前野健太の初期3部作の配信が本日8月14日に各種音楽サブスクリプションサービスでスタートした。
配信作品は、1stアルバム『ロマンスカー』、2ndアルバム『さみしいだけ』、3rdアルバム『ファックミー』。今回の配信を記念して『ファックミー』収録曲“ヒマだから”のPVが公開された。長編アニメーション映画『音楽』の岩井澤健治監督による手描きアニメーションとなる。
さらに本日8月14日から『ロマンスカー』収録の“友達じゃがまんできない”が主題歌、挿入歌として使われている映画『僕の好きな女の子』が公開。
前野健太のコメント
初期三部作サブスク解禁に寄せて
13年前に勝手にCDを出してデビューということにしました。
今では「シンガーソングライター」という肩書きをつけていますが、すべてはこの最初の作品群からはじまった、単なる「でっち上げ」にすぎません。
誰もCDを出そうなどと誘ってくれはしませんでしたが、燃え盛っていました。
一撃をくらわしてやる、とよく言っていましたが、それはたわごとで、でもそれがなければ走り出さなかった車もあったのでしょう。今聴くと、たとえばセカンドアルバムの『さみしいだけ』なんかは、一音一音に明確な意思を感じます。指が見えます。演奏している手、その指が。
たとえば誰かの気持ちを振り切って、この一音を録らなきゃいけないんだ、という気持ち。
不思議なのは、愛情から逃げるように選んだ一音が、結果的に何かに手を伸ばしているということ。一人の女性の顔を思い出します。
一音一音を聴きながら、影のプロデューサーはこの人だったんじゃないだろうかと、思いました。男はいつだって女にはかなわない。ただ風を見て、歌を紡ぐだけ。
そんな時代遅れな歌がたくさん詰まったアルバムたちです。街の中で気軽に聴いていただけたら幸いです。
猫が、マンションが、空が、夏草が、静かに揺れると、少しだけ明日が見えてくる。特別じゃない夏なんてあっただろうか。
2020年8月14日
前野健太