北野武の小説『不良』が本日6月5日に刊行された。
集英社から発行される同作には、中編小説『不良』と、単行本のための書き下ろし短編小説『3-4 X 7月』を収録。
『不良』は成り行きでヤクザの世界に入る少年たちを描いた作品。中学の入学式に喧嘩で相手を圧倒したことをきっかけにキーちゃんから気に入られた茂は、埼玉出身の鈴木、魚屋の佐々木と共に4人で仲良くなるが、やがて悪名高い集団へと変貌し、キーちゃんはヤクザになることを決意して姿を消し、茂はキーちゃんの代わりに番長へと立場が変化する中、茂にちょっかいを出し続けていた岡田の腹を佐々木が出刃包丁で刺してしまうというあらすじだ。
北野武のコメント
主人公の一人であるキーちゃんには、ホントにモデルとして実在した男がいるんだよ。カッコよくて、喧嘩も強かった。泳げば死んじゃうような荒川に飛び込んじゃうわ、イタズラで、電車をひっくり返しそうなヒデえこともやったしね。無鉄砲で、だらしなくて、とてつもない才能があるのに無駄にして死んでいった。でも、これ、下手すると俺だったかもしれないとずっと考えてきたことで、だから小説として浮かび上がってきたんだよ。そう、俺も、どうしようもなく、青春ってやつを無駄使いして、くたばっちまう不良になってたのかも。
物語の舞台は高度経済成長時代だけど、今も昔も変わんないよね。青春なんて無駄遣いしてるやつばっかだもの。
同じように「もしかしたらこうなっていたかもしれない自分」という思いがあって、「3―4X7月」にもそのイメージを彫ってる感じがするよね。今の、現実の俺も「胡蝶の夢」なんじゃないか。
いろいろ言い出すとキリがないけど、結局の所、バカをやったり、おっかないことが起きたり、努力がパーになったりする救いのない生き方、死に様ってのを描くのは俺の避けがたい生理なんじゃないのかな。
ちょっとマジメに言っちゃうと、いまとんでもなく生き死にの問題が差し迫った世の中でしょ?そんな時にこの物語に付き合ってくれて、なんか考えるキッカケになってくれりゃ嬉しいね。阿川佐和子のコメント
せつなくも愛おしい。プッと吹き出しつつ胸にキュンとくる。なんとアホらしくて美しい世界だろう。
湊かなえのコメント
ダイナマイトを腹に巻き、ドブ川に飛び込むキーちゃん、カッコいい!キーちゃん、カッコいい!あぁ、正しく生きることに疲れているな。
逢坂剛のコメント
その小説に馬力があるかないかは、だれにでもわかる。つまり、読み手を先へ先へとぐいぐい引っ張る、奔馬の力があるかないか、なのだ。そして『不良』には、それがある。
- 書籍情報
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『不良』
2020年6月5日(金)発売 価格:1,500円(税抜) 著者:北野武 発行:集英社