映画『17歳の瞳に映る世界』の本編映像と著名人コメントが公開された。
7月16日から公開される同作は、『第70回ベルリン国際映画祭」銀熊賞、『サンダンス映画祭2020』ネオリアリズム賞などを受賞した作品。アメリカ・ペンシルベニア州の高校生オータムは、自身が予期せず妊娠していたことを知るが、ペンシルベニア州では未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができないため、いとこで親友のスカイラーと共にニューヨークへ向かうというあらすじだ。愛想がなく、友達も少ない17歳のオータム役にシドニー・フラニガン、スーパーで働くスカイラー役にタリア・ライダー、キーパーソンとなるジャスパー役にセオドア・ペレリンがキャスティング。監督と脚本をエリザ・ヒットマンが務めた。原題は『Never Rarely Sometimes Always』。
本編映像は、オータムとスカイラーが乗り込んだニューヨーク行きの長距離バスのシーンを切り取ったもので、ジャスパーも登場する。ヒットマン監督はジャスパー役のキャスティング理由について「ジャスパー役には得体のしれないタイプの男の子を望んでいた。いい奴なのか悪い奴なのか、どっちでもないのか分からない。セオドアは見つめずにはいられない魅力がある」とコメント。
コメントを寄せたのは、ブレイディみかこ、ハリー杉山、松田青子、滝藤賢一、こだま、佐久間裕美子、ふくだももこ、朝倉あき、福富優樹(Homecomings)、瀬戸あゆみ (Dear Sisterhood)、樋口毅宏、鳥飼茜、トミヤマユキコ、木村草太、枝優花、三船雅也(ROTH BART BARON)、鴻巣友季子、辻愛沙子、シオリーヌ、宋美玄、武田砂鉄、SYO。
ブレイディみかこのコメント
どうしてこんなことになったのか、少女は語らない。
その静かなシーンで彼女が見せる涙は、多くの女性が「なかったこと」にしていたものを呼び起こすだろう。
リアルにして詩的、控えめにしてパワフルな、人の記憶にこびりつく映画。ハリー杉山のコメント
主人公の葛藤と苦しみが画面から手を伸ばし見てる者の心臓をもぎ取る名作。
静かでテンポを乱さないのに、何故ここまで熱く訴えることが出来るのか。
見事なスクリプトに命を吹き込むのはシドニー・フラニガンとタリア・ライダー。
二人の輝きは始まったばかりだ。松田青子のコメント
語らない彼女、聞かない彼女の、短いけれど長い旅路。
こんなにも切実に、早く朝が来て欲しいと願ったことはない。
これが傑作でなければ何がそうだというのだろう。滝藤賢一のコメント
『Never Rarely Sometimes Always』
原題の真意に心が震えた。圧倒的リアリティ。
この映画の中で織り成されたセッションは唯一無二だ。こだまのコメント
最後まで祈るように見守った。
彼女たちの戸惑いや屈辱は、そのまま私たちのもの。
唯一の救いは黙って手を握ってくれる少女と女性がいたことだ。佐久間裕美子のコメント
ティーンエイジャーだったあの頃、「男に生まれれば良かったのに」と何度思っただろう?
今だって思う。
でもその痛みは、自分だけのものじゃない。
独りじゃない。ふくだももこのコメント
久々に、映画を観て眠れなくなってしまった。
うつろな瞳に映るのは、どこまでも悲しい現実で。
「4ヶ月、3週と2日」と共に、生涯心に残る映画だ。朝倉あきのコメント
激しい怒りはみせず、眠れないほどの不安と戸惑いをただ押し込めた、彼女達の瞳がいつまでも忘れられない。
福富優樹(Homecomings)のコメント
女性というだけで向けられる汚れた目や手。
柱に隠れてこっそりと繋がれる小指はとても儚く悲しくて、強い。
Julia Holterのスコアもとても素晴らしかったです。瀬戸あゆみ(Dear Sisterhood)のコメント
17歳の孤独は、心がヒリヒリと痛く、胸を締め付けられるような切なさがある。
映画の彼女達や、あの時の自分にも、"もっと自分を大切にして"と言ってあげたい。
かつて17歳だった全ての人に観てほしい映画だった。樋口毅宏のコメント
今年いちばん“隠れ名作”!
ああ、なんてことだ。
クロエ・ジャオに続いてもうひとり、新しい巨匠が現れた。鳥飼茜のコメント
仕掛けも伏線もなく、女の人生の重要な、否応なしにやってきて過ぎ去る時間だけが丁寧に切り取られている。
そうだった、流されるだけで精一杯だった。トミヤマユキコのコメント
とても静かな映画だが、心はどこまでもかき乱され、最後まで目が離せない。
女の子から見たこの世界がいかに過酷で理不尽であるかを改めて思い知らされた。木村草太のコメント
何やってるんだ、男たち。。。
「相手を尊重するっていうのはさ、、、」と説教してみても、届かないだろう。
心にすっと寄り添う女性たちの姿に、人間性を学ぶ映画だ。枝優花のコメント
映画はフィクションであり嘘の世界だ。
けれど、これは紛れもなく今、世界のどこかで声に出せない孤独や怒りや苦しみを抱えた人々の嘘のない現実が映っている。
どうか多くの人々に観てほしい。三船雅也(ROTH BART BARON)のコメント
この世界にはオータムが抱えているような誰にも吐き出せない小さな“秘密”がたくさん隠れていて、それはニューヨークにもパリにも東京にもどの路地裏にも潜んでいて、そして簡単にかき消されてしまいます。
それでも僕たちは、日常の中に潜むその小さな秘密を一つ一つ丁寧に掘り出していかなくてはいけないのだ。
この映画そのものにセリフは少ないが、声にはならないたくさんの声が聴こえます。僕にはそう聞こえました。鴻巣友季子のコメント
ヒロインの相手の男は一切出てこない。
妊娠に関して、女性の体と心と生活が引き受けるものの圧倒的偏りを、この父親不在の映画は偽りなく描き出している。辻愛沙子(アルカ)のコメント
「女である事」の周りにいつでもジトっと付き纏う、不安や警戒心、不甲斐なさ、情けなさ、怒り、虚無感といった不条理を、どこまでもリアルに描き切った作品。
彼女たちにとっては耐え難いほどに長く感じたであろうたった数日間の非日常的体験が、今も世界のどこかに存在する誰かの現実なのだと打ちのめされます。
自分にも当たり前にあり得た物語。
多くの大人たちに届いてほしいと切に願います。シオリーヌのコメント
近くに頼れる大人が一人いたら、彼女たちは旅に出る必要すらなかったかもしれない。
社会の、大人の責任を問われる作品でした。宋美玄のコメント
親に打ち明けられない予期せぬ妊娠という困難な状況を、友情を力として乗り越えていく17歳の少女たちのリアルな数日間。
アメリカでも性と生殖の権利は担保されず、中絶反対のクリニックで悪質な診療に遭う場面では胸が痛むが、一方女性の安全と自己選択のために力になってくれる医療機関の対応は専門職でも勉強になる。
主人公の気持ちになって観て欲しい、素晴らしい作品。武田砂鉄のコメント
彼女の前に立ちはだかる絶望。
その絶望をめくると、かすかな希望が見えてくる。
しかし、その希望は、本当に希望なのだろうか。
この社会を生きるそれぞれが考えなければいけない問題がいくつも詰め込まれている。SYOのコメント
歪みきった世界を変える可能性を秘めた映画なのか。
我々が生きる現実から産まれてしまった映画なのか。
本作の定義は、各々の価値観次第で斯くも揺らぐ。
- 作品情報
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『17歳の瞳に映る世界』
2021年7月16日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開監督・脚本:エリザ・ヒットマン 出演: シドニー・フラニガン タリア・ライダー セオドア・ペレリン ライアン・エッゴールド シャロン・ヴァン・エッテン 上映時間:101分 配給:ビターズ・エンド、パルコ
Special Feature
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