映画『へんしんっ!』に寄せられた著名人コメントと第2弾予告編が到着した。
6月19日から公開される同作は『第42回ぴあフィルムフェスティバル』グランプリに輝いたドキュメンタリー。電動車椅子を使って生活する石田智哉監督が、「しょうがい者の表現活動の可能性」を探るため、全盲の俳優・美月めぐみ、ろう者の通訳の育成にも力を入れているパフォーマーの佐沢静枝、振付家でダンサーの砂連尾理など、多様な「ちがい」を橋渡しする人物たちを訪ねる姿が映し出される。日本語字幕をスクリーンに投影し、音声ガイドを劇場内のスピーカーから流す「オープン上映」を採用。
コメントを寄せたのは、斎藤工、齋藤陽道、坂上香、寺尾紗穂、中川美枝子、廣川麻子(シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)、ブレイディみかこ、松森果林、森達也。第2弾予告篇は、石田監督自身がナレーターを担当した音声のみの「ラジオCM風の音声予告篇」となっている。
斎藤工のコメント
映画人として
私の遥に先を行く石田監督は
映画と言う媒介を通して
我々が対極にあるであろうと思い込んでいる事を見事に中和させ進化させ
気が付くと観るモノの心の形をさりげなく変身させてくれている齋藤陽道のコメント
ささいなことかもしれないけれど、今一度、思い出してほしいことがある。それは、しょうがいのある
「主役・石田智哉」は、「監督・石田智哉」でもあるということ。
えてして重度のしょうがいをもつ人は、どれほど映画の内容が良かろうとも、受け身の「被写体」でしかないことが多かった。
しかし、本作では「当事者」が「監督」であり、かつ「主役」でもある。つまり撮影・編集された映像のすべてが「当事者」としての意識の元に組まれたということであり、そうした造りにおいてすでに本作は唯一無二なのだ。
自分とは異なるからだの他者と話をして、直接触れて向きあうことで、いやおうなく変わってしまうことへの戸惑いと喜びが、そっけなく、淡々と、過激に、つむがれている。なんて愛おしい。坂上香のコメント
監督は、イマドキの優しい大学生。
身体しょうがいという“個性”を持っている。
ただ、それだけのこと。
でも、それが、大きな障壁になる社会。
と思いきや、石田監督は周囲に頼りまくって映画を作った。
私は、エンディングのダンスを見て、涙がこぼれた。
個性が触れ合うことで、その先に行けそうな気がしてーー。寺尾紗穂のコメント
現代人が失った言葉の無い原初的な触れ合い。
ラストのダンスはそんな接触のいくつもの連なりだった。
相手の領域への侵犯のようにみえながらそれは控えめな愛に満ちていた。中川美枝子のコメント
「私」の物語を見つけて表現することは、決して簡単なことではありません。自分事なのだから、他人に託すわけにもいかないし、かといって一人だけで描き出せるものでもないのです。「受け身」でもなく、「暴君」でもなく、自分に素直になってみる。それは、弱さと迷いを仲間に共有しながら、「面白い!」
を追求し続けることなのかもしれません。廣川麻子(シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)のコメント
人を見る時、わたしたちはカテゴライズしてしまう。
ろう者、全盲、車椅子ユーザー、男性、女性、学生、教授、ダンサー、通訳…本作は字幕や音声ガイド(が流れていることを表現する字幕マーク)を体験することでカテゴリを超え、人と人が出会い、語り、触れる。
他者を「知る」旅路は無限であり、豊かな世界がそこにあった。ブレイディみかこのコメント
踊ることが表現で、ケアが他者と踊ることなら、ケアとは表現だ。眉間に皺を寄せて考えていたら、「ハッピーな顔して何を見てるんだ」と家人に言われた。はっ。こっちもへんしんしていたらしい。
松森果林のコメント
舞台が終わった後の石田監督に注目してほしい。
瞳、視線、指、胸、身体、空間すべてがひらかれている。
他者との対話による信頼関係に、無防備な身体を預けることによって自分のからだを発見していくプロセスは受け身の身体から表現する身体へと変身する。
自己と深く関わっていくことは自由になることだ。
「へんしん」とは変身し続けることなのだろう。森達也のコメント
観終えてまず思う。自分はちょっとすごいものを観た。いや観たじゃない。何だろう。感じた。いやこれも微妙に違和感がある。観た。聴いた。感じた。気づいた。体感した。……思いつく述語のすべてがぴったりと適合しない。ふわふわ。だけどずっしり。他に言葉が見つからない。でもこれだけは言える。かつてない映画体験だ。
- 作品情報
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『へんしんっ!』
2021年6月19日(土)からポレポレ東中野、シネマ・チュプキ・タバタほか全国で順次公開監督:石田智哉 出演: 石田智哉 砂連尾理 佐沢(野崎)静枝 美月めぐみ 鈴木橙輔(大輔) 古賀みき 上映時間:94分 配給:東風
Special Feature
Crossing??
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