ノンフィクション書籍『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』が2月26日に刊行される。
ウォルト・ディズニー・スタジオに所属していた5人の女性アーティストを中心に、女性やアジア系などマイノリティのアーティストが果たしてきた創造的な役割と、歴史から忘れ去られた彼女たちの貢献の真実を明らかにする同書。彼女たちの創造性によってディズニー・アニメーションが「夢の世界」へと変わっていく様や、嫉妬する男性スタッフからの嫌がらせや功績の横取りといった創造の裏側が、当時を知る人々のインタビュー、文献、ドローイングなどから暴かれる。また、様々な作品の制作秘話や女性アーティストの活躍、コピー機やコンピューターの技術革新が作品に与えた影響、公民権運動や黒人差別など社会の問題とアニメーション作品との関係について綴られる。著者はサイエンスライターのナサリア・ホルト。翻訳を石原薫が手掛けた。
登場する主なアーティストは、女性初のストーリーアーティストであるビアンカ・マジョーリー、ストーリーアーティスト兼飛行機操縦士のグレイス・ハンティントン、『バンビ』の女性アニメーターを担当したレッタ・スコット、『ファンタジア』などのコンセプトアーティストを務めたシルヴィア・ホランド、『シンデレラ』などのコンセプトアーティストで、ディズニーランド「イッツ・ア・スモールワールド」のデザインを手掛けたメアリー・ブレア。
登場作品は『白雪姫』『ピノキオ』『ファンタジア』『ダンボ』『バンビ』『ラテン・アメリカの旅』『三人の騎士』『南部の唄』『シンデレラ』『ふしぎの国のアリス』『ピーター・パン』『眠れる森の美女』『101匹わんちゃん』『くまのプーさん 完全保存版』『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『ライオン・キング』『ポカホンタス』『ムーラン』『アナと雪の女王』など。
発表とあわせて片渕須直、河野真太郎の推薦コメントが公開。また2月24日に片渕須直のインタビュー、2月25日に河野真太郎による書評が公開された。
片渕須直のコメント
男性アニメーターの視点からではないディズニー・スタジオの描写に触れたのはこの本が初めてだった。僕が、ディズニーのアニメーターたちから身近に聞いていたのは、男性でしかも白人の側からだけのものだった。そこから観るディズニー作品は、アンバランスなものになっていたんじゃないのか? ディズニー・アニメーションに大きな影響を与えた女性たちの存在とその仕事を知ることで、新鮮なまなざしで作品と向き合うきっかけを与えてもらった。
河野真太郎のコメント
本書はディズニーの映画制作には女性「も」貢献したという物語ではない。ジェンダー公正に向けて直線的に発展しているように見えるディズニー・アニメーション作品が、直線的どころかいかに曲がりくねった紆余曲折を経て生み出されてきたか、作品の裏側にいかなる女性たちの努力と生が「隠されて/消し去られて」きたか。そのことを本書は教えてくれる。
- 書籍情報
-
『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』
2021年2月26日(金)発売 著者:ナサリア・ホルト 訳者:石原薫 価格:2,600円(税抜) 発行:フィルムアート