濱口竜介監督の新作映画『偶然と想像』が、『第71回ベルリン国際映画祭』コンペティション部門に正式出品される。
ヨーロッパ最大の映画産業都市で行なわれる『ベルリン国際映画祭』。これまでに今井正監督『武士道残酷物語』や宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』が最高賞にあたる金熊賞を受賞している。
『偶然と想像』は、「偶然」と「想像」をテーマにした3話のオムニバスからなる濱口竜介監督にとって初の短編集。第1話『魔法(よりもっと不確か)』では、ヘアメイクのつぐみが「今気になっている」と話題にした男が、モデル・芽衣子の元カレの和明であることから、どうすべきか思案する芽衣子の姿を描く。第2話『扉は開けたままで』は、大学教授・瀬川が50代にして芥川賞を受賞し、瀬川に落第させられた男子学生・佐々木が逆恨みから同級の女子学生・奈緒に瀬川の研究室を訪ねさせるというあらすじだ。第3話『もう一度』は、仙台で20年ぶりに再会した夏子とあやが、高校時代の思い出話に花を咲かせるが、次第に会話がすれ違うという作品。
『魔法(よりもっと不確か)』の芽衣子役に古川琴音、つぐみ役に玄理、和明役に中島歩がキャスティング。『扉は開けたままで』の瀬川役を渋川清彦、佐々木役を甲斐翔真、奈緒役を森郁月が演じる。『もう一度』の夏子役には占部房子、あや役には河井青葉がキャスティング。
今回の企画は、監督自身が『ハッピーアワー』のプロデューサー高田聡と共に立ち上げ、2019年夏から約1年半をかけて製作。脚本はすべて監督自身が手掛け、撮影は『うたうひと』『ひかりの歌』の飯岡幸子が担当した。
濱口竜介監督のコメント
『偶然と想像』は、私にとっての初の「短編集」です。短編映画という形式にはずっと大きな可能性を感じていましたが、現在の映画製作サイクルの中では短編用の上映枠がないという「出口」の問題がありました。そのため今回は、「偶然と想像」という統一したテーマのもと3話を制作し、長編映画サイズの短編集となりました。
私自身にとっても実験的性格の強いプロジェクトだったのですが、それを一緒に面白がって参加してくれたキャストやスタッフの皆さんにこの場を借りて御礼を申し上げたいと思います。1話ごとに時間を置いて制作したおかげで、各話十分な準備を経た上で撮影ができました。特に各話それぞれキャストの皆さんと長時間のリハーサルの時間を持てたことはとても贅沢なことで、結果としてどの撮影現場でもとても素晴らしい演技と出会えました。
また今回、特に「偶然」というテーマを採用したことによって、私自身が物語の行く先・発展に驚かされることが多くありました。今回の制作を通じて短編という形式や、偶然というテーマの面白さを再発見しました。『偶然と想像』は全7話のシリーズを予定しています。このシリーズを自分の40代通じての仕事としたいと思っています。
最後に、ベルリン国際映画祭に本作を正式招待いただいたことへの感謝を申し上げます。歴史ある映画祭のコンペに選出されることは、とても勇気づけられることでした。キャストやスタッフの仕事の素晴らしさが認められたようで、嬉しく思っています。コロナ禍のために映画祭期間中に、ベルリンの地を踏めないことは残念ではありますが、『偶然と想像』と多くの観客が出会う契機となることを願っています。