『敦―山月記・名人伝―』が、6月13日から東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演される。
同作は中島敦の世界観を、短編小説『山月記』『名人伝』を軸に、『狼疾記』『北方行』『光と風と夢』などの文章も織り交ぜながら表現した作品。野村萬斎が構成、演出を手掛け、2005年に初演、2006年に再演された。古典芸能の技法や発想、能狂言における「謡」「囃子」などの音楽劇の要素を現代劇と融合させ、狂言師たちが大胆な舞台美術、照明、映像効果のもとで演じるという演出により、初演時には『朝日舞台芸術賞』舞台芸術賞や『紀伊國屋演劇賞』個人賞を受賞している。
新たな配役と演出で再演される今回は、萬斎に加え、人間国宝の野村万作、石田幸雄、深田博治、高野和憲、月崎晴夫が出演。また、真鍋大度(ライゾマティクス)が舞台映像を担当するほか、尺八の藤原道山、大鼓の亀井広忠が生演奏を行う。チケットは発売中。上演スケジュールなどの詳細はオフィシャルサイトをチェックしよう。
野村萬斎のコメント
初演から10年経ちますが、この度の再演ではキャストの変更に加えて、新たな演出も施します。前回は『山月記』で父・万作が李徴を演じ、『名人伝』で私が紀昌を演じましたが、今回は私が両方を演じます。敦の分身である李徴と紀昌を私が演じることで、より「敦 collaborates with 萬斎」という色彩が強くなってくるのではないかと思います。父は叔父の万之介が演じた甘蠅老師と老紀昌という芸を極めた名人の役を務めます。近年、父の芸風はますます型を感じさせない境地に至ってきており、「メタシアター」ならぬ「メタ狂言」という部分もお見せできるのではないかと思います。また、2005年・2006年同様、今回の再演にも、囃子方に尺八演奏家の藤原道山さん、大鼓の亀井広忠さんをお迎えします。このお二人の強力な音楽の支えのなかで、狂言の「語リ」、身体の技法を駆使して、漢文調の中島敦の非常なる孤独な世界、時に弾け飛ぶような明るい世界…その両極端な世界観をお見せできると思います。文章の素晴らしさはもちろん、泣き笑いの要素もあり、何より人間の中にある混沌が描かれています。中島敦のキーワードに「黒い地球」というものがありますが、冷めてしまった地球という幻影を我々はだんだん認識しつつあるのではないでしょうか。中島敦は戦中、パラオに勤務していたことがあります。戦後70年という節目に、パラオに赴いた中島敦の想いも加えて再構成できれば、なお深みも増すかと思います。初演から10年、まったく新しくなる『敦―山月記・名人伝―』に是非ご期待ください。
イベント情報
『敦―山月記・名人伝―』
2015年6月13日(土)~6月21日(日)全9公演
会場:東京都 三軒茶屋 世田谷パブリックシアター
原作:中島敦
構成・演出:野村萬斎
出演:
野村万作
野村萬斎
石田幸雄
深田博治
高野和憲
月崎晴夫
大鼓:亀井広忠
尺八:藤原道山
料金:
一般 S席7,800円 A席5,000円
プレビュー公演 S席6,800円 A席4,000円
※高校生以下は半額、プレビュー公演は6月13日、6月14日