サンタクロースを信じる男を主人公とした、リー・カルチェイムの最新作『ビリーバー』が今年9月、世界に先駆けて舞台化される。
同作のキャストには、勝村政信、風間俊介、草刈民代、川平慈英という実力派が勢揃い。演出を鈴木勝秀が手掛け、東京を皮切りに大阪、福岡、仙台でも上演される。この舞台の記者会見が、サンタクロースという題材や創造力、ファンタジーといった作品の性質と関連して選ばれたという東京・四谷の東京おもちゃ美術館で行われた。
2001年、『ディファイルド』で衝撃的な日本デビューを飾ったリー・カルチェイム。冒頭に紹介された彼のメッセージによれば、「9.11」以降、信仰を押しつけ争う宗教に対して嫌悪感がわいたそう。しかし、こんな現代でも信じられる「神」は必要で、おおらかで優しいサンタクロースこそが理想的ではないかというアイデアが『ビリーバー』の題材となっている。
会見には演出家、出演者の5名が登場。サンタクロースを信じることの大切さを訴える主人公を演じる勝村は、ストーリーの背景にある「家族の再生」というテーマも丁寧に描いていきたいと述べた。また、主人公の妻役を演じ、鈴木の演出作品は2作目の出演となる草刈は、凛とした佇まいで「多くの場面が次々と展開して行き、ラストは美しいシーンになる」というイメージを描いていると語ってくれた。
9歳の息子役、風間は「信じること自体は誰も傷つけないけれど、それを人に話すことから対立が生まれる。そういった危うさを真摯にとらえた作品」と脚本の印象を生き生きとした表情でコメントした。そして今回、ひとり20役に挑戦するという川平は「このような試みは初めてだが、コメディ色を出し過ぎることなく演じ分けたい」と静かに強調した。
演出の鈴木は、『レインマン』『欲望という名の電車』といった名作のほか、最近では『余命1ヶ月の花嫁』など多くの話題作を送り出してきた人物。またこれまでも『ディファイルド』『SEMINAR』といったカルチェイムの作品を手掛け、「人間が持つ優しさを大切にする」というその世界観は熟知している。かつて小劇場でよく共に仕事をしていたという勝村と久々に組むことになり、「皆でアイデアを出しながら思いっきり「遊んで」いきたい」と意気込みを語った。
意外にも今回が初顔合わせだという俳優陣は、稽古に取り組む前からすでに息が合っている様子。また、自分が愛するもの、信じるものは何かと聞かれ、勝村は「子ども」、草刈は「家族」と答えるなど、会見場には終始明るく和やかな空気が漂っていた。
閉校となった元小学校内に設けられた会場には、子どもの頃に遊んだ玩具や、木でできたおもちゃなどが並んでおり、その懐かしく温かい雰囲気はこの作品を語るのにふさわしい場となっていた。軽妙なやりとりを楽しみつつ、人間の創造力や、信じること、愛することについて考えさせられる作品になりそうだ。9月の上演を楽しみに待ちたい。
『ビリーバー』
作:リー・カルチェイム
演出・上演台本:鈴木勝秀
出演:
勝村政信
風間俊介
草刈民代
川平慈英
東京公演
2010年9月3日(金)~9月12日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
料金: S席7,800円 A席6,000円(全席指定)
※チケット一般発売中
大阪公演
2010年9月17日(金)、9月18日(土)全2回公演
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
料金:8,500円(全席指定)
チケット一般発売日:2010年7月17日
※未就学児童の入場不可
福岡公演
2010年9月19日(日)
会場:福岡市民会館(全席指定)
料金:S席7,500円 A席6,500円 B席5,500円
※未就学児童の入場不可
仙台公演
2010年9月21日(火)
会場:仙台電力ホール
料金:7,000円(全席指定)
※未就学児童の入場不可