瀬々敬久監督の映画『護られなかった者たちへ』の主題歌に桑田佳祐の“月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)”が起用されることがわかった。
10月1日から公開される同作は、東日本大震災に端を発して起こったある出来事から現代に続く物語を描いた中山七里の小説『護られなかった者たちへ』をもとにした作品。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎は、被害者が餓死させられる連続殺人事件を捜査する中で、出所したばかりの元模範囚・利根泰久の存在に辿り着くが、決定的な証拠が掴めないまま新たな事件が起こり、やがて裁かれなかった罪と罰、正義が交錯するというあらすじだ。知人を助けるために放火、傷害事件を起こした過去を持つ利根泰久役に佐藤健、利根を追う刑事・笘篠誠一郎役に阿部寛がキャスティング。
同曲は、2011年にリリースされた桑田のアルバム『MUSICMAN』に収録。東日本大震災発生時に被災地最大の遺体安置所として使用されていた宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで実施した『桑田佳祐「宮城ライブ~明日へのマーチ!!~」』のアンコールで歌唱された。ライブを観ていた制作陣が「震災から10年目の宮城を舞台にした本作で、是非桑田さんに主題歌で参加いただきたい」と熱望し、主題歌の提供が実現したとのこと。
今回の発表とあわせて同曲を使用した最新予告編が公開。泥水に顔を押し付けられた利根が「ふざけんなな!」と叫ぶ姿をはじめ、笘篠が利根を雨の中で追いかけるシーン、「本当は心の優しい……私の知っている利根泰久はそういう人間です」「死んでいい人なんていないんだ」という言葉などが確認できる。
瀬々敬久監督のコメント
震災のあった3月11日の夜、被災地のあちこちで星空がものすごく綺麗だったという証言が多くあった。『月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)』を聴いて、まず頭に浮かんだのがそんな光景です。桑田さんのこの曲は追悼の歌のようでありながら、生きることの大切さをさりげなく差し出している。震災の直前に出された楽曲でありながら、震災以降の自分たちの心情にピタリと当てはまる気がする。「時代(とき)時は移ろう この日本(くに)も変わったよ」だけど、――「(現在(いま)がどんなにやるせなくても 明日(あす)は今日より素晴らしい」。震災からコロナ禍、まさに今を生きる多くの人々を支えてくれるこの楽曲が、映画に大きな想いを授けてくれたと思っています。
筒井竜平プロデューサーのコメント
この度、桑田佳祐さんの「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」を主題歌とさせていただくことが出来ました。
東日本大震災から半年後の2011年9月10,11日に宮城県はセキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で開催された、「桑田佳祐『宮城ライブ~明日へのマーチ!!~』」。
遺体安置所となっていた場所の再開であり、また桑田さん自身の病気からの復活の場でもあったあのライブのアンコールで、「故郷」(ハーモニカ演奏)からの「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」という象徴的なブロックは、深く深く心に染みわたるもので、その後も忘れえぬ体験となりました。
あれから10年という時が経ようとしている中で、宮城を舞台にしたこの映画の開発をスタートした時から、映画化が成就した暁には、桑田さんに主題歌での参加をぜひお願いしたいと考えていました。2011年2月にリリースされたアルバム「MUSICMAN」に収録されているこの楽曲は、この10年という月日の中でたくさんの人に聴き継がれ、たくさんの想いが寄せられ、この先もずっと愛されていく楽曲であると思います。映画の物語にはもちろんのこと、観ていただく観客の皆様にも、そっと寄り添ってくれる存在です。
ままならないことが多い世の中で、それでも前を向いて歩いて行こうとする私達にとって、最高のエールとなるこの楽曲を映画の中でも堪能いただければ幸いです。
- 作品情報
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『護られなかった者たちへ』
2021年10月1日(金)公開監督:瀬々敬久 脚本:林民夫、瀬々敬久 原作:中山七里『護られなかった者たちへ』(NHK出版) 主題歌:桑田佳祐“月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)” 音楽:村松崇継 出演: 佐藤健 阿部寛 清原果耶 林遣都 永山瑛太 緒形直人 吉岡秀隆 倍賞美津子 配給:松竹
Special Feature
Crossing??
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