映画『少女邂逅』のBlu-rayとDVDが本日1月16日にリリースされた。
同作は山下敦弘監督の映画『オーバー・フェンス』の特典映像の撮影編集や、ゆるめるモ!のPVの撮影などを手掛けた1994年生まれの枝優花による初長編監督作。いじめをきっかけに声が出なくなり、山の中で拾った蚕に「紬」と名づけて大切に飼っている17歳の小原ミユリを主人公にした作品だ。ミユリ役を『ミスiD 2016』グランプリに輝いた保紫萌香、転校生の富田役をモトーラ世理奈が演じている。
同作は昨年6月から東京・新宿武蔵野館ほかで公開され、同館では9週間のロングラン上映を記録。国際映画祭に正式出品したほか、『第6回バルセロナ・アジア映画フェスティバル』パノラマ部門で最優秀監督賞を受賞するなど、高い評価を受けている。
Blu-rayの特典として、アウターケース、52ページのブックレット、メイキング映像などが付属する。
同作のリリースに寄せて、枝優花監督をはじめ、藍にいな、押切蓮介、川谷絵音、日下部克喜(山形国際ドキュメンタリー映画祭)、ケニック(ケニックカレー)、佐倉綾音、嶌村吉祥丸、長谷川圭佑のコメントが発表。劇場公開時には冨永昌敬、龍崎翔子、伊賀大介、吉澤嘉代子が推薦コメントを寄せていた。
枝優花監督のコメント
なんと少女邂逅がBlu-ray/DVDになるということで夢のようです。お家で観られます。私は群馬の田舎出身なのでこのBlu-ray/DVDという存在に何度も救われてきました。もちろん劇場で観て欲しくて作った映画ではありますが、一人でこっそり静かに大切に観て欲しい映画でもありました。なので、世界のどこか誰かの宝物になったらいいな、という想いで今回もデザインから関わらせていただいております。どうか届きますように。
藍にいなのコメント
この映画で描かれる少女達はあまりに脆くて、その脆さをどう守ったら良いのか分からないまま棘をまとってみたり、殻にこもってみたりして、狭い不自由な世界の中でどうにか息をしている。そんな姿は世の中じゃあ「思春期」とか一言でまとめられて、時には嘲笑までされるが、私にはそんな少女達の姿こそ輝いて見えた。脆いからこそ優しくて、脆いからこそ人を傷つけて、不器用な彼女達は上手く立ち回る方法なんて知らぬままとにかく生きていく。きっと、少女達は誰一人悪くない。ならば、誰が悪いのだろう?人は誰だって子供であったはずで、誰だって「大人に傷つけられたくない」という感情を持ったことがあるはずだ。その子供は、いつから子供を傷つける大人に変わるのだろう?この映画を見て、私自身がその「大人側」に変わりつつあったことに気付かされた。私達はいつの間に、あの鮮やかな感情を忘れてしまうんだろう。また忘れてしまいそうになった時、もう一度この映画を見たい。
押切蓮介のコメント
糞めんどくせえ女子高生の描写に動悸が激しくなりました。
その不器用さ、繊細さ、理不尽さにすっかりやられてしまい、なかなかへこたれております。
自分が男子で良かったと思うくらい追い詰められました。
それととにかく痛い。この映画にぶっさされた思いです。
人を幸せには出来ない映画だと思いますが、こうも心を刺されるということは何か凄い映画だったんだなと感じます。川谷絵音のコメント
僕が10代だったらこの映画を観てどんな影響を受けたのだろう。わからない。青春ってどこか危うげで、でも僕はそれをあたかも平穏なように過ごしたから、少女2人が羨ましくなりました。30歳の僕はもう逃げられないから、この映画をもう一度見てあたかも逃げた気になろうと思います。
日下部克喜のコメント
ミユリとツムギが交わし合う視線や息づかい、2人の存在そのものに、強烈な生々しさがあった。
それは枝優花監督の情念が呼び込んでしまったドキュメンタリー性のようなものかもしれない。
この哀しくも妖しい物語は、観る者を異世界へ誘う危険性さえ宿している。
だがそれ故に2人の少女が醸し出すこの濃密な空間、そのほんの些細な一瞬一瞬の中に「永遠」を見、その神々しさに平伏してしまうのだ。ケニック(ケニックカレー)のコメント
今回このような機会をいただきありがとうございます。本作を知ったきっかけはアルバイトの女優の子に枝監督を紹介いただいたことですが、その後別の友人繋がりでモトーラさんにも御来店いただいたり、DVDも友人が勤める会社から発売されるということで、縁について考えさせられましたし、本作を身近にも感じておりました。
物語の分岐点となる場面について、個人的には”とある選択”について納得出来なかった部分もありますが、観る人の年齢や、性別や、その時の感情や、何度観たかによっても、捉え方は違うんじゃないか、自分の思う正解が必ずしもそうではないのではないかと次第に思うようになりました。
「素晴らしい服・デザインとは、作り手が解釈を受け手に100%押し付けるものよりも、個々に自由に解釈できる余地を残しているものだ。」と、かつて私が好きなファッションデザイナーが語った言葉があるのですが、正にこの作品にも通じる話で、個々に自由に解釈する余地がある、それはつまり素晴らしい作品である証拠だと思うのです。
むしろ、見終わった後に、一緒に見た人たちとあれこれ話すことこそ、醍醐味なのかなと思いました。佐倉綾音のコメント
生々しく、耽美で、目の離せない邂逅だった。目を離した隙に、女の子たちのまっすぐな狂気が、次の瞬間なにをするのかわからなくて。
自分がかつてこういう生き物だったかと考えると反吐がでそうになるし、こういう生き方を通らなかったかと考えると惜しくもある。
「知らないことはいくらだって悪く見える」という言葉が作品内で出てきたが、『少女邂逅』の世界を知った私たちは、この先どう生きていけばいい。嶌村吉祥丸のコメント
他者のほとんどが家族と学校の友達だった頃、毎日をただ不器用に生きていた時間はとても貴重で、脆くて、美しかったのかもしれません。狂気的でもあり生々しい人間関係と、蚕というメタファーを通して改めて人間としての生き方について考えさせられました。映画という枠組みにとらわれずに、映像や写真を摘み取る枝優花監督の普段見ている景色を見てみたくなりました。
長谷川圭佑のコメント
どこにでもある教室という世界の明と暗、どちらにピントを合わせるかで写るモノは大きく変わりますが、暗部に当てられたピントが徐々に甘くなっていく様が少女という存在の曖昧さを表しているようでした。
教室という狭い箱の中で生きる少女、「世界はもっと広いよ」という言葉。枝監督から少女達へのメッセージのように聞こえました。冨永昌敬のコメント
最高だ。女子高生がこんなにバカだったなんて知らなかった。あいつらはその美しさ、脆さ、賢さゆえに男子を嗤い、年上を騙し、年下を弄り、同類を妬み、親を罵り、教師を廃人に追い込む邪悪な連中・・・なんかじゃなかった。『少女邂逅』は見事に女子高生たちを聖域から引きずり出しましたよ。はじめから聖域になんか棲んでいなかったことを、枝優花監督は鮮やかに暴き出してくれたのだ。
龍崎翔子のコメント
劇中でアルペジオのように反復される「虫には痛覚がない」というセリフがこの映画のキセンテンスであり、自分の中でリリィシュシュとの共通点であるところであるように感じました。「虫には痛覚がない、虫はすぐに死んでしまうから」という言葉は裏を返すと「人間は生を重ねていくから、痛みが必要なのだ」、つまり痛みを恐れるな、痛みを受け入れ、痛みを感じている自分ごと肯定するという新たな解を提示しているように感じました。最後のシーンでは、決してミユリの弱さゆえではなく、自分の痛みを受け入れる強さだったのではないかと思います。
伊賀大介のコメント
思わず2回観ました。リアリティのある学園モノでもあるし、ファンタジー性のあるおとぎ話のよう。画面がスプリットになったり、スチールを効果的に使っていたり、撮影と編集も面白い。つみきみほさんや岩井俊二監督から脈々と受け継がれてきた“切なさハンター”の系譜にある作品だと思います。
吉澤嘉代子のコメント
少女の不自由さを思い出して苦しかった。この子をこの場所から連れ出せたらと何度も思った。保紫萌香ちゃんとモトーラちゃんが二人でいる世界は完璧だった。ラストは胸にすとんと落ちた。数日経ってもじわじわと染みてくる、凄い映画でした。
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