新たな風景表現の潮流を切り開く写真家として近年注目を集めている津田直の個展『SMOKE LINE−風の河を辿って』が、12月21日(日)まで資生堂ギャラリー(東京・銀座)にて開催されている。
津田は1976年生まれの写真家。大阪や東京を中心に活動し、近年は海外にも活躍の場を広げている。津田は各地を旅し自らを風景に溶け込ませる独特の視点で、私たちを囲む風景の拡がりや、時間の流れの大きな連続性など、写真では体験できないものを写しとることを試みてきた。津田の作品の風景には、深い奥行と、透明な空気感、静かながら観るものを作品の奥へと惹きつける鋭さと強さがある。
本展では、中国、モンゴル、モロッコを旅して3年の歳月をかけて制作した新作を資生堂ギャラリーならではのスケール感で紹介。津田は新作に臨むにあたり、全ての領域を移動し続け私たちの世界を帯状につなぎ保つ「風」に着目し、世界の普遍的な構造を写真で表現することに挑戦した。
大展示室では、3地域で撮影した砂漠、湖、稜線、河、雲海、屋根等異なる風景を混在させ、図の集積から空間や時間の無限の拡がりを感じさせる絵巻物のイメージで構成。小展示室では、津田が風に導かれて出会った人々と過ごした時間を通して視えてきた「個」の存在に光をあて、村、家族などの単位での人の営みを表現。大小展示室を通して、私たちを囲む「世界」のダイナミズムと「人」の営みとの関りが視えて来るに違いない。
一見隔たりのある地域同士が、自然界のスケールでは同一のものとして線を結び、世界をつなぎ保つ透明の帯「SMOKE LINE」が浮かびあがる。千年単位のスケールでランドスケープと向き合い、独自の風景論を唱える写真家津田直の、新たな世界に期待したい。
津田直展
『SMOKE LINE―風の河を辿って』
2008年10月28日(火)~12月21日(日)11:00~19:00(日曜・祝日 11:00~18:00)
会場:資生堂ギャラリー(東京・銀座)
休館日:月曜日
料金:無料
主催:株式会社 資生堂
(画像:© TSUDA Nao)