3ピースのインスト・バンド、Clean Of Coreが初のミニ・アルバム『Spectacle』を発表する。ポストロック、ハードコア、プログレなどを吸収した彼らの楽曲は、基本6分以上の長尺な曲が多いのだが、様々なリフをこれでもかと積み重ねて、文字通りプログレッシヴに展開し続ける様は実にスリリングであり、また特徴的な音色の鍵盤も、作品に広がりを与えている。中心人物の武田直は、日本のインスト・シーンを代表するバンドになったLITEのメンバーである武田信幸の実弟であり、そのLITEもリリースしているアイルランドのレーベル、Transduction Recordsからの海外リリースも決定するなど、今後彼らが様々な意味において話題となるのは間違いない。しかし、ブームとしてのインスト・ロックの盛り上がりが一段落した今、そういった話題性ではなく、あくまで作品性の高さで勝負し、新たな光景を切り開こうとしている、彼らの今後に期待したい。
高校を卒業したくらいのときに武田からキング・クリムゾンの『Red』を借りて、「これ、やべえ!」って(笑)。
―まずはバンド結成のいきさつから教えてください。
武田:ここ2人(武田と加藤)が高校の同級生でバンド始めて、他の高校だったんですけど友達の友達で高野を紹介してもらって、スタジオに入ってって感じですね。
左から:高野、武田、加藤
―元々はボーカルがいたんですよね?
高野:そうです。そいつは俺と同じ高校だったんです。
―その頃ってどんな音楽性だったんですか?
武田:UKロックですね。レディオヘッドとかミューズとか。
―へえ、ちょっと意外ですね。
加藤:でもその頃からインストの曲も1曲やってたんですよ。
―じゃあボーカルが抜けたら自然とインストに?
武田:そうですね。3人になって初めてスタジオ入ったときに、「誰が歌う?」って話より、もうそのまま曲作ろうかって。その頃聴いてたのがポストロックとかインストだったんで、自然と。
―例えばどんなの聴いてたんですか?
武田:好みはバラバラなんですけど…トータスとかモグワイとか、王道の。
加藤:高校ぐらいのときに来日して見に行ったりとか。
―モグワイは僕大体見に行ってるんで、どっかですれ違ってますね(笑)。他に影響源というと?
武田:僕は70年代のプログレとか。むしろポストロックよりも先にそういうのを聴いてて。
加藤:高校を卒業したくらいのときに武田からキング・クリムゾンの『Red』を借りて、「これ、やべえ!」って(笑)。
―あとはやっぱり武田さんのお兄さんが所属してるLITEの影響もあるとは思うんですけど。
武田:影響はやっぱり受けてると思いますね。元々兄貴と音楽を共有していたというか、お互いこれいいよって教え合ったりしてたし。目標でもありますし。
―逆に「あっちがああゆうのやってるから俺はやらない!」とかって反発心はなかったですか?
武田:それももちろんあります。今僕はキーボードを弾いてるんですけど、同じインスト同士で、どうしても比較されちゃう部分があると思ったんで、LITEとは違う楽器を入れて、違う側面を出そうと思いましたね。最近LITEもシンセを入れたんですけど(笑)。
―「マネしやがって!」と(笑)。
武田:とは思ってないですけど(笑)。また僕らとは違った感じに入れてたんで。あと、一時期僕がライブで縦笛を吹いてた時があって、それはすごい気に入ってくれてました。全然適当なんですけど(笑)。
加藤:フリー・ジャズみたいなね(笑)。
武田:リコーダーなんですけど、リヴァーブかけるとすごいいい音がして。最近はやってないんですけど。
ポップさというか、マニアックなことをやりつつも、聴きやすくてノリやすいっていうのは大事にしたいですね。
―曲作りに関して意識していることってありますか?
武田:やっぱりポップさというか、マニアックなことをやりつつも、聴きやすくてノリやすいっていうのは大事にしたいですね。
加藤:印象的なフレーズとか。僕らってユニゾンが多いじゃないですか? ギターとベースのリフ押しっていうか。
武田:もう一つ楽器があれば主旋律みたいのを弾くと思うんですけど、それって結構ありきたりというか。ツイン・ギターのハモりとか。
―制限された中でどこまでできるか?
武田:そうですね。もう一つ楽器が欲しいとは思うんですけど、今は3人でできることを。
―ゆくゆくは変わってくるかも?
武田:もしかしたら歌が入るかもしれないし、こだわりはないです。
―Clean Of Coreの曲って大体6分以上あるんだけど、反復じゃなくて、文字通りプログレッシヴに展開し続けるから、スリリングで、聴いてて飽きないんですよね。
武田:飽きが来ないっていうのは大事にしてます。曲の長さは…どうしても長くなっちゃうんです(笑)。
―実際にどうやって曲作りをしてるんですか?
武田:大体僕がリフを持っていって、その中からメインのリフが決まって、それに肉付けしたり、展開をつけたりって感じですね。
―1曲作るのに相当かかるんじゃないですか?
加藤:2、3ヶ月かかりますね。
―長いなあ(笑)。
加藤:まずフレーズを分析するところから始めないとなんで。
武田:結構ニュアンスで持ってくんで(笑)。
加藤:クリックに乗せてみると、裏返ってるのがわかるとか(笑)。
―そのリフがあった上で、セッションで展開させていくの? それとも一つ一つのパートをつなぎ合わせる?
武田:どちらかと言えば、つなぎ合わせる方ですね。
加藤:あんまりセッションってやらないですね。
武田:できないです(笑)。めちゃくちゃになっちゃう。ただリフで、また違うリフでって重ねていくと、統一感がなくてノレなくなっちゃうからそこには注意してて。同じフレーズの違うパターンを次の展開に入れたりとか。
僕らの曲って2曲にしようと思えばできるんですよ(笑)。でもそこは妥協せずに、1曲に集中して、全部持ち込んでる。
―でもそれが6分とか7分になっちゃうのは何でなんだろ?
武田:1曲でやりたいことが多過ぎるんですよね。1曲ずつ全力投球なんで、いいリフとかできたら入れたくなっちゃう。だから僕らの曲って2曲にしようと思えばできるんですよ(笑)。でもそこは妥協せずに、1曲に集中して、全部持ち込んで。
―じゃあちょっと意地悪な質問だけど、最初にポップでありたいって言ってたでしょ? でも一般的には6分とか7分の曲ってポップとはなかなか言わない。そのバランスはどう考えていますか?
武田:…難しいですねえ。
加藤:A・B・サビみたいなのは個人的に面白くないんですよね。それでいいバンドももちろんいると思うんだけど、自分がやるかっていうとまた違う。
―自分たちのフォーマットの中で、いかにポップで伝わりやすいものを作るかっていう挑戦?
武田:勘違いかもしれないですけど、僕らはポップだと思ってやってるんで、マニアックだと思われたら、それはそれでしょうがないですね。
―今回のミニ・アルバムは1stだし、アルバム用にコンセプチュアルに作ったというよりは、これまでのベストって感じ?
武田:そうですね。
―海外リリースも決まってて、海外盤は9曲入りで、国内盤は6曲入りなんですよね?
武田:最初は日本も9曲入りって話もあったんですけど、色々話し合った結果最初は6曲でって。まだそんなに知名度があるわけじゃないし、名刺代わりで。
―これまでのベストではあるんだけど、「Nocturne」が主題になってて、1曲目と、海外盤の最後も“Nocturne”で終わってるのにはコンセプチュアルな要素も感じました。
武田:既存の曲は1曲ずつで完結してるんだけど、“Nocturne”という曲を作ってつながりを持たせて。1曲ずつに光景(=Spectacle)があって、それを合わせて『Spectacle』というタイトルなんです。ホントは「All」をつけて「All Spectacle=全ての光景」にしたかったんですけど、海外レーベルのオーナーに英語としておかしいって言われて(笑)。
―断念したわけだ(笑)。
武田:あと“Nocturne”から始まるのは、「Nocturne」って夜、夜景、夜想曲って意味なんですけど、暗いコードが多いんでその世界観を出しつつ、夜から始まって、朝や昼を迎えて5曲目の“Nocturne”でまた夜になって、それを繰り返して最後また夜で終わるっていう、流れのある感じにしたいなと思って。
―1曲ずつの光景っていうのは、ストーリー性のあるもの? それとも漠然としたイメージ?
武田:曲によってですね。
―ストーリーのある曲で言うと?
武田:2曲目の“Navigation and storm”とかそうですね。船が航海を始めて、途中で天候が悪くなって、嵐に巻き込まれて沈む…タイタニックみたいな(笑)。
―(笑)。それって作りの段階でそのイメージを共有してるんですか?
武田:完全後付ですね(笑)。1曲聴いてみると、イメージが出てくるんです。イントロの部分とかは、作ってる段階で僕の中では船のイメージが見えてたんですけど、後はそこから派生して。
―じゃあタイトルも基本的にはそうゆうイメージから決まるんだ?
武田:曲にもよるんですけどね、できた後にメンバーみんなで聴いてみて、どうゆうイメージかを合わせて決めることが多いですね。
加藤:スタジオのホワイト・ボードに「何っぽい」って書いたり(笑)。
もっと挑戦的な、枠に収まらない、引き出しの多いバンドでありたいですね。
―例えば“pipe line”は? ベンチャーズ?
高野:全然関係ないです(笑)。
武田:パイプ・オルガンの音だったんで、パイプ・オルガンのラインでっていう。
加藤:ベンチャーズの曲だって知らなかった(笑)。
―多分一番有名な曲だよ。
高野:テケテケテケっていう。
武田:え、あれ“pipe line”って言うの!? やべえな(笑)。
―(笑)。キーボードはいつ頃から使うようになったの?
武田:2年ぐらい前かな。
―さっき言ってたみたいに他のバンドとの差別化っていうのもあるだろうし、あと音色含めて鍵盤が入ると一気にプログレっぽさが増すよね。
武田:もちろん音色としてもずっと欲しくて、たまたま出会ったのが今のキーボードなんですけど、2000円だったんですよ(笑)。僕全然鍵盤弾いたことなかったんで、これ使ってみようって。音がすごく特徴的で、ハマればいいかなと思っていじってたら“pipe line”ができたんです。
―この曲を1曲目に持ってきたのは、あえてギターではなく、鍵盤を持ってきた?
武田:そうですね。ライブでも必ずやる曲だし、僕らの中での一押しじゃないですけど、そういう曲でもあったんで。
加藤:お客さんとか、知り合いのバンドも、“pipe line”は曲名を覚えてくれてたり。
武田:鍵盤入ってはじめて作った曲なんで、それまで3ピースで、ギターだけでガツガツやってたんですけど、新たな可能性が広がったというか。
―海外でのリリースが決まった経緯は?
武田:Transductionは元々LITEとかも出してて、オーナーが日本に来たときに僕らのライブにも来てくれて。MySpaceとかで聴いて気に入ってくれてたらしく、LITEと兄弟っていうのも知らなかったみたいで。それで今年の頭ぐらいに出したいって言ってきて、日本でもレーベルをやろうとしてるんですけど、Penguinmarket(日本でのレーベル)からも声がかかってたんで、上手いこと調整して、海外はTransductionからということに。
―海外ライブの経験ってあるんですか?
武田:まだないですね。
加藤:これを機会に行ければ。
―日本に来た海外のバンドのサポートは何度もやってますよね。資料を見ても、スウェーデン、イタリア、デンマークとか、アメリカやイギリス以外の国のバンドと多くやってるのが印象的なんですけど、これって言語が関係ないインストならではだと思いますか?
武田:逆に今は歌があっても海外で評価されるのかなって思いますけどね。インストで始まった以上、垣根はないというか、そういう認識はあるんで、海外でもブレイクしたいですね。
加藤:インストだからって部分には、あんまりこだわりがないんです。
―なるほど。でも現段階では、インスト・バンドとして突き詰めたいことがあるんじゃないですか?
武田:3人の限界を超えるというか、最近僕は鍵盤とギターを同時に弾く曲をやってるんですけど、打ち込みだったり、3人なんだけど音数を増やすっていう。もちろん、3人だからこそ3つの音だけでっていう部分も残しつつ。
―いわゆる「インスト・ブーム」みたいのも一段落して、これからはますます作品性自体が評価されるようになってくると思うんですね。その中でClean Of Coreならではの強みというと、どんな部分だと思いますか?
加藤:これだけリフを押してるバンドは他にいないんじゃないかな。
―確かに。
加藤:あと個人的にはポストロックのバンドって、そんなにベースが面白くないなって思うんで、引き倒してやろうって(笑)。
武田:普通とか普遍のよさもあるとは思うんですけど、それだけじゃなくもっと挑戦的な、枠に収まらない、引き出しの多いバンドでありたいですね。
―ライブの見せ方に関してはどうですか?
武田:自己満に終わりたくない。ノリにくい部分もあるとは思うんですけど、それをいかに楽しんでもらえるか。
―インストのバンドって、内向きにひたすら演奏してオーディエンスをぐっと引き込むタイプのバンドと、そうじゃなくて外向きに、オーディエンスを巻き込んでいくバンドと、大きく分けて二つあると思うんだけど、それで言うとどっち?
武田:外向きかな。目指してるのはそっちですね。内々に向かって世界観が伝わるのもすごいと思うんですけど、外に向けてやってお客さんがノッてくれると僕らも嬉しいですからね。
加藤:僕らに限らず、お客さんからのレスポンスがあると、バンドはいいライブをすると思うんで。
―うん、逆にそれがないとキツイもんね。じゃあ最後に9月からのツアーに向けて、意気込みを聞かせてください。
加藤:せっかくたくさんの数周るんで、レコ発の初日と11月のファイナルで、全然違うバンドみたいになっていればいいと思いますね。
武田:ツアーは無駄にしたくないんで、常に成長したいと思います。
- リリース情報
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- Clean Of Core
『Spectacle』 -
1. pipe line
2. Navigation and storm
3. a sad look
4. shift
5. Nocturne
6. time wave
- Clean Of Core
- イベント情報
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- Clean Of Core 1st mini album『Spectacle』release party
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2009年9月12日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京 下北沢ERA出演:
Clean Of Core [VJ:mitchel(from nego)]
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aie料金:前売2,000円 当日2,300円(ドリンク代別途500円)
チケット取り扱い:
ローソンチケット(Lコード:75157)『1st mini album "Spectacle" release tour』
2009年9月21日(月)
会場:札幌 KLUB COUNTER ACTION2009年9月22日(火)
会場:札幌 HALL SPIRITUAL LOUNGE2009年9月25日(金)
会場:熊谷 BLUE FOREST2009年9月26日(土)
会場:前橋 DYVER2009年9月27日(日)
会場:水戸 club SONIC2009年10月03日(土)
会場:千葉 稲毛K's Dream2009年10月04日(日)
会場:大阪 鰻谷SUNSUI2009年10月11日(日)
会場:徳島 銀座crowbar2009年10月12日(月)
会場:愛媛 松山星空JETT2009年10月23日(金)
会場:仙台 仙台BIRDLAND2009年10月24日(土)
会場:山形 sandinista2009年11月02日(月)
会場:福島 いわきSONIC2009年11月03日(火)
会場:秋田 Club SWINDLE2009年11月14日(土)
会場:名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL2009年11月15日(日)
会場:京都 METRO2009年11月21日(土)
会場:大阪 中百舌鳥 club massive2009年11月22日(日)
会場:神戸 BLUEPORT2009年11月23日(月)
会場:岡山 PEPPER LAND
and more2009年11月27日(金)
会場:東京 下北沢SHELTER -FINAL-
- プロフィール
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- Clean Of Core
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2005年、高校の同級生であった武田と加藤を中心に結成。独特の世界観からなるタイトで爆発力のある楽曲は新しい形の云わばダンスミュージックとなる。今、インストシーンで最も期待される若手注目株。そして2009年8月12日に待望のリリースが決定!!また、54-71、LITE、Zなどをライセンス販売している、アイルランドのレーベル「Transduction Records」から10月26日にUK/EUでの発売も決定している。
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