西川美和監督の映画『すばらしき世界』の追加キャストと特報映像が公開された。
2021年2月11日から公開される同作は、佐木隆三が実在の人物をモデルに執筆した小説『身分帳』を原案とする作品。13年の刑期を終えた元殺人犯の三上正夫のもとに、三上の姿を面白おかしく番組にしようするテレビマンの津乃田と吉澤が現れるが、いつしか三上が彼らの人生を変えていくというあらすじだ。真っ直ぐな性格と憎めない魅力で周囲の人々と繋がっていく三上役を役所広司、三上がテレビ局へ送った刑務所内の個人台帳「身分帳」を手にする津乃田役を仲野太賀、三上が更生していく様子をテレビ番組にしようと近づく吉澤役を長澤まさみが演じる。
新たに出演が発表されたのは白竜、キムラ緑子。白竜は三上のかつての兄弟分である組長役、キムラは組長の妻役を演じる。
津乃田と吉澤の「相手にしない方がいいんじゃないですか? 放送に耐えられる対象じゃないっすよ」「そこが面白いんじゃん」という会話から始まる特報映像では、三上が笑顔で子供を抱き上げる様子や血しぶきを浴びた姿、「今度ばっかりは、カタギぞ」と呟く場面、「この世界は地獄か、あるいは」というコピーなどが確認できる。序盤に映し出されている北海道・旭川刑務所のシーンは、法務省矯正局の協力のもと、普段は受刑者と刑務官だけが行き来する場所でロケを実施したとのこと。
『すばらしき世界』は『第45回トロント国際映画祭』正式出品作品に選出され、9月10日にワールドプレミア上映。同映画祭では新型コロナウイルス感染拡大の状況を受け、作品はソーシャルディスタンスを守った劇場、ドライブインシアター、野外やインターネット上で上映され、レッドカーペットや記者会見はバーチャルで行なわれている。役所広司と西川美和監督は日本からリモート参加。同作についてプログラミングディレクターのジョバンナ・フルピは、「脚本が非常によく練られストーリーが感動的。見事に質感がありリアルに感じられる。役所は、役の解釈がとても素晴らしくニュアンスと個性が豊かでカリスマ性を感じる」と評した。
西川美和のコメント
原作『身分帳』のどんなところに惹きつけらたか、どのくらい忠実に翻案したか
前作『永い言い訳』の撮影中に佐木隆三さんが亡くなられたと新聞を見て知りました。その記事の中で、佐木さんをよく知る作家の方が、佐木さんの真骨頂は非常に有名な「復讐するは我にあり」よりも「身分帳」ではないか、と書かれていたんです。それがきっかけでこの原作を手に取りました。そこで描かれていたのは、犯罪者が刑務所を出た後になんでもない日常を取り戻すために、こつこつと生きる地味な話だった(笑)。
これは、自分で探しても見つけられるテーマではないと思い、映画化してみたいと強く思いました。たくさんのエピソードが詰め込まれている小説を2時間の映画にどう集約するかということが、オリジナルで映画を作ってきた私にとっては、とても手こずった部分でしたが、2、3年かけて取捨選択して書き上げました。役所広司はどのようにキャスティングしたのか
17歳の時に、役所さんが連続殺人鬼の役をやられたテレビドラマを観ていたくショックを受け、それがきっかけでものを書く仕事につきたいと思うようになりました。映画監督をやることになり、いつか役所さんを主役に映画を撮れないかと考えてきました。本作の三上という男は非常に面白い役なので、憧れの役所さんに一念発起してオファーをしたところ、「前向きに考えます」とお返事をいただき、それが自信となって脚本を書き進めることができました。役所広司のコメント
三上役を演じるにあたってどのような準備をしたか
原案である小説「身分帳」と西川監督が書いた脚本を比べて読みながら、小説はもちろんト書きが多いのでその部分は脚本と照らし合わせて、三上という男を探し求めていました。しかしこの男がなかなか掴めなかった。撮影が始まってから、ワンシーン撮ったものがまた次のシーンのヒントになり、少しずつ三上という男に近づいていく感じがありました。あとは、ミシンの練習を一生懸命やりました(笑)。また監督と一緒に旭川刑務所を見学できたことは非常によい経験になりました。
- 作品情報
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『すばらしき世界』
2021年2月11日(木・祝)から全国公開監督・脚本:西川美和 原案:佐木隆三『身分帳』(講談社文庫) 出演: 役所広司 仲野太賀 六角精児 北村有起哉 白竜 キムラ緑子 長澤まさみ 安田成美 梶芽衣子 橋爪功 配給:ワーナー・ブラザース映画
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Crossing??
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