フランスコミック界の巨匠として知られるメビウスの長編漫画『L'INCAL(アンカル)』の日本語完訳版が、小学館集英社プロダクションから刊行される。
メビウスは、大友克洋や松本大洋といった日本の漫画家に多大な影響を与えたことで知られる「バンド・デシネ=BD(ベーデー)」界の巨匠。昨年の来日時には、対談を行った浦沢直樹が熱心なメビウスコレクターであることを明かしたことでも話題となった。また、メビウスは映画『エイリアン』『トロン』『フィフス・エレメント』などの作品にもデザイナーとして関わっており、彼が漫画界や映画界に与えた影響は計り知れない。
同書は既に世界中で版を重ねている、メビウスの長編SFコミックの代表作とも言うべき作品。原作を『エル・トポ』や『ホーリー・マウンテン』などの作品でカルト的人気を誇る映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーが手掛けており、宇宙の命運を司るといわれる謎の生命体「アンカル」をめぐる壮大なSF叙事詩が繰り広げられている。
日本において初の完訳版となる同書には、メビウスファンとして知られる谷口ジローと藤原カムイの対談も収録。また、同書の刊行について大友克洋からは「日本のMANGAは世界へ行きました。今度は私達が世界のBD(まんが)へ行く番です。これがメビウスです。」とコメントが寄せられているほか、松本大洋からは「一体何回生まれ変われば彼のように描く事ができるのか、と絶望したり、今生、これ程の素晴らしい目標に出会えた事を幸せに感じたりします。メビウス氏は僕のスーパースターです。」と熱烈なメッセージが寄せられている。
(画像:Mœbius & Jodorowsky, l'Incal, version classique © Les Humanoïdes Associés,SAS - Paris, 2010)