柿本ケンサクによるリモート短編映画プロジェクト「+81FILM」の作品が、同プロジェクトのオフィシャルサイトとYouTubeチャンネルで無性配信されている。
柿本ケンサクが新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う自主隔離中、各地で知り合った映像作家に安否確認の連絡を取ったことをきっかけに発足した「+81FILM」。チリ、モンゴル、イギリス・ロンドンを舞台に、「ウィズコロナ時代」の各地の生活や現状を映し出す。柿本は3作の脚本を執筆したほか、共同監督という形で全作品の制作に参加。
チリ編の『Gravity』は、咳に苦しむ息子を病院へ連れて行こうとする夫婦の物語。監督をガブリエル・ディアスが務め、細野晴臣が音楽を手掛けた。バット・アムグラン監督による『Snowdrop Flower』は、モンゴルの平野を舞台に、母が咳と高熱に倒れた母のために家畜の羊を殺そうとする少年を描いた作品で、半野喜弘が音楽を担当。ロンドン編の『Silence』 は、廃墟でバレエを踊る少女の姿が忘れられなくなった青年が密かにバレエの練習を始める様を映し出した作品。ティージェー・オーグラディー・ペイトンが監督、大橋トリオが音楽を務めた。
柿本ケンサクのコメント
日本人が使う「ご縁」の言葉は、出会い、機会、運命、繋がり、関係などを意味する。 僕
がこれまでの旅で出会い学びを得た人々や、風景は、かけがえのない体験となっている。
偶然の出会いであるようで、それは全て、導かれている出会いのように思える。 このよう
な、想いをはかることも、言語ですら表現できないような不可思議な出会いや状況を経験し、僕は感謝の気持ちと共に自然と「縁」という言葉の意味を感じるようになりました。
そこには、表面や結果だけにとらわれるのではなく、背景にある目には見えないものを観るという、 日本の精神文化の深さからある言葉のようにも感じます。世界の言葉に、日本語の「縁」に匹敵する表現があるか分かりませんが、 世界共通言語である英語にはもしかすると、 このような不可思議な働きかけを表現する言葉が存在しないのかもしれません。
本企画では、世界中の「縁」で繋がっている人々と力を合わせ、各国のチームと日本でリモートでショートフィルムを制作しました。 登場する全ての人物が、家族が運命に導かれているものであり、 かけがえのない、繋がりを感じるフィルムとなっています。ガブリエル・ディアス監督のコメント
このプロジェクトに参加できてとても嬉しく、そして誇りに思います。 私たちの業界はコロナウイルスの打撃をかなり受けており、ケンサクが立ち上げたこのような取り組みは、映画制作を再起させるために非常に重要だと思います。3本の短編映画はどれも、多様性を感じられるシナリオとドラマチックなストーリーの組み合わせになっており、素晴らしい作品が完成しました。映画は多くの人と協力して作るものです。それぞれの分野から多くの才能を集め完成させる映画制作において、昨今の社会的距離は大きな障害になっています。世界中のフィルムメーカーたちはこの状況下において自宅で短編を撮影したりとエネルギッシュに活動していますが、その多くに私はどこか違和感を感じます。やはり映画は多くの人の協力があってはじめて、心を動かすストーリーや素晴らしいキャラクターが生まれてくるものだと思うからです。新型コロナウイルスが早く終息することを心から祈っています。人類は健康と自由に動き回れることが必要なだけではなく、映画を必要としているのだから!
細野晴臣のコメント
10分に満たない短編に絶望の重力が集約されている。でも必死に希望を手繰り寄せるの
だ。バット・アムグラン監督のコメント
まずはこのプロジェクトに参加できて本当に光栄です。新型コロナウイルスのパンデミックが起きた頃、この出来事に関連する何かを作るべきだと考えていました。そんな時にケンサクに声をかけてもらい、プロデューサーたちと繋がることができました。制作の間、私たちは皆それぞれに新しい可能性を感じ、この状況下においての困難を乗り越えることができました。一映画関係者として、この危機に直面している世界中の人々に共感してもらえるようなメッセージが込められた作品を発表できることを、とても誇らしく思います。このプロジェクトは世界中の映画制作者がリモートでコラボレーションできることを証明しました。これまで映画を作るプロセスには多くの時間が費やされてきましたが、このパンデミックの最中に制作された作品の多くは、映画の完成から視聴者に届くまでの時間が驚くほどに短縮されています。この新しい様式はおそらく今後も残ることでしょう。現在は映画業界にとっても大変困難な時ですが、新たな時代が動き始めようとしている時でもあります。私たちはこの進化に続かなくてはなりません。
半野喜弘のコメント
柿本ケンサク君と共に『UGLY』という映画をパリで撮影したのは、ちょうど東日本大震災の時だった。それから世界は大きく変化し、今も変化し続けている。しかし、この映画の舞台であるモンゴルの平原で生きる人々の姿には、人間が抱えた普遍的な痛みが明確な物語として存在している。生きるための痛み…、それは私たちが正常である為に必要なものなのである。
ティージェー・オーグラディー・ペイトン監督のコメント
このプロジェクトに参加できたことは、一生忘れられない素晴らしい経験となりました。新型コロナウイルスによって町がロックダウンした時には映像制作の未来は閉ざされたと感じていました。そんな時、ケンサクから連絡をもらい、このユニークな状況を反映したアート作品の一部になれることをとても嬉しく思いました。ロンドンの映画業界もその他の国と同じように新型コロナウイルスの打撃を受けていますが、私たちはこの状況から手探りで新しいことを学んでいかなくてはなりません。ウイルスがこれほどまで長い期間に渡って影響を及ぼすとは誰が予想したでしょうか。でも私は常に楽観主義者として工夫を持って過ごしていきたいと考えています。映画業界も世界も、これから確実に変化していき、今までのやり方では通用しなくなるでしょう。しかし、私たちは変化に適応し創造し続けることができる。信頼できるコミュニティやチームがいれば、物事はずっと楽になるはずだと思うので、楽しむことを忘れずにこれからも映像制作を続けていきたいと思います。
大橋トリオのコメント
カッキーとの記憶は辿ればきりがない。ありきたりだけど、戦友でありライバルとも思っているが奴は常に10歩先を全力ダッシュし続けている。追いつくつもりはないけど追いつけない。
混沌の中にも希望を見出した者勝ち。こんな時代だからこそさあ踊ろう。