音楽、映画、マンガ、アート……いろんなカルチャーにハマってきた人にとって、14歳というのは人生に影響を与えたアーティストとの衝撃的な出会いなど、なにかしらの原体験や思い出が詰まった年齢ではないだろうか? そしてその「14歳」のあり方も時代とともに変化してきているようだ。
この4月、アイドルグループ「Fullfull☆Pocket」からソロデビューする花谷麻妃も、中学3年生になったばかりの14歳。「歌謡曲」と「可愛い女子」と「アニメ」が大好きで、ボーカロイドで作曲したり、自作PCを組み上げるという変わり種の趣味を持つ、次世代の才能だ。そしてそんな彼女を、テレビアニメ『くまみこ』(TOKYO MX系)の主題歌“だって、ギュってして。”でサウンドプロデュースしたのが、ボンジュール鈴木。同シングルの制作を経て、ボンジュール鈴木が花谷に見出した規格外の才能、そしてお互いが共鳴し生み出されたクリエイティビティーとは一体どのようなものだったのか? 二人に話を訊いた。
「可愛い」だけなら、ソツなくやれると思うんですけど、毒をちょっと入れるだけで、聴き流せない世界観が現れる。(ボンジュール鈴木)
―『だって、ギュってして。』は花谷さんのソロデビューシングルになりますが、一人でのレコーディングはいかがでしたか?
花谷:周りにメンバーがいないので、すべて自分でやらないといけないっていう不安が大きかったんですけど、レコーディングが終わって、ステージに立ったとき、グループでの活動とはまた違った達成感を得ることができて、すごく楽しかったです。
鈴木:若いのにいろんな経験をされている人なので、やっぱりすごかったですね。最初のレコーディングからちゃんと歌えていたし、音程も取れていたのにはビックリしました。で、お年を聞いたら14歳になったばっかりということで、さらに驚いて。
花谷:ボンジュールさんは、レコーディングのときもすごく優しかったんです。歌ってるときに「こんな感じで~」とか歌いながら教えてくださったりして。
鈴木:いや……なにもしてあげられなかったよね、ごめんなさい! 私が教えようなんて思ってもいなかったです、全部でき上がっていたんですもん。表現力も抜群だったから言うことなしでした。「あ、素晴らしいな」って。
花谷:今回、女の子全開の思いっきり可愛い曲が歌えてすごくうれしかったんです。普段歌っている曲はカッコいい、爽やか系の曲が多いので。
鈴木:じつは曲を作る前に、麻妃ちゃんのことを少し調べさせてもらって、昔のアニメや歌謡曲が好きってことを知ったんです。だから、その辺は意識して、1970年代の歌謡曲やフレンチポップスのエッセンスを入れて作りましたね。
花谷:そこまで考えて作っていただいたなんて、感激です。
鈴木:こういう言い方をすると変態っぽく聞こえるかもしれないんですけど、私、可愛い女の子が大好きなんです。フレンチロリータ的な世界のなかで「最高の可愛さ」ってなんだろう? って考えたとき、私だと音の作り方を工夫して、ふわふわ歌ったりするんですが、麻妃ちゃんみたいに等身大の14歳の女の子が、素の部分をキラキラ輝かせて歌うのが最強なんじゃないかと。だからレコーディングのときはすごく新鮮な気持ちで、ドキドキしてしまいましたね。あ、ごめんなさい、変なことを……。
花谷:いや、私も美少女が大好きですよ(笑)。好きになるものが、ことごとく「可愛い」感じなんです。私もこういう風になりたいっていう「憧れ」なんだと思います。
―お二人共から「可愛い」へのこだわりを感じますが、その正体ってなんでしょう?
鈴木:私は「可愛い」にプラスして「毒」が入ってるものが一番好きなんです。ただ可愛いだけでもいいんですけど、毒成分を少し入れることでより可愛くなる。私が好きなフレンチロリータの世界ってまさにそれなので。今回の曲のAメロでも、麻妃ちゃんや『くまみこ』の主人公・雨宿まちちゃんのような、中学生の女の子の独り言をイメージした歌い方をしてもらったのもある種の毒だったり。Dメロは「こんなこと言われたら、たまらなくキュンってしちゃう!」みたいな、女の子の小悪魔的毒を歌詞にいっぱいトッピングしてみました。
―花谷さんにも「毒」はあります?
鈴木:(花谷さんの顔をちらっと見て)ごめんね……! 可愛い毒がちょこっとだけ(笑)。でも、女の子はみんなどこかに持ってると思いますけどね。「可愛い」だけの音だったら、サラリとソツなくやれると思うんですけど、毒をちょっと入れるだけで、聴き流せない世界観が現れるんです。そこに芸術性を一番感じますね。だからいまはすごく純粋な女の子だけど、これからの活躍が楽しみです。
花谷:私は、可愛い女の子を見ていると癒されるんですよ。男の子って「◯◯ちゃんは、俺の嫁!」とか言うじゃないですか? その気持ち、めちゃくちゃわかります。アニメだと「一見強いお姉さん風だけど、じつはドジ」みたいなキャラクターが結構好きですね。
作ってる曲は、世界の闇……って言えばいいのかな? 家族にも一切聴かせたことのない、完全に趣味の世界です。(花谷)
―花谷さんは、ボーカロイドを使って作曲もされるそうですね。
花谷:そうなんです。昨日も夜中までずっとやってて、夢中になってあまり眠れませんでした。
鈴木:こんな可愛い子が14歳でDTMとは……。私は3歳から一応クラシックピアノを弾いてましたが、DTMをはじめたのは4年くらい前です。麻妃ちゃんはかなり早熟ですよね。
花谷:いや、でも、皆さんに聴かせられるような曲は作ってないんですよ。どうやったらボンジュールさんみたいに可愛く作れるようになりますか?
鈴木:いや、麻妃ちゃんが等身大で打ち込んだら、絶対可愛くできると思うけどな……。私の場合は、家にいる大きなプードルを抱っこしながら曲を作ってて。動物が昔から好きで、いまの部屋は動物園になっているんです。1メートル越えのクマのぬいぐるみとかキリンが2匹とかいて。そういうものに囲まれながら、「自分はこの世のものではない……ふわふわ王国のお姫様なんだ」くらいイメージしないと、ああいうのは作れないんですよね。リアル世界のことは一切考えないで、動物の世界に没入するんです(笑)。
―花谷さんが等身大で打ち込んだら、どんな曲が生まれそうですか?
花谷:いま作ってるのは、世界の闇……って言えばいいのかな? うまく説明できないんですけど。家族にも一切聴かせたことなくて。完全に趣味の世界です。
鈴木:闇?(笑) ……麻妃ちゃん、やっぱりちょっと毒があるね。いいなぁ、他には?
花谷:学校の先生にむちゃくちゃな理由で怒られたときに「世界は理不尽なことでできている」と思って、曲を作ったことがあります。サラリーマンの方もそうだって聞きますけど、理不尽なことばかりですからね、この世の中は。だから、それを曲にしたくて。
鈴木:末恐ろしいですね(笑)。PCも自作するって伺ったんですけど、秋葉原には一人で行ったりするの?
花谷:お父さんと一緒に行きます。友達も誘うんですけど、誰もついてきてくれない……。秋葉原は、ボークスとかラジオ会館に行きますね。グッズや、フィギュアを見たり、PCのパーツを見たり、気づいたら2時間くらい経っちゃう。ゲームも好きなので、音も映像もハイクオリティーな自分だけの一台を作ってます。
―それって同級生のなかでは普通なんですか? 自分はちょっと周りと違うなって思ったりします?
花谷:毎日、思ってますね(苦笑)。全然友達もいないし。中二病入ってるなって思うんですけど。
鈴木:って、言ってる麻妃ちゃんも中三じゃないですか(笑)。
花谷:好きなアニメのキャラクターのセリフを学校で言っても、誰も拾ってくれないんです。特に女の子からは相手にされないですね。アニメが好きな男の子とかは「あのキャラな」とか言ってくれたりするんですけど。
鈴木:コイバナとかしたりします?
花谷:ただ聞いてるだけで、全然入っていけないんですよね。一方的に話しかけられるんですけど、全然わからない。とりあえず「へぇ~!」って言うしかない。
鈴木:中三にもなると付き合いはじめる子たちもいるでしょ?
花谷:学校なのにイチャイチャする人たちがいるんですよ。そういうときは、ラノベ(ライトノベル)とか読んでます(笑)。
鈴木:なんか男子的な考え方ですね。女子からモテそう。可愛いし、さっぱりしてるから、内に秘める強さにグッとくる後輩とかいそうですね。憧れられているんじゃないかな? 私が後輩だったら「マキさまぁああ~」ってなってると思う。
―ちなみにボンジュールさんは14歳のとき、どんなことを考えてました? ご自分の思春期と比べて、重なる部分はありますか?
鈴木:私も14歳の頃は、どうやったら犬に好かれるんだろう? とか、どうやったら動物と友達になれるんだろう? とか、そういうことばっかり考えてたから人のこと言えないけど……やっぱり、すごいですよね。
アイドルとして活動しているときは、アニメのなかのアイドルになった気分でただうれしい。(花谷)
―女の子らしからぬ趣味を持っている花谷さんですが、アイドルとして活動していることに疑問を感じたりはしませんか?
花谷:それは感じたことないです。活動しているときは、アニメのなかのアイドルになった気分でただただうれしいんです。可愛い女の子好きとして、他のアイドルの方たちも大好きなので、可愛い衣装とか見ると「これはあの人に着てほしいなぁ」とか思いますね。それに、アニメの話ができるファンの方も多いので、「ずっと話してたいなぁ」って思います。
―完全にプロデューサー目線なんですね。今回のシングル“だって、ギュってして。”はテレビアニメ『くまみこ』の主題歌としても放送されています。いまさら愚問ですが、もちろんお二人はアニメがお好きということで。
鈴木:大好きですよ。もともと、アニメの作曲家になりたくて音楽の勉強をはじめたので。だから今回、主題歌を書かせていただいて幸せです。『くまみこ』のイメージも曲のなかにかなり入れました。
花谷:私も大好きです。『くまみこ』も本当に好きな作品なので関われてうれしいです。昔から声優になるのが夢だったんですけど、じつはこの作品でそれが叶ったので、今後の話数でぜひ見て欲しいです。
―お二人は、これからどういう活動していきたいですか?
花谷:全然、想像できないですね……。礼儀正しく、謙虚な大人になりたいって思います。謙虚じゃないとやっぱり嫌われちゃうから。作曲ももっと頑張っていきたいですね。こういうこと言うの恥ずかしいんですけど、本当にボンジュールさんみたいな曲を作れるようになりたいんです。
鈴木:なんか言わせたみたいになっちゃったよね……ごめんね。恥ずかしい(笑)。
花谷:本当ですよ!(笑) あとは、声優のお仕事をもっとやっていきたいですし、アニソンもまだまだ歌いたいですね。
―ボンジュールさんはいかがですか?
鈴木:私もアニメの音楽に関わりたくて日本に帰ってきたので、いろんな言語で、いろんな国に向けて発信したいなと思っています。麻妃ちゃんの声は芯がしっかりしているので、アニソンにもすごく向いていると思います。
―今後、もしかすると、作詞・作曲を花谷さん、編曲・プロデュースをボンジュールさんなんていう夢のコラボも見られるかも……?
鈴木:そんなことになったらうれしいですね。ぜひ、麻妃ちゃんの作っている「闇の曲」もいつか聴かせてもらえたらって思います。
花谷:ボンジュールさんに聴いていただけるレベルまで、なんとか頑張ってボカロを調教したいと思います!
- リリース情報
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- 花谷麻妃(Fullfull☆Pocket)
『だって、ギュってして。』初回限定盤(CD+DVD) -
2016年4月27日(水)発売
価格:1,836円(税込)
ZMCZ-10624[CD]
1. だって、ギュってして。
2. 中学三年生
3. 梔子リアリー
4. だって、ギュってして。(instrumental)
5. 梔子リアリー(instrumental)
[DVD]
1. だって、ギュってして。(Music Video)
2. だって、ギュってして。(Music Video Making)
- 花谷麻妃(Fullfull☆Pocket)
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- 花谷麻妃(Fullfull☆Pocket)
『だって、ギュってして。』通常盤(CD) -
2016年4月27日(水)発売
価格:1,296円(税込)
ZMCZ-106251. だって、ギュってして。
2. 中学三年生
3. 梔子リアリー
4. だって、ギュってして。(instrumental)
5. 梔子リアリー(instrumental)
- 花谷麻妃(Fullfull☆Pocket)
- プロフィール
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- 花谷麻妃 (はなたに まき)
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2002年3月16日生まれ、中学2年⽣の14歳。アイドルグループ「Fullfull☆Pocket」のメンバー。好きなアニメは美少女や日常系、自作PC作り、DTMいじりも趣味、週1で秋葉原に通うオタク少女。父親の影響で昭和歌謡にはまり、ギターで弾き語りに挑戦中。同じく父親の影響で自衛隊に興味を持ち、演習観覧にも通う。中学では「将来、自衛隊で役に立つから」と剣道部に入部、いまでは初段で大将に。好きな歌は“Paint It Black”(The Rolling Stones)、“かもめが翔んだ日”(渡辺真知子)。好きなアーティストは、八神純子、Sting、米津玄師、Goose house など。
- ボンジュール鈴木 (ぼんじゅーる すずき)
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作詞 / 作曲 / 編曲、歌唱、演奏、ミックス、マスタリングまでを一人で行う、女性マルチアーティスト、サウンドプロデューサー。3歳よりクラシックピアノをはじめ、ジャズ歌手だった母の影響で幼少期から様々な音楽に触れ、作曲活動をスタート。エレクトロニカ、ヒップホップ、クラシック、教会音楽からの影響が色濃く出たサウンドには「透明感」と「深遠な響き」が共存。中毒性のある独特のロリータウィスパーボイスと絡み合うファンタジックで不思議なサウンドは、音楽シーンの中でも一際異彩を放っている。 2015年1月、アニメ『ユリ熊嵐』(TOKYO MX系)のオープニング曲”あの森で待ってる”で作詞作曲編曲、歌を担当。今年1月、アニメ『石膏ボーイズ』(TOKYO MX系)のテーマ曲“星空ランデブー”では作詞を、4月放送開始のアニメ『くまみこ』(TOKYO MX系)でオープニング曲『だって、ギュってして。』の作詞作曲編曲、サウンドプロデュースを担当、『宇宙パトロールルル子』(TOKYO MX系)でTeddyLoid氏のエンディング曲にフィーチャリングで参加した。
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