【フォトレポート】『ART@AGNES アグネスホテル アートフェア 2009 ファイナル』

日本初のホテルを使ったアートフェアとして人気を博したART@AGNESが、5回目となる今年で惜しまれながら最終回を迎えた。

1月10日、11日にアグネスホテル アンド アパートメンツ東京(東京・神楽坂)で行われた『ART@AGNES アグネスホテル アートフェア 2009』をレポートする。



近年、世界でも日本でも新しいアートフェアが次々と開催されている。その中でも『ART@AGNES』の特徴は、委員会による選考を経たギャラリーによる質の高いコンテンポラリーアート作品(2009年は32ギャラリーが出展)と、ホテルの客室を利用した珍しい展示のかたちである。

入場して最初の部屋はオオタファインアーツの展示。なんと部屋全体がまるごと梅田哲也の空間インスタレーション作品になっている。写真はその一部分で、部屋の一角に積まれた羽根が時折舞い上がる仕掛け。机の上のホテルカードには梅田氏のサインがさりげなく置かれ、バスルームにも水が循環する仕掛けがあった。


モリユウギャラリーの窓辺を彩る五十嵐英之の大きな写真作品。エプソンのプリント技術ピエゾグラフを駆使したとても滑らかな質感が目を引く。彼は今夏同ギャラリーで個展を開催予定。





タロウ ナスの部屋ではベッドルーム全体を使って佐々木憲介の油彩画がずらっと並べられていた。脇のオブジェまですべて作家本人が設置したそう。新作ということで、部屋が絵の具のいいにおいに包まれていた。

小山登美夫ギャラリーからは多くの作家の作品が出展されていた。写真は大竹利恵子の2008年の彫刻作品、『ともだち』。


アラタニウラノの部屋のベッドには梅津庸一の自画像。本人の私物である服や写真に周りを囲まれていた。



同じくアラタニウラノから、淺井裕介のバスルームインスタレーション。鏡に施されたペインティングは会場近くの公園から採取した土を使用しており、「場」の特性を利用するという作家の姿勢が表れている。トイレの上に座っているオブジェは、過去の展示作品で使用されたマスキングテープによって作られており、軌跡が感じられる、作家にとって大切な存在。




カイカイキキギャラリーからうれしいサプライズ!と用意された福袋はなんと完売。さらに、Tシャツの販売が行われていた。写真手前が青島千穂、奥が村上隆のデザイン。


山本現代の部屋では宇川直宏がライブドローイングを行っていた。観客のリクエスト(生き物に限定)の中から、作家によって無作為に選ばれたモチーフを描いていく。そうして次々生み落とされる生き物たちは、前に描かれた生き物の遺伝情報を受け継ぐ。例えばタコの次に生まれたウサギは8本足という具合。ユニークな「出産シーン」に、立ち会った観客も興味津々の様子だった。


あまりの人気のためチケットが完売にまでなった今回の『ART@AGNES ファイナル』。ホテルの部屋に合わせて作られたため、たった2日間のこの場限りでしか見ることができない作品もあり、注目の現代美術ギャラリーが集結する貴重な機会とあって多くのアートファンと業界人でにぎわっていた。

実行委員会は来年以降、ART@AGNESを母体とした別のかたちで活動予定とのこと。ギャラリーとは一味違ったホテルという展示空間で新しいアートを見せてくれたART@AGNES、そして盛り上がってゆく日本のアートイベントの今後が楽しみである。

(投稿・撮影:岩木万里)

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