今年で結成15周年を迎えたSpangle call Lilli line(以下、スパングル)が、キャリア2枚目となるベストアルバム『SINCE2』を発表する。さまざまなプロデューサーを迎え、作品ごとに多彩な音楽性を提示してきた「第2期」スパングルの、まさに集大成と呼ぶべき作品である。また、初期の名曲“nano”を、宮内優里と凛として時雨のTKがリミックスし、さらにはsalon musicの竹中仁見、la la larksの内村友美(元School Food Punishment)、aoki laskaをボーカルに迎えたリアレンジなども収録した、全曲“nano”のDISC2もついた、豪華2枚組となっている。
このアルバムのリリースを記念して、スパングルの藤枝憲と宮内優里を迎えての対談をお届けする。スパングル、宮内ともに、これまでもCINRAのインタビューに登場いただいているが、とにかく活動のスタンスは対極と言ってもいいぐらいに異なる。ライブ活動休止から3年が経過し、SNSでのセルフプロモーションもほぼゼロ、普段は別の仕事をしていて(藤枝の本業はデザイナー)、基本的に作品の発表時にしか露出のないスパングルに対し、身一つで全国を回ってライブ活動を続け、UstreamやTwitterを駆使し、ファンとのコミュニケーションを楽しむ宮内。このように両者の違いは明確なのだが、音楽業界及び、音楽のあり方そのものが変容を続ける中、あくまで独自のスタンスを保っているという意味で、この二組は共振することができるのだ。この日は藤枝が持ち前のプロデューサー気質を発揮して、宮内の活動を解析し、今後の展望までも披露。もちろん、その語り口からはスパングルの活動理念もはっきりと見えてくる、有意義な対談になったと思う。
活動的には……オフシーズン(笑)。(藤枝)
―まずは、スパングルの近況からおうかがいしたいのですが。
藤枝:バンドが今年で15周年なので、ホントは年明けぐらいにベスト盤を出せればいいと思ってたんです。でも、年末に大坪さんに子どもが生まれて、今は産休期間で。
―「New Season」に入ったかと思いきや(笑)。
藤枝:そう、前作『New Season』をリリースした途端に大坪さんに子供ができ(笑)。なので活動的には……オフシーズン(笑)。でもせっかくベストを作るなら、ただ曲をまとめただけよりは、何かオマケっぽいのがあった方がいいと思って、DISC2を作りました。
―そのDISC2の方に、宮内さんがリミックスで参加されていますね。
藤枝:宮内君と僕は同郷なんです。僕はもともと千葉の房総の方の出身なんですけど、ここ何年かは千葉市に住んでて、そしたらよく行ってたカフェの近くの花屋で宮内君が働いてたことを知って。
宮内:3、4年前に1年間ぐらい働いてました。街のお花屋さんみたいな感じのところで。3rdアルバムを出すぐらいまでですかね。
藤枝:宮内君が千葉でライブをやったのを見に行ったときに、ライブのMCでこの話を聞いて驚きましたね。僕、その花屋の前をかなり通ってたんで(笑)。ちょうどその前後に宮内君が所属してるRallyeってレーベルから、京都の恵文社と「本とコーヒー」がテーマのカバーコンピを作るから、「宮内君の“読書”をカバーしませんか?」って頼まれてて。聴いたら、ミニマルなギターアレンジのめちゃめちゃいい曲で、さらに星野源くんが歌ってて、「これ、やりづら!」って思って(笑)。
―(笑)。
藤枝:なので、そのカバーはピアノ1本で大坪さんが歌うっていう、真逆のフェミニンな感じにしたんです。
宮内:そのカバーをレコーディングした日に僕のライブに来てくれたんですよね?
藤枝:そう、そのとき初めてちゃんと宮内君と話したんです。
―それって去年ですよね? もっと以前からお知り合いかと思ってました。
宮内:僕はカバーの音源を先に聴けるものだと思っていたので、まさか先にメンバーにお会いできるとは思いませんでした。しかも、千葉で(笑)。
藤枝:千葉にミュージシャンの友達がいなかったんで、嬉しかったんですよね。
―千葉だったら他にもミュージシャンはいそうなイメージですけどね。
藤枝:勿論、バンドとかで有名な人はいて、それこそX JAPANとか……。「JAPAN」って、たぶんローカル色を隠したいんだと思うんですけど(笑)、hide以外の初期メンバーはみんな千葉出身だし、氣志團も木更津出身のメンバーが多いですよね。
宮内:BUMP OF CHICKENもそうですよね。
―すごく遠い人たちばっかりですね(笑)。
藤枝:そう、何のつながりもない(笑)。だから、宮内君はちょうどよかったというか。彼が最近引っ越した先もまたいい場所で。
宮内:何にもないところなんですけどね(笑)。でも、近くに川村記念美術館っていうところがあって、敷地内に公園や大きな池があるので、たまに行って美術館に入らない時は園内でのんびりしたりしてます(笑)。
藤枝:もしあの辺りに中学生が住んでたら、それこそBUMP OF CHICKENみたいに、星眺めながら曲作りそう。天体観測する以外にすることがないんじゃないかっていうぐらい静かなところで(笑)。でも、宮内君があの環境で音楽を作ってるのがすごくいいなって思って。録音してたら、虫が鳴く声が入っちゃったりしそうだけど……(笑)。
宮内:近くに田んぼがあるので、最近夜はカエルがすごいんですよ。なので、夜は編集する時間で、昼にレコーディングするっていう。
左から:宮内優里、藤枝憲(Spangle call Lilli line)
―その出会いをきっかけに、今回のリミックスの話にもつながったわけですね。
藤枝:宮内君の音楽の作り方が面白いなっていうのは前から思ってたんだけど、ライブを見て、この人はリミックス体質だなって思って。
宮内:リミックス大好きです。自分の曲を作るより、リミックスの方が好きです(笑)。
藤枝:今回のリミックスは割と緻密に練ってるよね?
宮内:いや、自分の中でのプロセスがある程度固まってて、実はそんなに一つひとつ緻密に作ってるわけじゃないんです。ラフにやってから、気になるところは修正するんですけど。
藤枝:でも、ちゃんとメリハリのある構成になってますよね。宮内君のライブって難しいことやってるじゃないですか? 一人でループを作ってライブをやるのって、かなりの制限もあるし曲の構成を作っていくのが大変だろうなって。
宮内:確かにワンパターンになりがちなんですよね。
藤枝:宮内君のライブって、曲をやってくうちにだんだん変わるのがいいですよね。毎回、曲が進化していって、もう何の曲かわかんなくなるっていう(笑)。リミックスをお願いしたときに「いつも通りやります」って言ってたのは、ライブみたいな感じでやるってことだったんですか?
宮内:ライブみたいにリミックスを作るというより、僕の場合は、レコーディング作業を無理やり縮めたのがライブなんです。だから、ホントはライブも1曲15分ぐらいかけてのんびりやりたいんですけど、それだとお客さんが飽きちゃうので、無理やり5分ぐらいでなんとか形にするんです。
「宮内優里」っていう別の人がいるみたいな感じなんですよね。本名なんだけど、芸名でやってるような。(宮内)
―ライブという点では、お二人は活動のスタンスは全く違いますもんね。
藤枝:僕らは腰が重くてしょうがないです(笑)。1、2か月先のスケジュールが決まるのが嫌なんですよね。昔は知り合いのライブを見てから、夜中に本業のデザイナーの仕事をしたり、平気で徹夜したりしてたんですけど、やっぱりそれが難しくなってきて。音楽も、決めた時間でパッと集まって、ガッと作る方が今はいいんです。宮内君は常に一人で作るのって、オンオフとかどうしてますか?
宮内:切り替えは難しいですね。もちろん、曲作りをやってない時間もあるんですけど、Ustreamとか、いわゆるCDを作るのとライブをする以外の活動を考えるのが好きなので、そういうのを毎日ぼんやり考えてます。最近レーベルメイトに「優里さんって、あんまりミュージシャンっぽくないですよね」って言われて。多分、いい意味でですけど(笑)。実際、曲を作るのは好きなんですけど、楽器を練習することがホントにできないんですよ。運指練習とか……。
藤枝:僕も大っ嫌いです。だから、自分ができる範囲のことをやる(笑)。でも、曲を作るときはとりあえず楽器を触る感じですか?
宮内:今回のリミックスもそうなんですけど、「こういうリミックスにしよう」っていうアイデアは全くないまま挑むんですよ。とりあえず、一番盛り上がるところを最初に作るんです。サビのところをずっとループさせて聴きながら、「このギター合うかな?」ってずっとやって、「これだ!」っていうのが出てきたら、それを録って、またループさせて、それをどんどん足していくっていう。
藤枝:でも、それってライブだね。
宮内:ああ……そうかもしれないです。最初はレコーディングを無理やりライブにしてたんですけど、もしかしたら今はライブのやり方で作るようになってるのかもしれない。
藤枝:じゃあ、ライブと曲作りはそんなに遠くないんですね。
宮内:でも、実際お客さんの前で演奏するときには、練習したものを見せるので、実はあんまり即興じゃないんです。僕のライブって、とにかく脳をすごく使うんです。クリックにきちんと合わせないといけないし、アレンジも考えながらやるので。
藤枝:間違えることってないんですか?
宮内:あります、あります。バーッて録っていって、「あ、あれ録ってなかった!」みたいな(笑)。
藤枝:メモってるわけじゃないんですか?
宮内:メモしてそれ通りにやろうとすると、間違えた時にパニックになるんですよ。だから、ゆるくしておくんです。たぶん、忘れたってことは、それはなくてもいいってことなんですよね。欲しくなったら、後で入れてもいいわけですし。でも、大体のざっくりした順番は体で覚えておきたいので、その練習は結構してます。
藤枝:じゃあ、あのライブの前に一人で入念なリハーサルをやってるんだ。その場で飄々とアドリブでやってるように見えるけどね。
宮内:実は結構練習してるんです(笑)。でも、似たようなアレンジになりがちなので、最近はUstreamでは即興だけでやるライブにして、即興のトレーニングをしてます。
藤枝:そういう活動スタイルが今っぽいですよね。Ustreamも使うし、Twitterも使うし、インターネットを使い倒してる! スパングルは何もやってないですからね……(笑)。
宮内:僕はお客さんと会話したりするのが好きなんでしょうね。インターネットで何かをアップすると、お客さんが反応してくれて、またそれに返してっていう。
藤枝:ライブも、MCの方が好きなんじゃないかっていう。
宮内:そうです。最終的には、半分以上MCにしたいんです(笑)。それを見たくてお客さんが来てくれるようになったら、一番いいなと思ってます。
藤枝:それ、50歳ぐらいになったら、だんだん熟練してきて半分漫談みたいになりそう(笑)。
―スパングルはライブ活動を休止してから3年経ちましたが、藤枝さんは「そろそろライブやりたいな」って思ったりしませんか?
藤枝:ないですね。
宮内:はっきりしてていいですね(笑)。
藤枝:人前に出たくないんです。Twitterも、むしろ「知らない人とつながってたまるか」って思ってます。サブアカで情報を得るのは全然いいんですけど、基本つながりたくないんです(笑)。「返事しなきゃ」とか、「知り合いの情報リツイートしてあげようかな」とか、そういう政治的なことがすごく苦手で、だったら割り切って見るだけがいい。自分の名前でSNSをやったことがないです。
宮内:僕の場合は「宮内優里」っていうどこか別の人がいるみたいな感じもありますね。自分の100%パーソナルでSNSをやったことは僕もないです。本名なんですけど、半分芸名でやってるような。
藤枝:宮内君は、プロモーションツールとしてのSNSの使い方が上手いよね。スパングルは誰もやろうとしないし、オフシーズンが長いから、そもそも言いたいこともないんですよ……(笑)。あとライブ活動もそうなんですけど、僕は本業がデザイナーなので、毎日締め切りとの闘いなんで、クライアントに「お前仕事しろよ」って思われるのが嫌で(笑)。
―本業とのしがらみが(笑)。
藤枝:まあライブって、やるならある程度まとめてやっていかないと意味がないし、スパングルはコストパフォーマンスが悪いんですよね。いいライブができるような状態をキープするためには、ちゃんとリハをしていかないといけないし。だから宮内君の、一人で「はいよっ!」って日本の端まで行ける感じがすごく羨ましいんです。
宮内:コストパフォーマンスはめちゃめちゃいいと思います(笑)。リハーサルスタジオも家ですし、最近はスピーカーも自分の車に積んで会場に行くので、電源だけあれば、ホントにどこでもできる状態で。
藤枝:究極的にはギター1本で、弾き語りで歌ってもいいんじゃないかって気がしますね。
織田裕二と松崎しげるのスタンスがすごくいいなと思って……(笑)。(藤枝)
宮内:「歌わないんですか?」っていうのはよく言われます。前のCINRAの取材でもそんな話しましたよね(笑)。
―はい、よく覚えてます(笑)。
藤枝:そこは一線があるんですか?
宮内:本音を言えば、やってみたいです。でも、踏ん切りがつかないというか、急にやり始めて「こんなもんか」って思われるのが嫌なんですよ(笑)。やっぱり、歌う意味っていうのが必要だと思ってて、ただ単に僕がやりたいからやって、お客さんに「別に聴きたくない」って思われるんだったら、それは僕が一人で家でやってればいいことだと思うんです。だから、実はこっそり練習はしてるんですけど、まだ見せられないですね。
藤枝:確かにそれをやり始めると幅が広がるけど、逆に言うと、「宮内君と言えばこれ」っていうスタイルはちょっと崩れるよね。ワン&オンリーな、1つに特化した感じもいいなって思うんですよね。宮内君のライブってアートっぽいし。
宮内:アートっぽいですか?
藤枝:それしかやらない感じが。普通に考えたらバンドでやっちゃうところを一人でやるというか、一人でやれるようにするというか。……そもそも、どうして一人なんですか?
宮内:根本的に、団体行動が苦手なんだと思います。いい方向にみんなで向かってるときは楽しいんですけど、「違うかな」って思ったときに、気が弱いので言えないんですよ。それでだんだんストレスがたまっていって、「やめます」みたいになっちゃうので(笑)。
藤枝:意外と頑固なんだ。
宮内:「自分で練習してやれるようになろう」って発想に行っちゃうんですよね。で、「あ、これ一人でできた」「これも一人でできた」って、最終的に「一人でも意外といけるな」ってなったら、気が楽になっちゃったんです。それこそ、他の人のスケジュールに合わせることもないし、締め切りとライブの日だけちゃんと見てれば、「今日はもうやめよう」でもいいし、「今日時間空いたから一気にやっちゃおう」もできるし。
藤枝:バンドはそれができないからね。腰が重いんですよね。
宮内:でも、裏を返すと全部を一人でケアしなきゃいけないから、メールの返信から運転から、全部自分でやらなくちゃいけないし、僕が風邪をひいて寝込んじゃったら全部止まっちゃいます。ただ、そういうことをいろいろ考えても、「一人はいいな」って思っちゃうんです。
―でも、宮内さんは作品ごとに他のミュージシャンとのコラボレーションもされてますよね。
宮内:外から入れて新しいものを作るのも、刺激があってもちろん好きなんですけど、思ってもなかったアイデアが自分自身から出てきたときはなんか特別な嬉しさがあります。ホントに自己満足なんですけど。そうやって割と一人よがりになりがちなところを、レーベル(Rallye)のオーナーが「それもいいけどさ、この人とやってみようよ」っていろいろな方を紹介してくれるので、レーベルに可能性を広げてもらってる部分も大いにありますね。
藤枝:人とやるときは、人の長所を利用するというか、「自分にない筋肉」みたいなのを使えるからね。
―それこそ、今回のスパングルのベスト盤にしても、DISC2はもちろん、DISC1もコラボレーションの歴史だと言えますよね。
藤枝:そうなんですよね。基本1stアルバム以降全部プロデューサーを立ててるし、常にメンバーよりサポートの人数の方が多いっていう(笑)。それって、さっき言ったようにスケジュールを組むのは大変なんですけど、現場に人数が多いと自分でコントロールできない部分が多いので、それは逆にすごくいいなって思うんです。「ちょっと違うな」と思いつつも、次の日に聴いたらよかったり。今回のDISC2も、元の曲は同じはずなのにホントにバラバラで、そのバラバラな感じがいいなと思って。全部コントロールしちゃうと、想像通りのものになるだけですからね。
宮内:これ全部同じ曲ってすごいですよね。
藤枝:あの……織田裕二がやってましたよね?
―あ、“Love Somebody”のやつですよね(笑)。
藤枝:そうです。あと、松崎しげるも“愛のメモリー”だけ14曲っていうアルバムを作ってて、その二人のスタンスがバカっぽくてすごくいいなと思って(笑)。
―もうちょっと近い人で同じことやってる人いそうですけどね(笑)。
藤枝:その二人のアルバムはニュースソースを見て笑っちゃったんですよ。「これ、ほんとに聴きたいか?」と思って(笑)。でも、ベストアルバムのDISC2でやるなら面白くていいかなと。それで全曲上がって聴いたら、あまりにもバラバラなんで普通にアルバムみたいになってて。
宮内:どの曲も全然違いますよね。
藤枝:リアレンジの3曲は、最初は大坪さんでやるつもりで何となく準備してたんですけど、大坪さんの出産が早まって歌えなくなっちゃって、急遽面白そうな人に声をかけたんです。「ボーカルが違う」ってこういうときじゃないとできないから、せっかくだから楽しもうと思って。タイプが違う人を選んで、その人に合わせて、普段自分たちがやらないようなところまで変えてみたりして。ちょうど、大坪さんが歌ってるのと他の人が歌ってるのが交互になってます。バランス的にも1個のアルバム、『nano album』みたいになって、ベストのタイミングでこれができてよかったですね。
もう「続ける」ってことしか考えてないです。だから、ストレスを感じたり、自分が音楽を嫌いになっちゃいそうなことはやらない。(藤枝)
藤枝:さっきもちょっと言ったけど、宮内君はライブで必ず1曲歌うといいと思うんですよね。すごくいい歌を歌いそうな気がする。
宮内:今年は夏から活動を少し緩めようと思ってて、家でいろいろ練習しようと思ってるので、ちょっと歌も試してみるつもりです。
藤枝:あと、もうちょっとダンスミュージックっぽいのも聴いてみたいですね。フェスで昼間ぐらいの感じで呼ばれるんだけど、最後の方にはダンスっぽくなるのはどう?
宮内:ちょっと憧れますね、かっこよくつまみ動かしたり(笑)。
藤枝:自分で生で音を入れながら、ダンスミュージックっぽくもできたら、すごくフェス需要がありそうな気がするなあ。なんか、人のことは好き勝手にいうよね(笑)。
―藤枝さん、宮内さんのプロデューサーみたいですね(笑)。
宮内:確かに、僕のライブって座って見てもらってて、僕もそれを求めてるんです。ただ小さい会場だと休憩挟んで2時間ぐらいやることもあるんですけど、盛り上がる瞬間がないんですよね。それこそRallyeのオーナーにも「ガーンと盛り上がるのが1個あったら、ライブの見応えが変わるよね」って言われたりしてて。じゃあ、それもUstreamで試してみようかな(笑)。
―ニコ動の「歌ってみた」とか「踊ってみた」から始めるってどうですか?(笑)
宮内:それも面白いかもしれないですね(笑)。今ってどこの会場でも似たようなセットリストで、いつも通りやるんですけど、今日はカフェだから弾き語り、今日はクラブっぽい場所だからがっつりとか、そういうバリエーションができたらいいですよね……まだいろいろやることありますね(笑)。
藤枝:あと映像の人と一緒にやるのも面白そう。宮内君は音楽の人だけじゃなくコラボができるから。
宮内:最近音楽以外のコラボが面白くて、この間はお菓子屋さんとイベントやったんですよ。ライブをした後にその場で曲作りをしたんですけど、実際にお菓子を作ってる一連の作業、つまり泡だて器で混ぜたり、オーブンで焼いたりっていう音を曲に取り込んで、お菓子ができあがるときに僕の曲もできあがるという作り方で。それをその場でサーバにアップロードして、スマートフォンでダウンロードして、お菓子食べながら聴けるっていう。
藤枝:面白いね。それを進化させて、自分で料理もしたら? 料理作りつつ、曲も作る。他にそんな人いないからテレビにも出られるね(笑)。
―漁港(バンド)のアップデート版ですね(笑)。
宮内:マグロ解体するみたいな(笑)。
藤枝:全国回って、その土地のもので料理と音楽を作って、だんだんそっちが本職になって、最後千葉にお店出してよ(笑)。絶対に呑みにいくから。
宮内:最終的には千葉なんですね(笑)。でもそうやって、今までと違うお客さんに出会って、音楽が広がるのは嬉しいですね。
―今日は途中でRallyeの名前が何度か挙がりましたが、今回のスパングルのアルバムには“felicity”(ORANGE JUICEのカバー)が入っているように、今のスパングルの活動も、felicityというレーベルとの関係性ありきのものだと思うんですね。
藤枝:それはそうですね。レーベルが常にあって、出したいときに出せるっていうのはすごく助かってます。インディーズもメジャーも関係なく、「このレーベルから出したい」って思えるレーベルって今はほとんどないですし、(スタッフに向かって)ホントにこの先も末永く……。
―(笑)。
藤枝:ここまで来ると、ホントに長くやりたいんですよね。ベストアルバム区切りっていうわけでもないけど、バンドはもう3周目ぐらいになってる感じがするので、50とか60になっても同じスタンスでやってるってことが一番大事で、もう「続ける」ってことしか考えてないです。だから、無理なくできるように、ストレスを感じたり、自分が音楽を嫌いになっちゃいそうなことはやらない。ライブもやりたいと思ったときにやるっていうのがよくて、そういうスタンスでやらせてもらえてるし、やれてるっていうのは、すごくいいなって。宮内君も音楽はずっと続けそうですよね。
宮内:僕ももうやめられないですね。やめたらどうしていいかわかんないです(笑)。
藤枝:僕それが大事な気がして、レコード会社や事務所の契約が切れた途端に音楽をやめる人っているけど、それでやめるんだったら、最初からやんなきゃいいのにって思う。それで続けられなくなるのって、ちょっとおかしいと思うんですよね。「どうしてもやめられずに続いちゃう」っていうことが、一番大事だと思って。まあ、結成15周年とはいえ、スパングルはホントにマイペースでやってきたんで、ギュっと濃縮したら3年ぐらいだと思うんですけど(笑)。
―(笑)。
藤枝:スパングルは疲弊しないようにしてきたから続けてこれたんだと思うんですね。でも逆に、それこそ七尾(旅人)君みたいに、人生と一体化してるというか、「創作しないと死ぬ」みたいな感じの人はジャンル関係なく、いいなって思いますね。
- イベント情報
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- 『くつやのおんがく』
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2013年6月23日(日)OPEN 14:00 / START 15:00
会場:埼玉県 senkiya
出演:宮内優里
料金:前売3,500円(大人) 1,000円(小学生) 無料(小学生未満)
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- 『こうぼうのおんがく vol.3』
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第1部『カ本をつくろう ワークショップ』
2013年7月7日(日)OPEN 13:00〜16:00
第2部『ライブ+工房の音を使って音楽制作+トーク』
2013年7月7日(日)OPEN 16:00 / START 17:00
会場:東京都 御徒町WOODWORK
出演:宮内優里
料金:1部(ワークショップ)+2部(ライブ)チケット7,000円(ドリンク別)
2部(ライブ)のみチケット 3,000円(ドリンク別)
- プロフィール
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- Spangle call Lilli line(スパングル コール リリ ライン)
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1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライブアルバムと、ベストアルバム2枚をリリース。数々のコンピレーションアルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイドプロジェクト等も精力的に活動。
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- 宮内優里(みやうち ゆうり)
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音楽家。1983年、和太鼓奏者の父とジャズシンガーの母のもとに生まれる。これまでに5作品のアルバムをRallye Labelよりリリース。アルバムには高橋幸宏、原田知世、小山田圭吾、星野源等をはじめ、国内外問わず様々なアーティストとのコラボレーション作品を収録。ライブではギターと打楽器を中心に様々な楽器の音をその場でサンプリング/ループし、たった一人で演奏する”音の実験室”ともいうべき空間を表現する。
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