西川美和監督の新作映画『永い言い訳』の予告編が公開された。
予告編では、本木雅弘演じる作家の津村啓こと衣笠幸夫が、事故で亡くなった妻の遺骨を抱えている様をメディアが報じているシーンや、竹原ピストル演じる、同じく事故で妻を亡くしたトラック運転手・大宮陽一の姿、幸夫が黒木華演じる不倫相手・福永と体を重ねている場面、池松壮亮演じるマネージャー・岸本が幸夫に「奥さん亡くなってからちゃんと泣きましたか?」と尋ねる様子などが確認できる。
あわせて同作の劇中歌となるオペラ楽曲“オンブラ・マイ・フ”を手嶌葵が歌うことが発表。西川監督は手嶌が歌う同曲について「すべてを洗い流し、主人公を再出発に導いてくれる見事な『最終兵器』となってくれたと感じています。自分の作った映画なのに、手嶌さんの声が聴こえ始めるとあやうく涙腺が緩みそうになるので、たいへん危険です」とコメントしている。
10月14日から全国で公開される『永い言い訳』は、西川監督が『第153回直木三十五賞』の候補にも挙げられた同名の自著を映画化する作品。妻・夏子が事故で亡くなった時に不倫相手と密会しており、世間に悲劇の主人公を装うことしかできないでいる人気作家の幸夫が、夏子の親友の遺族らとの交流を通して人のために生きる幸せを知っていく、というあらすじだ。
手嶌葵のコメント
西川監督の素敵な映画の挿入歌を歌わせて頂き、とても光栄に思っております。
ご依頼を頂いた時は、まさかオペラの曲だなんて!と正直驚きましたが、私なりに大切に歌わせて頂きました。
たくさんの方にご覧になって頂きたいなと思います。西川美和監督のコメント
原作を書いていた頃から、この作品はヘンデルの「調子の良い鍛冶屋」に始まり、「調子の良い鍛冶屋」で終わる、と決めていました。それを軸にして、全ての音楽を考えて行こうと思ったとき、音楽の伊藤秀紀さんから「クライマックスを飾る曲に」と同じヘンデル作曲の歌曲「オンブラ・マイ・フ」を提案されました。初めに聴いたのはダイナミックで圧倒的なキャスリーン・バトル版でしたが、本作のために欲しかったのは、声楽家による王道的なアプローチではなく、「こんな風にオンブラ・マイ・フを歌う人は世界中に一人もみつからないだろう」と思えるタイプの声でした。東洋人の声質にしかないきめの細かさ、純粋さ、やさしさを持つ、唯一無二の歌い手を、とお願いすると、吉田拓郎さんの名曲「流星」の手嶌葵さんによるカバーを聴かされました。初めの数秒を聴いて、この映画はこの声に救ってもらえる、と確信しました。冬の夜の澄み切った空気のような手嶌版「オンブラ・マイ・フ」は、すべてを洗い流し、主人公を再出発に導いてくれる見事な「最終兵器」となってくれたと感じています。自分の作った映画なのに、手嶌さんの声が聴こえ始めるとあやうく涙腺が緩みそうになるので、たいへん危険です。