三島由紀夫や山口百恵をモチーフに過去から現代を描出する、松蔭浩之展『KAGE』

現代美術家、写真家として活動する松蔭浩之の個展『KAGE』が、東京・市ヶ谷のMizuma Art Galleryで10月16日まで開催されている。

最近「近未来についてよく考える」と言う松陰は、現在からの近未来を思い描くのではなく、その言葉がリアルに現存していた過去を考察するという。高度経済成長時代や冷戦時代、つまり松蔭自身の幼少期や思春期にあたる70年代から80年代バブル期前夜など夢や希望を映し、一方では不安を広げた「近未来のあった時代」を再考しつつ、現代を描出している。

さらに、光や存在感、躍動感に満ち溢れた絶対的アイコンが少なくなった現代において、松陰は「すべての存在を立証する<影>にフォーカス」し、新しいクリエイティブに踏み込んでいる。「影」とは、光や物体にさえぎられて形成されるいわゆる「Shadow」だけでなく、遺影、御影などの絶対的なイメージ、また影響力、さらには影武者などの「にせもの」や裏方、隠され闇に葬られた事実、社会や心の暗部なども指しているという

「太陽が消滅し風が止まった時代のアート」をテーマとする同展では、かつて圧倒的なアイコンであった三島由紀夫や山口百恵、さらに若き日のオノヨーコなどをモチーフに、松蔭のごく個人史的な思春期のアイデアを、写真やオブジェ、映像からなるインスタレーションに形を変えて作品へと昇華。不親切なまでにパーソナルなアイコンが散りばめられた会場で、鑑賞者は困惑とともに、「影」を膨らませることとなるだろう。それは、松蔭自身が確立してきた、「自身を追体験させる」という表現方法の一環であるともいえるかもしれない。

松蔭浩之展『KAGE』

2010年9月15日(水)~10月16日(土)
会場:Mizuma Art Gallery(東京・新宿区)
時間:11:00~19:00
休廊日:日、月曜、祝日

(画像上:BLUE / MOMOE 2010, tarpaulin, inkjet print, 333x228cm ©MATSUKAGE Hiroyuki Courtesy Mizuma Art Gallery、画像下:UNDERCURRENT 2010, lambda print, 250x125cm ©MATSUKAGE Hiroyuki Courtesy Mizuma Art Gallery)

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