「音楽だけに留まらないアート集団」とコンセプトを掲げ、ファッションやデザインなど様々なカルチャー領域にて活動するPLASTICZOOMS。昨年にはカメラマン・荒木経惟とのコラボも実現、10月にはファッションブランド「DISCOVERED」とのコラボアイテムとして「マント」を発表するなど注目を集めてきた彼らが、2ndアルバム『STARBOW』を完成させた。
約2年半をかけて作り上げられたという新作は、彼ら独自の美意識を貫き通した1枚。The Horrorsなど海外のネオ・ゴシックやネオ・サイケデリックとリンクするダークで耽美的な音楽性を中心に、パンキッシュなギターからクラシカルなオーケストラまで幅広いサウンドを聴かせてくれる。今回は、中心人物、SHO(Vo)へインタビュー。自らアクセサリのデザインも手掛け、PLASTICZOOMSはバンドというよりも「ブランド」だと語る彼の美学と行動哲学を、語ってもらった。
音楽だけをやってる人間からすれば、いろんなものに手を出してるという感覚で見るでしょうけど、これが自分達の芸術の形。自分達の正解です。
―PLASTIZOOMSのようなバンドは、アートもデザインも音楽も同列に扱うCINRAのような媒体にはまさにうってつけの存在だと思ってました。
SHO:よかった。僕、そういう風に見られるのは嬉しいです。
―新作よりも先にまずにバンドについてのお話を伺いたいのですが、PLASTIZOOMSは、「音楽だけに留まらないアート集団」というコンセプトを掲げているわけですよね。
SHO:そうですね。
―そういう意識はどこから出てきたんでしょう?
SHO:何故自分たちの組織をブランド化したかというと、自分が作ったものの価値が安くなってしまうのが納得いかなかったというのが始まりですね。自分は絵画や写真もすごく好きで、音楽だけじゃなく総合芸術として、絵を描いているような感覚で曲を作っているんです。だから、そこに関しても、もっとできるんじゃないかという。それでブランド化を果たしました。
SHO
―例えば、オフィシャルサイトの通販では音源もアクセサリーも同じように並んでいる。それはどっちがメインでどっちがサブということではなく、同じ美学に基づいた同列のものなんですよね。
SHO:まさにそうですね。ファッションも音楽も同列だし、僕から生まれたものは全て同じ。グッズとして売る意味も別にないですし、バンドとか、メンバーという言い方もあまり好まないんです。集団として動いているので、僕も含めステージに立つメンバーはいるけれど、クリエイティブな面で支えてくれている人もメンバーだと思う。PVを作ってくれる若槻さんも、写真を撮ってくれるみんなもメンバーで、ヘアメイクさんなどもメンバーだと思う。バンドという見え方というよりは、組織として、会社のような感覚でやってますね。
―絵や写真ではどういう人に影響を受けました?
SHO:分かりやすい所だとマン・レイとか、ダリとかがすごく好きです。もともとポップなものよりはダークなものに惹かれますね。表面上は暗いけれど深みのあるものが好きで。
―ファッションと音楽を一体として捉えるのって、Sex Pistolsをプロデュースしたマルコム・マクラーレン的な発想でもあると思うんですけど、彼からの影響はありました?
SHO:もちろんありますね。大好きです。特にプロデュースすることに関して。彼が作り上げたファッションや70年代のパンク・ロックや、P.I.L.、BOW WOW WOW、彼のやったラップや、そういう視点的な部分に強く影響を受けてます。自分は元々ファッションの学校にも行っていたので、音楽を作る感覚と全く同じように服も作っていたんです。だから、デザインも音楽も、頭の中にあるものを具現化するということに徹するだけ。僕にとっては当たり前という感じです。
―なるほど。
SHO:ファッションと音楽とアートワークとデザイン全てが同じ丸の中にあるのは、僕が自然にやってきたことです。みんな珍しがるんですけど、意図的にそうしているというよりは、やりたいことを芸術として表現することに徹してきただけですね。本質を知る作業。音楽だけをやってる人間からすれば、いろんなものに手を出してるという感覚で見えるでしょうけど、これが自分達の芸術の形。自分達の正解です。
「なんでこのスタイルになったの?」って言われるんですけど、当たり前にこうなってるから、わからないというか。
―PLASTICZOOMSのサウンドには刹那的でパンキッシュなところがすごくあるんですけど、それだけではないですよね。中心にダークな耽美性があると思うんです。そこはどういうものが根っこにあると思いますか?
SHO:僕の場合、テーマは全て自分のライフスタイルなので。何かに向けてというものがなくて、いわば日記を歌詞にして曲にしたようなものなんです。感覚的に出てきたものが1番大事というか。そこに関してはアナーキーさやポリティカルな部分というより、もっと自分に向かう方向性ですね。音的な部分で言うと、パンクは自分の音楽ルーツで欠かせない部分で自分の根っこです。
PLASTICZOOMS
―PLASTICZOOMSの表現には、全てに統一された美学と世界観があるわけですよね。
SHO:はい。そうです。
―それに最初に気付いたのはいつだと思います?
SHO:というと?
―例えば日本で思春期を過ごしてきたとしたら、こういう感性って、決してクラスの中でのマジョリティな嗜好ではないと思うんですよ。そういう自分に気付いたのは?
SHO:かなり幼少ですね。明らかに人と違うと言われてましたし、感じてました。小学生や幼稚園の頃からずっと絵を描くことが好きで。友達もいらないから絵を描いているような感じでしたね。母親の影響で当たり前のように音楽も服も自分で選んで生活をしてきたんです。自分の感覚で価値を決めていくやり方が昔から肌に合っていた気がします。
―音楽も幼い頃から身近にあったんですね。
SHO:母親のレコードが大きいです。ロックに触れたのが、小学生5年生の頃。テレビを見ない家だったので、ずっと家のリビングで流れているクラシックやジャズばかりでしたけど、母親の持っていたThe BeatlesやThe Kinksを聴きだして。それから、パンクに触れたのが中1。その時にこのスタイルの根が固まりましたね。自分のスタイルを何処でも持つというスタイルに。
―最初に音楽を作ろうと思った時はいつ頃のことですか?
SHO:最初に自分で曲を作ったのは、やっぱり中学校1年生の頃ですね。パンク・ロックに触れだしてから、ギターやベースを触って作って。ちゃんとした曲ではないですけど。でも、その頃から歌詞は英語でした。昔から日本の音楽があまり耳に入らない環境で育ったので。そうして、高校から色々な音楽に触れて今まで色々なバンドをやりました。
―そういう思春期を過ごしてきて、リアルタイムで海外のロックシーンも聴いてきたわけですよね。そうすると、ここ数年のThe HorrorsとかThe Big Pinkのように、ゴスやサイケデリックをごちゃ混ぜにした美学で鳴らすアーティストが出てきているのには同世代感を感じるんじゃないですか?
SHO:そうですね。当たり前にやってるんだろうなという気がすごくするんです。僕もよく、「なんでこのスタイルになったの?」って言われるんですけど、当たり前にこうなってるから、わからないというか。「なんで英語なの?」と言われても、同じ。意図的にやったものは好きじゃなくて、感覚的に、本能的にやったものが美しいと思えるので。例えば、最近のファッションでも、gareth pughのような新しいデザイナーが響くのは、本能的に、自分の心に真っ直ぐに作ったものだからだと思うんです。The Big PinkやThe Horrorsも同じ。時代の先を見て作っているとは思うけれど、心に響くのは自分に真っ直ぐに作ってるからだと思います。
この13曲で、何かひとつでも欠けちゃいけない作品にしたかったんです。
―そういう話を踏まえてアルバムを聴くと、ジャンルとかスタイルではなくひとつの美学が貫き通されている感じがしますね。
SHO:そうですね。僕の感覚、頭の中が具現化できたなって思ってます。自分が作るものに対して疑うことをしっかりしてきたからこそ出来たと思います。
―疑うというのは?
SHO:どう自分を客観視するかにこだわって、作品をひとつひとつ丁寧に磨くというか。この13曲で、何かひとつでも欠けちゃいけない作品にしたかったんです。曲を作るというのは、楽器を筆に、音を絵の具に、ひとつの絵を描いていく作業のようなものなんです。僕にとっては。そこにミスマッチな色彩を載せたら、すごく後悔が残る。だから、歌詞やメロディ、楽器の使い方、定位、それをすべて計算してひとつの作品にし、それぞれのパーツがどの位置にきたら1番美しいかを見て足し算引き算したんです。そうやって13曲揃えました。
―最初にとっかかりになったのはどの曲でした?
SHO:前作の『CHARM』に入っている“The Shadow”という曲が終わってすぐに作った“SWAN”ですね。それが2年半前に完成して、自分の中でアルバムが見えました。そこから70~80曲以上を作って、さらに自分の今に落とせる曲を13曲選んで、ブラッシュアップしていきました。
―“SWAN”が出来て見えたものというのはどういうイメージだったんでしょう?
SHO:自分の中が完璧に見えたというか。曖昧なものが一切なくなったというか。人間って、すごく癖のある動物だと思うんです。容易でないことも多いし、そこに対して感情が入ってくるから、悲しみや苦しみを感じたりもする。でも、結局それが全てというか、それでしかないなというような曲だった。出来上がった時すごく悲しかったです。涙が出ました。そこから自分の本能から出てくるものに対して、真っ直ぐになろうと思えた曲でもあって。自分から出てくるものを愛せるようになった。それで、嘘偽りない作品を芸術として残そうと心に決めて、作曲を進めていきました。
―アルバムのタイトルもその頃に決まっていた?
SHO:はい。そうですね。もうその頃には『STARBOW』という言葉が頭にありました。美しい現象だなって思っていて。僕に似ているなと。黒の上に虹がかかると、黒と調和された僕好みの色になる。悲しげで儚げで、でも曖昧で、人間っぽい。それが僕の中で全部の曲のテーマになりましたね。それは僕の人生の、この組織のテーマでもある。黒の上にしっかりとした色を乗せられたら、僕は笑って死ねると思ったし。
例えばアンディ・ウォーホルの作品は僕には暗くダークなものに見える。でも、カラフルだからポップだと言われる。それを逆にしたような感覚ですね。
―アルバムのひとつのキーになっているのはダークネスだと思うんです。でも、それを独自のやり方で肯定していると思うんです。ポジティブとかネガティブという二極化じゃなくて。
SHO:僕はポジティブな人間ではないけれど、そういう感覚は自分の中にあると思うんですよね。人は皆、明日死ぬかもしれない。そこで歌わなきゃいけないことは、必然的に悲しみや苦しみになってしまう。その人が明日自分の隣にいるかどうか、保証はないですよね。その上で人と触れ合うってことは、悲しみがつきまとうと思うんです。自分には複雑な部分が多いので、それを真っ直ぐに落としたら、ああいう複雑な曲構成になりますし。でも、僕の性格上そこにポップさが乗ってくる。僕の曲は全部キャッチー。メロディやリフの説得力が自分らしいと言うか。
―ポップさは必要だったわけですね。
SHO:それがネガティブだけでは生きられないという部分なんでしょうね。例えばアンディ・ウォーホルの作品は僕には暗くダークなものに見える。でも、カラフルだからポップだと言われる。それを逆にしたような感覚ですね。
―曲調も、バンドサウンドには縛られてない作り方ですよね。曲によってオーケストラもあるしエレクトロもある。こういう作りになっているのはなぜなんでしょう。
SHO:感覚的にPLASTICZOOMSをバンドとして考えてないということですね。僕自身、クラシックもロックもHIP HOPも、全部同じ感覚でフラットに聴くので。今のメンバーもそう、だから僕の作ったものを受け入れてくれる。
―そういう感性があるからこそ、たとえば“Cave”は激しくてダークなエレクトロになって、“Starbow”はクラシカルな音になっている。ひとつひとつが13曲の中にあるべきピースだったわけですね。
SHO:そうなんです。僕は飽きるものが大嫌いなので。柔軟じゃない人間を飽きさせないというのは、いろんなアートにとってのテーマだと思うんです。ファッションのコレクションだって、ランウェイを歩いている人間がずっと同じようなジャケットを着てたら飽きる。だから曲を並べていくとどこかにフックがないといけない。今回のアルバムも、似た曲調はほとんどないし、同じビートはほとんどでてこない。特にビートにはこだわりましたね。コードの崩し方とか、音階の縦の並びも、ロックの人がやらないことをあえてやっていくというのもテーマでした。自分は果たしてロックがやりたいのかといえば、全然そうではなくて。勿論ゴシック・ロックに惹かれたりはするんですけど、それだ けではないです。なんでも聴きますし好きな物が沢山ありすぎます。
―そうなんですね。普段はどんなものを聴いてるんですか?
SHO:自然音楽とかノイズばっかり聴いてます。ただの風の音とか。空をカメラで撮影して、音を抜き出してMP3にしたものとか。旅に行って、そこの音を聴いているのとか。僕はそういう感覚で音楽を聴いているんです。なので、ライフスタイルの一部になればいいという気持ちで自分の曲を作っている。一種のトラウマが生む美学というか。だから、今回の作品にも聴こえない環境音を沢山入れている。そこに意味があると思うんですよね。
人に渡って、その人が感情を覚えた時点で100になる。それを知った瞬間に、僕は安心する。生きててよかったなって思う。
―これを制作したバンドメンバーについての話も聞ければと思うんですが。
SHO:この話をすると人はびっくりするんですけど、僕は作品あってからの人間だと思うんですよ。なので、『CHARM』で関わっている人間は今回のサウンドに一切関わってないです。というのは、人は死にますけど芸術は死なないですからね。そういう意味で僕は作品を優先したいです。
―じゃあ、この先も編成を変えていくつもりはある?
SHO:今はこのメンバーがベストだと思っています。今のメンバー以外じゃ考えられないことが多すぎるので。この先あるとすれば、増えるかなってくらいですね。この作品が自分にとっての基盤になったので。だから、楽器が増えたり、表現方法を増やすかもしれない。そうすると人は増える。それくらいの感覚ですね。たとえばオーケストラは毎回奏者が違うじゃないですか。そういうタイプのひとつの集合体という方が近いんじゃないかなって。ある種宗教的な極まった美しさがあるものとして存在できていれば、僕の一生はすごく意味のあるものになると思います。
―PLASTICZOOMSの音楽がファッションと親和性があるのって、両方に通じ合う美学があるからだと思うんです。服というのは、飾っていてもしょうがないわけじゃないですか。着ることで意味生まれる。それと同じように、聴かれることで、聴いた人を包む鎧のようなものになるような音楽になるというイメージはあるのではないかと。
SHO:それは、すごく近いです。手渡した瞬間に成立するものというか。僕は自信家でもないし。人に渡って、その人が感情を覚えた時点で100になる。それを知った瞬間に、僕は安心する。生きててよかったなって思う。それがアートワークでも一緒だし。自分のことを撮ってくれた写真家さんが、写真を人に見てもらう。それを見て「格好良いね」とか、もしくは「気持ち悪いね」と感覚を呼び起こす。それが芸術だと思うんです。成立するためには人の評価が必要だと考えます。それを怖がるのは人だけど、そうしていたら芸術は生まれない。そういうことを考えながら生きていますね。それも、絵や写真と同じだと思うんです。馬が合うか合わないか。
―なるほど。
SHO:他人の作品を聴いて自分の中で生まれるものもあるし、例えば空の景色を見て生まれる曲もある。自分の曲から生まれるデザインもあるし、自分のデザインから生まれるものもある。ひとつひとつのものに正面から向きあうということに、芸術があると思う。それが僕を動かすものとしてあるというか。生きていくために必要なものというか。すべての曲には「死」がテーマとしてあって。それを僕は、悲しいとは思わないんです。すごく美しいと思う。終わりが悲しいというのは先入観でしかない。そのことは、自分が黒を好きな理由にも繋がると思うんです。それが自分のテーマのひとつでもありますね。
- リリース情報
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- PLASTICZOOMS
『STARBOW』 -
2012年1月11日発売
価格:2,500円(税込)
PECF-1036 / felicitycap-1331. DREAM WAVE
2. SHOOTING STAR
3. KMKZ
4. SAVAGE
5. CRY.DISTANCE.
6. DOOR
7. WOOD UNDER THE MOON IN THE LOOP
8. SWAN
9. CAVE
10. WITCH
11. CAT
12. SCENT
13. STARBOW
- PLASTICZOOMS
- プロフィール
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- PLASTICZOOMS
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2009年デビュー以来、国内のみならず世界規模で話題を振りまき続ける「PLASTICZOOMS」。その一貫したクリエイションは多くのフォロワーを生み出し、ファンをも巻き込み唯一無二の世界を構築している。また、NEILSCHILDREN、SELFISH CUNT、COMANECHI、THEORETICAL GIRLら海外アーティストとの共演の実績からも彼らが世界基準であることが伺い知れる。2010年冬からの3ヶ月連続Sg.リリースを皮切りに「音楽だけに留まらないアート集団」としてのコンセプトに基づき、映像作品、音作品、服などマルチなスタッフを集めPLASTICZOOMSブランドを始動。2011年秋にはLONDONコレクションブランド『KOMAKINO』との合同展示会を行い、PLASTICZOOMSブランドの新作、SHOが手がけるアクセサリーブランド『VENUS ECCENTRIC』が本格デザイナーデビューを果たした。
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