孤独に追いつめられていく主婦と崩壊寸前の家族を描いた映画『家族X』が、東京・渋谷のユーロスペースで9月から公開される。
物語の舞台は東京郊外の新興住宅地。失職の危機にある夫・健一は、妻・路子との会話を避けるように無言で出社していくが、社内にも行き場がない。就職に失敗した息子・宏明は、アルバイトと自室の往復を繰り返す日々を送っている。マイホームを手に入れ、幸せも手に入れたと信じていた路子。しかし家族とコミュニケーションを取ることができず、黙々と食事を作り、誰もいない食卓に料理を並べる孤独な毎日の中で、路子は少しずつ追い詰められていく。
同作は、1980年生まれの映像作家・吉田光希の劇場デビュー作品。吉田は東京造形大学で映画を専攻し、在学中から諏訪敦彦監督に師事しており、塚本晋也監督作品を中心に映画制作現場に参加。2007年の前作『症例X』が注目を集め、『第61回ロカルノ国際映画祭』を始めとする様々な国際映画祭の招待作となった。同作について吉田は「これは日本の象徴的な家族を伝えるための映画ではなく、この映画を経験することが、自分と家族の関係を見つめ直す場となることを目指した」と語っている。
キャストは、主演の路子役に南果歩、夫の健一に田口トモロヲ、息子の宏明に郭智博。寸分の狂いもない生活の中で、徐々に狂気をはらんでゆく主婦を好演した南の演技に注目だ。
『家族X』
2011年9月からユーロスペースで公開
監督・脚本:吉田光希
音楽:世武裕子
出演:
南果歩
田口トモロヲ
郭智博
筒井真理子
村上淳
森下能幸
配給:ユーロスペース+ぴあ
(画像:©PFFパートナーズ)