8人のアーティストが自ら開拓し続ける表現の「場」について語るインタビュー集『じぶんを切りひらくアート─違和感がかたちになるとき』が、フィルムアート社から発売される。
登場するのは、表現における旧来の形式や場所に安住せずに創造を続けるアーティスト達。東京の公園でテント生活を送りながら、身近な政治を考える活動を展開するいちむらみさこ。七大陸の最高峰登頂をはじめとする冒険家としての活動を経て、写真表現にこだわる石川直樹。ホーメイ奏者としても知られ、身体性を駆使したパフォーマンスやインスタレーションを紡ぎ出す山川冬樹をはじめ、下道基行、遠藤一郎、志賀理江子、高嶺格、三田村光土里の8人。それぞれが、自分と社会の接点における旧来の制度・慣習に違和感を覚えながら、いずれも自身の「切実さのかたち」を表現することで生きる道を選択したアーティストだ。
編者は、水戸芸術館の現代美術センターで学芸員を務める高橋瑞木。現在開催中の『新次元 マンガ表現の現在』展など、彼女自身も既存の枠組みにとらわれない展覧会の作り手として知られる。同書の帯に記された通り「マイクロポップ、芸術起業論以降、アーティストたちが目指す<切実さのかたち>と<場>」を示した1冊といえそうだ。各ページの端には彼らの印象的なひとことも綴られるなど、広い意味で閉塞した環境から一歩踏み出すためのヒント集として読むことも可能となっている。