(堀田直蔵)とつるみながら、平穏な日々を過ごしていた。
そんなある日、住田のもとに大学の卒業論文のために介護を経験したいという敦子(とりいまり)が現れる。そんな経験は何度もしているはずの住田の中で、自身にも整理しきれない違和が蠢き始め、混沌とし、次第に狂気に身を委ねていく…。そして、住田はあるひとつの決心をするのだが…すべては血塗られた結末へと加速的に収束されていく。
『おそいひと』
ポレポレ東中野にて12月1日からロードショー
監督:柴田剛
出演:住田雅清 / とりいまり / 堀田直蔵 / 白井純子 / 福永年久
製作年:2004年