テーマは「恋の初期衝動」school food punishment インタビュー

前作からたったの2ヶ月で、早くもニューシングル『butterfly swimmer』をリリースしたschool food punishment(以下、sfp)。2ヶ月前にインタビューをさせて頂いたばかりなので、正直今回は内容が薄くなるのも仕方ないかも……なんて懸念を抱いていたわけですが、すぐに吹き飛びました。バンドが成長していく様を、こうもまざまざと見せつけられたのは久しぶりです。新作の話しはもちろん、ベーシストの復帰から、収穫の多かった初の海外遠征までじっくりとお話を伺いました。

山崎さんがちょっと弾いただけでみんな笑顔になるっていう(笑)。

―前回のインタビューの際は山崎さんが怪我で休養中でしたが、遂に復帰ですね。おめでとうございます!

山崎:ありがとうございます! 帰ってきました(笑)。

―すごいスピードで回復していると聞いていましたよ。

比田井:医師もビックリな回復力で(笑)。

山崎:みんなに迷惑をかけてるし、「早く戻んなきゃ!」っていう焦りはありましたね。

蓮尾:本当にギリギリで戻ってきたもんね。

山崎:「待っててもらった」と言ったほうが正しいですけどね(笑)。

―どういうことなんですか?

山崎:今回のシングル『butterfly swimmer』のレコーディングは、最後にベースを録音したんです。普通ベースって、ドラムと一緒に最初に録るんですけど(笑)。

―そうだったんですね。今はこうして笑い話にできますが、当初はみなさん大変だったんじゃないですか?

内村:怪我をした翌日がライブだったので、とにかくビックリですよ。どうする? どうする? って(笑)。

蓮尾:なんとかライブを中止にしたくないと思ったので、録音してあったベースをパソコンから出力して、パソコンと演奏を同期させることにしたんですけど…。

比田井:大変でしたね~。パソコンと同期して演奏するなんて、ほとんど経験したことなかったですし。

内村:ライブ中に同期が止まったこともあったね…。

―それまずいじゃないですか!(笑) ベースの音が止まっちゃったんですよね?

内村:いや、蓮尾君がとっさにシンセでベースのラインを弾き始めて(笑)。右手でピアノ弾きながら、左手はベースって(笑)。

―スゴい!!!!

蓮尾:クオリティーは下がるんですけどね。とにかく低音感を損なわないように頑張りました(苦笑)。

―大変だったのがよく分かりました(笑)。それでつい先日、山崎さんがバンドに戻ってきたわけですね。

比田井:やっぱり生で合わせるのは楽しいな~って実感しました。

蓮尾:復帰して最初のスタジオ、あの時ほど雰囲気の良いスタジオもなかなか無いよね(笑)。山崎さんがちょっと弾いただけでみんな笑顔になるっていう(笑)。

山崎:ちょっと涙がでちゃいましたね。

「もう好きで好きでしょうがない!!!」という恋の初期衝動が全開になっていく曲ですね。

―それでは、もう一つのめでたいお話に。ニューシングル『butterfly swimmer』ですが、楽曲やメロディーはもちろん、世界観の完成度もこれまで以上に磨きがかかっていますね。

蓮尾:この曲の歌詞は内村にとって新境地でしたね。

―「恋」をテーマにした曲ですよね。

内村:原曲は随分前に作ってあったんですけど、それは切ない恋を歌う曲だったんです。でも、切ない曲はこれまでにも沢山作っていたし、たまにはネガティブな気持ちのない、明るい曲を作りたいと思ったんです。だから、イントロは切ない恋の始まりっぽいけど、そこから展開して「もう好きで好きでしょうがない!!!」という恋の初期衝動が全開になっていく曲ですね。

―どんどんアグレッシブになっていきますもんね。

比田井:恋をして、どんどん欲張りになっていく感じですよね。リズムがすごく重要な曲だと思うので、テンポ感やスピード感にはすごい気を使いました。

私の言葉だけで完結してしまったら、バンドで表現する意味がないじゃないですか。

―これまでは陰と陽の両方を描くことでリアリティーを追求していましたが、今回はどういったやり方でリアリティーを追求したのでしょうか?

内村:言葉選びは直球でいくんですけど、「その時の気持ちはどんなんだろう?」という部分を追求していきました。恋の始まりのみずみずしさ、どんどん欲張りになっていく感覚、勢いやストレートさ、なんて言っていいのか分からない感じを、どういう言葉で表現するのか考えたんです。

蓮尾:それに、内村がイメージする「恋の初期衝動」だけではなくて、僕や他のメンバーの中にもまた別の恋の初期衝動のイメージがありますよね。片方はキラキラしたものかもしれないけど、片方ではザワザワしていたり。

内村:私の言葉だけで完結してしまったら、バンドで表現する意味がないじゃないですか。メンバーそれぞれのイメージが重なっていくことでリアリティーも増していくし、色々な人の感情に響く可能性も広がっていくと思うんです。

―「恋」をテーマにしている曲は世界中に数えきれないほど存在しますが、それは障害にはならないのでしょうか?

テーマは「恋の初期衝動」school food punishment インタビュー

内村:内容は一緒でもいいんです。でも、私がその感情を表現するために、どんな情景を思い浮かべるのか、どう言葉を繋ぎ合わせるのか、そこが肝ですよね。あとはもう、誰にも負けない、よりリアルな歌詞を書きたいですね。聴いてる人に「この気持ち分かる!」と思ってもらえるような。

―不特定多数の人に共感してもらえる歌詞、ですね。

内村:そうですね。ある1人の人に向けて作る曲なら簡単ですけど、大勢の人みんなにリアリティーを感じてもらえる曲を作るのは難しいです。少しでも違和感があったらダメだと思いますから。でも、そのバランス感を追求していくのが楽しいんです。

―ものすごく簡単で構わないので、読者に向けて、どういった歌詞の作り込みをしているのかご紹介頂けますか?

内村:たとえば「好き」という感情を伝えようと思った時に、「君のことを永遠に愛してる」と歌ったりしますけど、私だったらまだ「先のことは分からないけど、今、君のことを本当に愛してる」って言われた方が嬉しいと思うんです。「永遠」の方が言葉としては深い気がするけど、本当は「先のことは分からないけど」と言ってくれた方が深い時もあるじゃないですか。組み合わせによって伝わり方が変わるんですよね。

―確かに深い気がする…。内村さん、本当によく考えてますよね(笑)。

蓮尾:内村はめちゃめちゃ真面目だと思いますね(笑)。

一同:うんうん。

―でも、蓮尾さんだってキーボードはかなり真面目に取り組んでいるんじゃないですか?

蓮尾:ぼくは、雑念が混じってますね(笑)。

一同:爆笑

蓮尾:だって、ここでガツンと弾き倒したい!!!! って思うこととかありますもん。

―初めて蓮尾さんのステージを見たとき、そのエモーションに良い意味で「エロさ」を感じました。

蓮尾:エロいって初めて言われたけど、嬉しいです! ロックバンドなら、そういう剥き出しな部分は追求していきたいと思いますから。まあそれが雑念になってるんだと思うんですが(笑)。

内村:見ちゃいけないものが見えちゃったりする、それがエロさに繋がっているんじゃないかな。人は感情を剥き出しにて生きていくのが難しいけど、演奏中は感情的になってすごい顔で演奏してたりする。そういうところに魅力を感じてもらえるのって、やってる側としてはとても嬉しいことだよね。

蓮尾:ありがとうございます!(笑)

―内村さん、さすがの分析力ですね!

内村:考えちゃう性分なんですね、私は(笑)。すぐに答えを見つけたくなっちゃうんです。

―実際に見つけられるんだから凄いと思いますけど。

内村:でも、見つけないほうが良かったりすることもありますから、善し悪しだと思いますね。だって、答えを見つけたと思って自分ルールを作っちゃったら、その間違いを認める時とか変えようと思った時にすごい苦痛ですよ!(笑)

お客さんから「愛してる」って言われて、私も初めてお客さんに「愛してるー!」って言った気がします。

―つい先日までフランスに行っていたらしいですね。

内村:パリで開催された『JAPAN EXPO』というイベントに出演してきました。日本の文化を紹介するのが主旨で、アニメとかマンガとかゲームとか音楽とか、色々なブースが出ていましたね。

―お客さんの反応はいかがでしたか?

内村:演奏するまではかなり不安だったんです。言葉も分からないし、私なんて初めての海外だったので、とにかく不安で(笑)。だからもう、何とか喜んでもらえるようにフランス語のMCを用意したり、自分たちの曲をDAFT PUNK(フランスのアーティスト)の“One More Time”とミックスしたり、着物っぽい衣装を用意したりと。

テーマは「恋の初期衝動」school food punishment インタビュー

―積極的にアピールしようと。

内村:そうなんです。とにかくやってみないと分からないから。

山崎:2回やったうちの1回目はライブアクトのトップバッターだったんですけど、ステージに出ていったら意外にも歓声があがって。

内村:そうそう。喜んでもらいたい場面でしっかり反応してくれたから、不安も吹きとびましたね。特に2回目のライブは、1回目のお陰でより積極的にぶつかっていけて、更に反応がよかったんです。日本でもやったことないのに初めてコールアンドレスポンスしてしまったり(笑)。

―日本でやる以上に盛り上がったんですね。

内村:実はフランスに行く前から、どうやってライブをやるのが良いのか悩んでいたんです。もっとお客さんを盛上げたいし、もっとノッて欲しいと思っていて。それが今回フランスに行ったことで、「あっ、ライブってこういうことなんだ」と実感することができました。手をあげたくなっちゃう感覚とか、求めたくなっちゃう感覚が確かにあるんだと分かって。それを自分で感じたり、お客さんが感じてくれたりするのがライブの醍醐味なんだと思いましたね。

―そういうライブをやる為に、欠けていたものとは何なのでしょう?

内村:「コミュニケーション」なんだと思いましたね。バンドとお客さんとにコミュニケーションが生まれていると、どちらもすごく楽しいじゃないですか。

蓮尾:そうそう。フランスのお客さんが積極的に向かってきてくれたお陰で、ようやく気づけたのかもしれません。手でハートマークを作って、「愛してる~!」って日本語で言ってくれたりね(笑)。

―最高なお客さんたちですね(笑)。

内村:そうなんです。お客さんから「愛してる」って言われて、私も初めてお客さんに「愛してるー!」って言った気がします。「ライブ=コミュニケーション」だというのが、自分たちにとって情けないくらい新しかったんです。

―日本人とフランス人の違いもあるんでしょうね。日本人、恥ずかしがり屋が多いと思いますし。

内村:でも、露骨に表現してなくても、本当はちゃんと喜んでくれてたりすると思うんです。私たちに、そういうお客さんの喜びを感じ取る力が足りてなかったんだと思います。今回ようやくその事に気がつけたので、これからは自分たちから積極的にいきたいですね。

リリース情報
school food punishment
『butterfly swimmer』

2009年7月22日発売
価格:1,223円(税込)
ESCL-3259

1. butterfly swimmer
2. beer trip
3. futuristic imagination-AVALON Remix-

プロフィール
school food punishment

04年10月に結成。07年4月、1stミニアルバム『school food is good food』をリリース、それに伴う全国ツアーを行う。08年12月には、3rdミニアルバム『Riff-rain』をタワーレコード限定で先行リリース、タワーレコードJ-Indiesウィークリーチャートにて1位を記録、約一週間で完売となる。2009年7月22日、メジャー第2作目となる2ndシングル『butterfly swimmer』をリリース。メンバーは、内村友美(vocal & guitar)、蓮尾理之(keyboards)、比田井修(drums)、山崎英明(bass)の4人組。



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