YUKI、いきものがかり、AKB48などのプロデュース/楽曲制作で知られる田中ユウスケ率いるクリエーター集団「Q;indivi」が、映画やCMなどを中心に透明感溢れる歌声を響かせているRin Oikawaをフィーチャーした『Happy Celebration』をリリースした。クラシックからジャズ、近代ポップスまで、誰もが知る名曲に祝福感満載のリアレンジを施した「Celebration」シリーズの最新作としてリリースされる今作は、エレクトロ、ピアノを中心としたキラキラのサウンドと、どこまでもピュアなRin Oikawaの歌声が、これでもかと幸福感を増幅させ、胸をキュンキュンさせまくるキラー・チューンのオンパレード。ポップ・シーンの最前線で活躍するクリエーターたちの実力を、まざまざと見せつけられる作品だ。田中ユウスケとRin Oikawaのインタビューをどうぞ!
(インタビュー・テキスト:タナカヒロシ)
CM音楽をベースに始まったプロジェクト
―Q;indiviって、あんまり表立って顔を見せてないじゃないですか。そもそもどういうきっかけで始まったプロジェクトなんですか?
田中:いわゆる普通のアーティストの成り立ちとは少し違っていて。普通はバンドを組んで、グループを組んでみたいな感じだと思うんですけど、もともと僕が広告関係の音楽を作っていくなかで知り合ったり、作品を通じて自然と広がっていったプロジェクトですね。
―これまで作ってきたCM音楽を、作品集的な形で発表しようと思って始めた?
田中:そうですね。せっかく作ったのだから形に残したいなというところで。
―Q;indiviの正式メンバーは?
田中:不特定なんですよね。ただ、今回の「Q;indivi Starring Rin Oikawa」っていうのは、Rin Oikawaの声にフォーカスを当てた、彼女メインのプロジェクトです。
―及川さんは、もともと歌うきっかけは何だったんですか?
及川:ほんと幼少の頃になってしまうんですけど、幼稚園のときくらいから、親が聴いていたレコードとか、ラジオから流れる音楽を聴いて、一緒に歌い始めて。それがきっかけですね。あと、小学校低学年のときに3年ほどアメリカに住んでいたので、アメリカのラジオでかかってる曲を聴いて、次々一緒に歌うみたいな。
―具体的にはどの辺の音楽を?
及川:一番影響を受けたのはマイケル・ジャクソンとか。その頃に流行っていた洋楽全般なんですけど、ニルヴァーナとか、ボーイズIIメンとか、ラジオっていろいろかかるじゃないですか。だから、何でも聴いて、歌ってましたね。
―じゃあ、本格的に音楽を始めたきっかけは?
及川:もうずっと歌手になりたいと思って育ってきたので、特にきっかけというのがなくて。高校を卒業して、音楽の専門学校に行って、ずっとそのためにいいと思う道を選んできたっていう感じでした。
一緒にやってみてフィットする感覚は、もしかしたらバンドを組んだときの初期衝動に似てるかもしれない。
―田中さんと及川さんは、どうやって出会ったんですか?
田中:ボーカリストを探しているときに、知人の紹介で及川が歌ってるデモCDを聴かせてもらったんです。それで、聴いた瞬間に一緒に仕事がしてみたいなと思って、すぐにオファーをさせてもらって。そこで一緒にやってみてフィットする感覚は、もしかしたらバンドを組んだときの初期衝動に似てたのかもしれないですね。仕事を通じてではありましたけど。
―そこまで惹かれた魅力っていうのは?
田中:言葉にするのは難しいんですけど、声がすごく琴線に触れるというか。彼女が本来持っている声の質に一番惹かれましたね。
―面と向かって言うのはあれですけど、すごくピュアな声をしてますよね。淀んだものがないというか。
及川:ありがとうございます。
―田中さんと及川さんが最初にやった作品は?
田中:とあるコマーシャルで、クラシックの楽曲をアレンジして、歌ってもらったのが最初のキッカケですね。そのときに何かこれから一緒にできるかもって、手応えというか、達成感がありました。その楽曲自体も「Celebration」シリーズのヒントにもなっていて。
―もっと「Q;indivi Starring Rin Oikawa」での作品を作っていきたいと?
田中:そうですね。広告とか、外部プロデュースの仕事で面白いのは、企画をはじめ、いろんな人からのアイディアに触れることができるところだと思うんですよね。自分が予想もつかない考え方だったり、価値観だったり、そういうものに積極的に触れられることが、何よりも自分にとって非常にありがたい環境だと思います。
大事な人に対してとか、一緒に祝いたい人がいる、そういう幸せがあるなと思って歌いました。
―今回の『Happy Celebration』の曲は、どうやって選んだんですか?
田中:40〜50曲くらい候補を出して、全員で話し合いながら決めていく形ですね。今回はテーマが「Happy」だったので、それにちなんだ楽曲を。
―40〜50曲も候補があったんですね! やっぱりそういうのって、仕事柄っていう部分も含めて、普段からいろんな音楽を聴いているからアイディアが出てくるというか。
田中:そうですね。仕事でジャンル問わずいろいろな音楽に触れる機会が多いので、それはいまの環境に感謝です。『Happy Celebration』のことだけを考える時間も大切なんですけど、無意識のうちに「あ、これいいかな」と思いついたりとか、常日頃別の動きがあるなかで、また違うものが生まれていくっていう。その化学反応が自分にとっては大切なんだと思いますね。
―やっぱりハッピーな感じを出すことに重点を置かれてると思うんですけど、その辺で意識されたことは?
及川:このシリーズは特になんですけど、全編を通してキーを高めにとってるんですよ。明るく聴こえるように、一回歌うごとに録ったものを聴き直して、口の開け方を変えてみたりとか、歌い方をちょっとずつ変えて、「Celebration」のイメージに合うように持っていきました。最初は低いキーで歌い始めるんですけど、「やっぱりちょっと低いね」ってどんどん上げていって、最終的にめちゃめちゃ高くなって。もう「これ、ライブでできないね」みたいな曲もあるんですけど(笑)。
―キーを上げれば上げるほどハッピー感が出るみたいな法則があるんですかね?
及川:上げすぎて全部裏声になってしまったりすると、弱々しくなったりするので、地声と裏声の微妙なバランスを保てるキーというか。曲によっては全部裏声だったりもするんですけど、地声でちゃんと出るところもあり、裏声で抜けるところもある、絶妙なキーを探して録っています。
―でも、及川さんなりのハッピーとはなんぞやみたいなものはあるわけですよね?
及川:はい。
―言葉にするのは難しいかもしれないですけど、今回イメージしていたものとかは?
及川:例えば“Happy Birthday”だったら、大事な人に対してとか、一緒に祝いたい人がいる、そういう幸せがあるなと思って歌いました。でも基本的には、このCDを出せるだけで私はハッピーで。本当にそういう素直な気持ちでリリースを迎えられたなと思っています。
―なんか、ハッピーな体験を思い返してとか、そういうのはなかったんですか?
及川:あー、過去のことはないですね。
田中:なんかあるでしょ(笑)。
及川:でも、なんか、モノを作っていくのって、それだけで楽しいと私は思うんですよ。レコーディングが終わるたびに、これからこの曲がどうなるのか楽しみだし、歌う前も、自分がどういうふうに歌えるのかなっていうのはいつも楽しみにしているので。
原点は、モノを作る喜び、モノを発表できる事の喜び。
―こういう作品を作っていくのって、普通のシンガー・ソングライターとか、バンドマンとは、音楽に向き合う気持ちも違ってくるのかなと思うんですけど。
田中:バンドはもう10年以上やってないので比較するのが難しいんですけど、さっき及川が言ったように、根底はシンプルに音楽を作るだけで楽しいんですよね。もちろん、作れないときのジレンマとかはつきものなんですけど、できあがったときの達成感は、作品が売れようと売れまいと、実はそんなに関係なくて。テクニックみたいなものは、大人になって身に付くのかもしれないですけど、最初の原点は、モノを作る喜び、モノを発表できる事の喜び、そう考えると向き合う姿勢や気持ちは大きく変わらないのかもしれませんね。
―作ることへの純粋な初期衝動みたいな。
田中:そうですね。自分たちのアイディアが目の前で形になっていくのは純粋に楽しいですよね。それを聞いてくれる人がいるというが、クリエイターとしてはやっぱりそれが一番幸せなんじゃないかなと思います。
―例えば今回みたいにハッピーな気持ちを増幅させるものとか、理想とする音楽の在り方は、どんなものだと思いますか?
田中:僕が規定できるようなものでは全然ないですけど、過去の素晴らしい楽曲、いわゆる名曲と言われてるものを、フィジカルに実際に声に出して歌ってみたり、演奏することでは、また聞くのとは違った吸収の仕方があると思うんですよね。なので、いい意味でそういう名曲たちを、自分たちの中にしっかりと取り入れて、この経験を活かしたうえで、新しいオリジナル作品をまた発表していきたいなっていうのが理想ですね。
―及川さんはいかがですか?
及川:すごい壮大なメッセージの後でなんと言えばいいのかわからないですけど…。
―いやいや、遠慮なく(笑)。
及川:あの、音楽はこうあるべきだというよりは、やるからには誰かのお気に入りになりたいなとは思ってます。誰かが私たちのCDを「これ、お気に入りなんだ」と言って聴いてくれるっていうのは、一番うれしいことなので。音楽家としてはそれを目指してやっていきたいなと思います。
―今回の作品はまさにそうだと思うんですけど、思い出が甦ってくるみたいな曲って素敵だなと思うんですよね。例えば誕生日とか結婚式にこのCDがかかっていて、後々またこのCDを聴いたら、そのときの記憶が甦ってくるみたいな。
田中:そうですね。結果的にそうなってくる事が何より嬉しいですね。
- リリース情報
-
- Q;indivi starring Rin Oikawa
『Happy Celebraion』 -
2010年12月3日発売
価格:2,415円(税込)
QSP-00051. Happy Birthday To You
2. Someday My Prince Will Come
3. Happy Birthday
4. You Can't Hurry Love
5. Can't Take My Eyes Off You
6. Wake Me Up Before You Go Go
7. Over The Rainbow
8. Hymne a l'amour
9. 『愛の夢』第3番 Liebestraume
10. Ave Maria
11. 喜びの歌 Ode To Joy Bonus Track
12. Happy Birthday To You(my sweet family ver)
- Q;indivi starring Rin Oikawa
- プロフィール
-
- Q;indiv
-
第三世代のミュージックプロダクトとして始動。特定のメンバーをもたず「Q;」というアイコンをベースに匿名性の高い活動を開始。赤、青、黄色というコンセプチュアルなオリジナルアルバム3作品をavexよりリリース。“Part of Your World”はYoutubeにて250万再生を記録するなど、House Nationをはじめピークタイムのアンセムとしてクラブヒットを記録。「Rin OIkawa」の声にフォーカスしたスピンオフ企画「Celebration」シリーズは、様々な祝祭をテーマとして、インディーズながらも10万枚を超えるセールスを記録。iTunesミュージックストアでは総合チャート1位などロングセールスを記録。2010年はワーナーミュージックジャパンより様々な男性ボーカリストとコラボレートした意欲作「Q;indivi+」を発表。
-
- 田中ユウスケ
-
音楽プロデューサー/クリエイター。クリエイターズラボ「agehasprings」に所属。 YUKI、中島美嘉、元気ロケッツ、いきものがかり、AKB48、倖田來未など様々なトップアーティスト作品の音楽制作に携わる。CMなど広告〜映像の楽曲制作も同時に数多く手掛ける。
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-