ドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』の予告編とポスタービジュアルが公開された。
12月14日からシアター・イメージフォーラムほか全国で公開される『つつんで、ひらいて』。柳楽優弥主演の映画『夜明け』の広瀬奈々子が監督、編集、撮影を務めた同作は、中上健次や古井由吉、俵万智、金原ひとみらの著書を含む1万5千冊以上の書籍の装幀を手掛けてきた「装幀者」菊地信義を追った作品。手作業で1冊ずつデザインしている菊地の指先から、印刷、製本に至る工程を見つめ、ものづくりの原点を探っていく。撮影は2015年から約3年間かけて行なわれた。
予告編には、文字の書かれた紙を切る菊地信義の姿や、「1万5千冊を手がけた男と本をつくる人々の物語」「本の売れない時代に失われつつあるものがある」というテロップ、古井由吉、菊地の弟子である装幀家・水戸部功の姿などが映し出されている。
公開されたポスタービジュアルは、水戸部功がデザインを手掛けた「立体的宣伝ポスター」。「本をポスターにしよう」という発想のもと制作された同ポスターは、手紙のような形で折り畳まれており、中を開くと「つつんで、ひらいて」の文字が確認できるものになっている。またブックカバーをイメージした本体には白い紙が貼り付けられており、中を開くと映画の説明を読むことができる。映画のタイトルにちなんだ「折り畳まれた状態から開く」形状を目指し、折り目をタブーとするポスターの常識を打ち破る形で完成させたのだという。同ポスターは、全国の映画館で配布予定。
恩田陸のコメント
装幀家。生まれ変わったら一度でいいからなってみたい、ずっとずっと妬みつつも憧れている職業です。
西川美和のコメント
ひとりの書き手として、紙がどういう風に印刷され、製本されるのかを見せてもらえてとても有難かったです。1冊の本が出来る裏側では、これだけの人が関わっていて、もの作りというものに没頭する人々がいる。そのことにすごく感動しました。
平野啓一郎のコメント
菊地さんの膨大な仕事の中で、『決壊』が近年の重要な作品として挙げられるのを見るにつけ、私は、誇らしい気持ちになる。自分の書いた小説も、まるで、菊地さんのデザインに寄与するために書かれたかのような感じさえしてくるのだ。
若松英輔のコメント
本には二つの言葉が宿っている。目に見える言葉と、目には見えないもう一つの「コトバ」だ。この映画を見ていると、目に見えるものは、目に見えないものへの扉であることが分かってくる。そして、仕事にいのちを吹き込み、意味あるものにするのは、未知なる者への愛であることも。
- 作品情報
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『つつんで、ひらいて』
2019年12月14日(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開監督:広瀬奈々子 音楽:biobiopatata エンディング曲:鈴木常吉 出演:菊地信義 配給:マジックアワー
Special Feature
Crossing??
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