国際NGOのプラン・インターナショナルが、本日11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」にあわせて、新型コロナウイルス感染症拡大から6か月を経たアジア太平洋地域の状況などについてレポートを発表した。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界各地に大きな変化が訪れた2020年。日本でもエンタメ業界や観光業界などに大きな打撃を与え続けている。外出自粛に伴う新たなライフスタイルが受容されつつあり、イベント配信や動画視聴などの需要が急速に高まる一方で、暴力や貧困に直面している人々が「コロナ禍」においていっそう厳しい立場におかれている現実もある。
レポートでは新型コロナウイルス感染拡大がアジア太平洋地域の社会や経済だけでなく、若い女性や女の子供たちに深刻な影響を与えていると指摘。「早すぎる結婚や強制結婚、ジェンダーに基づく暴力、人身取引、望まない妊娠、中途退学、インターネット上での性的虐待や搾取」などが蔓延している状況が報告されており、ジェンダー平等に向けた歩みが大きく後退することを危惧している。
報告書で明らかになったアジア太平洋地域の課題として挙げられているのは、下記の項目。
・自然災害が頻発する地域に暮らす人々は、防災対策に注力せざるを得ず、新型コロナウイルス感染症対策が不十分になる傾向がある
・経済活動の大半を観光業に頼るアジア太平洋地域の国々では、ロックダウンにより多くの失業者が発生。特にインフォーマル・セクターで働くことが多い女性たちは、職を失っても適切な支援を受けることができず再就職も難しい状態。生計を維持するために、特に女性や子どもたちが搾取の対象になりがちである
・外出自粛といった生活形態の変化により、学校に通えない、各種サービスが受けられない、経済活動が行えないといった女の子や女性たちが孤立を深めている
・家事負担が増え、自宅学習に時間を費やすことができない女の子たちの中途退学が急増している
・女の子や女性たちは、適切な保健サービス(女性が安全に妊娠・出産できることなど)、衛生用品や生理用品といった健康を保持するための物資やサービスを受けることができない
・望まない妊娠や強制結婚により、女の子たちへの暴力が急増している
・学校に通えない女の子や、社会活動に参加できない女性たちは、適切な支援や情報を得るシステムにアクセスすることができない
・外出自粛により、女の子が家族や近隣の人からの心身の虐待、インターネット上での性的虐待や搾取を受ける危険が高まっている
とくに最後の項目にある「インターネット上での性的虐待や搾取を受ける危険が高まっている」という点については、コロナ禍においてインターネットの文化・経済活動における重要度が増し、新たなカルチャーや需要を生み出していることのネガティブな側面と結びついていると言えるかもしれない。
プラン・インターナショナルはアジア太平洋地域において、「暴力からの女の子の保護」「女の子の復学支援」「女の子の生計向上、社会的保護」「女の子の性と生殖に関する健康と権利の促進」「女の子の主体性と意見の尊重」という5つの分野を軸に女の子や若い女性、LGBTQ+らの声を聞き、ニーズに則した活動に取り組んでいくとのこと。
なお女性に対する暴力撤廃の国際デーは、ドミニカの独裁政権に反対した活動家・ミラバル姉妹が1960年11月25日に暗殺されたことにちなんだもの。1999年に国連総会で採択された。