音楽イベント『アンサンブルズ東京』の動画とテキストが無料公開された。
大友良英が芸術監督を務める『アンサンブルズ東京』は、事前に楽器演奏や盆踊りなどのワークショップを行ない、イベント当日にアーティストと一般参加者がパフォーマンスを披露する参加型イベント。2015年から開催され、昨年はコロナ禍を鑑みてオンラインワークショップという形で実施された。今年度で終了する。
イベントのオフィシャルサイトでは、これまでの集大成としてハンドサインを用いて音楽を演奏する方法を紹介する動画とテキスト、オンラインワークショップで一般参加者とアーティストがコラボレーションしたアンサンブル動画を公開。非常階段、さや(テニスコーツ)、角銅真実、芳垣安洋とOrquesta Nudge! Nudge!、大友良英らが参加し、一般の参加者はプロジェクトFUKUSHIMA!監修のもと布を背景に演奏している。
なお、3月18日にDOMMUNEで配信されるプログラムに今年度ワークショップを実施したアーティストが出演する。
大友良英のコメント
「誰でも参加できる」を合言葉に2015年から始まったみんなで作るフェスティバル「アンサンブルズ東京」。最終年の2020年は盛大に盆踊りで幕を閉じたかったのですが、コロナ禍がそれを許してはくれませんでした。人が集まれない、密になれないというのは、音楽にとって、とりわけ多くの人たちが参加する「アンサンブルズ東京」のような音楽の現場にとっては、羽をもぎ取られたような感覚でした。
とはいえ、くよくよ悩んでいても仕方ありません。頭を切り替えて、オンラインでのワークショップの可能性を探りつつ、これまでやってきたことが何であったのか、誰もが参加出来るようにするにはどんな仕組みや発想、思想が必要なのかといったことを、少しでも記録に残して、この先に伝えることに力を入れることにしました。
わたしがこのフェスティバルで構想していたのは、音楽の経験のあるなしは一切関係なく、老若男女、誰でも等しく参加できる音楽の祭りをやることでした。背景には東日本大震災を経て、この先、どんな未来を創っていったらいいかという問いが常にありました。自分たちの手で音楽を創っていく中で、この問いを多くの人たちとシェアしていければと考えていました。そして本当に多くのみなさんがこの「祭り」に参加し「祭り」を創ってくれました。そのことが何よりも嬉しかったし楽しかったです。
「アンサンブルズ東京」はこれで終わりますが、音楽も祭りも人がいる限りどこかでずっとずっと続いていくものです。この先も、ここで経験したこと、音を出したり踊ったりしたことが、みなさんの未来に繋がっていくことを信じています。
2021年2月吉日 アンサンブルズ東京 芸術監督 大友良英追記 震災から10年、思うことあって、様々な現場で祭りのディレクターのような仕事をしてきましたが、おそらくこの肩書きで何かをするのは、これが最後になると思います。この先は、いち音楽家として、みなさんとどこかで出会えることを楽しみにしています。