行定勲監督の映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の新たな場面写真が公開された。
現在公開中の同作は、水城せとなの漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』をもとにした作品。不倫を繰り返してきた大伴恭一は、浮気調査員として現れた大学の後輩・今ヶ瀬渉から妻に不倫の事実を隠す条件として「カラダと引き換えに」と提案され、彼のアプローチに振り回されるが、徐々に2人で過ごす時間を心地よく感じ始めるというあらすじだ。広告代理店勤務の大伴恭一役に大倉忠義、約7年間恭一を想い続けていた今ヶ瀬渉役に成田凌がキャスティング。
場面写真は、恭一がソファーの上で肘をつく今ヶ瀬の背中を見つめる様子にフォーカスしたもの。
また、今ヶ瀬が恭一の帰りを部屋で待っているシーンで、ジャン・コクトー監督『オルフェ』を起用した理由が判明。元恋人と復縁するかもしれない恭一に対して、今ヶ瀬が「俺と寝てください。これを拒まれたら、もう二度と、触らない」と懇願するそばで、テレビのモニターには『オルフェ』の一篇が流れ、「これからする事を理解しようとしないで」という字幕が映し出されている。予告編でも使用されている同場面について、一部のファンからは「切なすぎる」「今ヶ瀬の心情に合っていて、絶妙」などの声が上がっていたとのこと。
行定勲監督は『オルフェ』を起用した理由として、「脚本には『今ヶ瀬が映画を見ている』と書いてあるだけで作品の指定はありませんでした。私が『オルフェ』がいいと思いました。『オルフェ』は死の世界と現世という境遇の違う者が惹かれ合うが、相手のことを想い、別離を選択する“犠牲愛”を描いた映画です。今ヶ瀬は恭一への想いが溢れ、抑えられなくなったとき、ひとり『オルフェ』を見ながら、恭一への愛を貫き、自分に引き寄せることで本当に彼のためになるのか。自分が犠牲になって別れた方がいいのかと苦悩している。その逡巡する気持ちに『オルフェ』の登場人物たちの逡巡する気持ちと重なりぴったりだと思いました」と告白。
さらに「香港出身の俳優、レスリー・チャンとお会いした時に、好きな映画が『オルフェ』だと聞いたことがありました。彼はその時、自分は常に“自己犠牲”を意識して生きていると語っていました。社会に対して自分を偽って生きていることも含めて、何かのために自分を犠牲にしていると感じていた。その彼の寂しさや憂いがとても印象に残っていたんです。その姿が今ヶ瀬と重なりました」と明かした。
- 作品情報
-
『窮鼠はチーズの夢を見る』
2020年9月11日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開監督:行定勲 脚本:堀泉杏 原作:水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』(小学館「フラワーコミックスα」) 音楽:半野喜弘 出演: 大倉忠義 成田凌 吉田志織 さとうほなみ 咲妃みゆ 小原徳子 配給:ファントム・フィルム
Special Feature
Crossing??
CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?