濃密な心理サスペンスを描くイランのヒューマン・ミステリー映画『彼女が消えた浜辺』が、ヒューマントラストシネマ有楽町をはじめ全国で公開中だ。
物語の舞台はカスピ海沿岸。セピデーは離婚したばかりの友人を紹介しようと子供の幼稚園の教師であるエリを誘い、大学時代の友人たちと週末のバカンスを過ごす。だがヴィラは満室で滞在できず、彼らは美しい浜辺にある長年使われず朽ちかけた小さな別荘に辿り着く。温かな談笑がエリを迎え、エリは戸惑いながらも初対面の人々に馴染んでいるかに思われた。しかし翌朝、子供の1人が溺れ、浜辺にいたエリも忽然と消える。彼女は溺れたのか、それともどこかに姿を消したのか。捜索と共に浮かび上がってくるのは、「彼女のことを名前以外何も知らない」という事実だった。
同作は『第59回ベルリン国際映画祭最優秀監督賞』ほか多くの国際映画祭で賞を獲得しており、2009年のイラン本国におかえる興行収入2位の実績を持つ注目の作品だ。監督・脚本のアスガー・ハルハディは、イラン映画の未来を担う実力派監督だ。セピデー役のイランの若手女優ゴルシフテェ・ファラハニーは、ハリウッド映画『ワールド・オブ・ライズ』でレオナルド・ディカプリオとも共演しており、その繊細な演技も見所のひとつ。また、エリ役のタラネ・アリシュスティはファルハディ監督との3度目のコラボとなる。
人間が普段見せる横顔は、実はまったく別の顔をもつかもしれない。その恐れを、美しい風景の中でドラマチックな筆致で描くイラン・ニューウエーブ映画が登場した。
『彼女が消えた浜辺』
2010年9月11日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショー
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
キャスト:
ゴルシフテェ・ファラハニー
タラネ・アリシュスティ
配給:ロングライド
(画像:©2009 Simaye Mehr.)