ヤン・コマサ監督の映画『聖なる犯罪者』に寄せられた著名人コメントが到着した。
『第92回アカデミー賞』外国語映画賞にノミネートされた同作は、過去を偽って聖職者として生きる男性の運命を描いた実話作品。少年院の仮釈放中に、勘違いから司祭の代わりを命じられたダニエルは、数年前に村で起こった凄惨な事故を知り、心に傷を負った村人たちを癒そうと模索し始めるが、少年院にいた男に全て暴くと脅迫されてしまうというあらすじだ。前科者は聖職に就けないと知りながらも神父になることを夢見る少年院出身のダニエル役と、司祭トマシュ役をバルトシュ・ビィエレニアが演じた。1月15日から公開。
コメントを寄せたのは、武田砂鉄、向井康介、松尾貴史、ダースレイダー、鈴木啓之(シロアムキリスト教会)、藤井誠二、児玉美月、常川拓也、SYO。
武田砂鉄のコメント
信じることと疑うことは、とても近くにあるのかもしれない。
だとしたら、それはとても怖いことだ。向井康介のコメント
人は自らの犯した罪から逃れるために“秘密”という道具を使う。
加害と被害のどちらにも寄らない作り手の“神の視線”は静かなサスペンスを生んだ。作劇の勝利だ。松尾貴史のコメント
善人か悪人か。その評価は現象でしか判断できない。
その絶妙な感性の綱渡りを体感できる実話に基づく物語。ダースレイダーのコメント
ダニエルの眼差し。様々な場面で強烈な印象を残すこの眼差しに宿るもの。時に濁り、時に透き通るその眼にこそ“聖なる”一瞬が訪れるのでは?それを捉えようとして作られた作品なのではないか?だからこそ、僕らはこの作品から目を逸せない。
鈴木啓之(シロアムキリスト教会)のコメント
光と闇の中で彷徨う私達人間の心の葛藤がリアルに表現されていて、この映画を見た全ての人に真実に生きることの大切さを知らせてくれるだろう。
藤井誠二のコメント
もしも「神」というものが存在するのであれば、誰もが意図することなく、何人も気づかず、ふいに去っていくものではないか。無邪気な表情をした一陣の風が吹いた、とでもいえばいいのか。不思議な虚しさが残存する。そんな感覚をぼくに植えつけたのがこの映画だ。
児玉美月のコメント
善人であろうとする者が犠牲になってしまう不寛容。
これは遠い国で起きている問題ではなく、私たちがいま生きるこの国の問題でもある。
それをバルトシュ・ビィエレニアの鋭い眼光は、スクリーンを突き破って訴えかけてくる。常川拓也のコメント
ヤン・コマサは憎悪が染み付いた現代の病理を炙り出す。本作と次作『ヘイター』は、宗教と政治が同じ名の詐欺師によって対称的に操作される警告の寓話である。鋭い眼光の“悪党”が善悪が二極化した社会を撹乱させる。
SYOのコメント
彼はどこで、間違えたのか?
前科者は神父になれない。揺るがない現実を前に、少年は再び、道を踏み外す。
その先にあるのは、ご都合主義的な福音じゃない。物語は彼を決して許さない。
神は見ているのだ。お前の「本質」を。
- 作品情報
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『聖なる犯罪者』
2021年1月15日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、WHITE CINE QUINTOほか全国で順次公開監督:ヤン・コマサ 出演: バルトシュ・ビィエレニア エリーザ・リチェムブル アレクサンドラ・コニェチュナ トマシュ・ジィェンテク 上映時間:115分 配給:ハーク
Special Feature
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