6月29日から日本科学未来館で開催されるVR(バーチャルリアリティー)音楽体験展示プロジェクト『Björk Digital―音楽のVR・18日間の実験』のために来日しているビョークに、対面で直接話を訊く貴重な機会を得ることができた。
真っ赤なボディースーツに真っ赤なフワフワした飾りのついた普段着(!)に身を包み、筆者が座っていたソファーの端にちょんと腰掛けた、相変わらず妖精のような容姿と仕草のビョーク。その周囲には、非現実的な空気が漂っていたが、いざ話を始めると極めて現実的で具体的。恐ろしいほどの頭の回転の速さと率直さで、筆者の質問にすべて答えてくれた。その会話の内容は、今回の展示『Björk Digital』と、そのベースとなった昨年のアルバム『Vulnicura』の話にとどまらず、自身のキャリアを総括するような音楽論から、2016年の音楽シーンの話まで多岐にわたった。
アーティストというものは皆、多かれ少なかれ理想主義的なものだが、1993年のソロデビューから23年間、音楽シーンにおいて誰よりも徹底して理想主義を貫いてきた彼女は、その理想を現実のものとすることにかけても、誰よりも情熱的であり、理性的であることがわかるだろう。
今、かなり確かな手応えを感じているの。これはもう、いろいろな展示物の一つとしてではなく、VRそのものをメインにしてみんなに体験してもらうのが一番いいって。
―今回、日本科学未来館で開催される『Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験』は、アートを探求するための実験なのか、あるいはエンターテイメントの新しい形の提示なのか、そのどちらの要素が強いものなのでしょうか?
ビョーク:その両方というのが、一番しっくりくると思う。私にとって、VRという新技術はミュージックビデオのとても自然な発展形なの。昨年、MoMA(ニューヨーク近代美術館)で回顧展をやった時に初めてやってみたんだけど、その時に、私の音楽、私のアートというのは、美術館や博物館の中で展示するものではないのかなって思ったのね。
ビョーク:そこからまたいろいろ試行錯誤をして、曲も増えて、今、かなり確かな手応えを感じているの。これはもう、いろいろな展示物の一つとしてではなく、VRそのものをメインにしてみんなに体験してもらうのが一番いいって。
今回の展示のもとになっている『Vulnicura(ヴァルニキュラ)』(2015年)は、私の中で起こったことを時系列に沿って歌にしたアルバムで、1曲1曲が独立しているのではなくて、つながっている物語性がある。だから、VR作品として展開していくのに最適だった。それと、自分にとって興味深かったのは、作品の内容と技術の対比ね。
―作品と技術の対比?
ビョーク:そう。『Vulnicura』で歌っているのは、個人的なとても大きな失恋の痛手についての歌。でも、それってギリシア悲劇の時代から人類のアートにとって最も頻繁に繰り返されているテーマじゃない? それをVRという、人類にとって最先端の技術と融合することになる。それは、未来的なテーマを未来的な手法でみんなに体験してもらうより、おもしろいことだと思った。でも、VR作品を作るのはとっても時間がかかるの(笑)。今、ようやく4つの曲が完成したけれど、また制作中の曲が2曲ある。
―具体的に、どのような作業に一番時間がかかるんですか?
ビョーク:今、私たちが作業で取り組んでいる場所は、本当に現在の技術の一番先端にある場所なの。だから、何に時間がかかるかと言われたら、それは技術の進化と完全に足並みを揃えて作業をしているからとしか言いようがないわ(笑)。
―要するに、何か新しい技術があってそれを採用しているのではなく、あなたの作品を素材に、新しい技術そのものを開発しているという、ちょっと気が遠くなるような話なわけですね?
ビョーク:そういうこと(笑)。本当は、一刻も早くみんなに自宅で体験してほしいの。でも、まだVRのヘッドセットって一般には普及してないでしょ? だから、今回は会場にまで来てもらわなくてはいけなかった。で、せっかくだからってことで、最初はそこでライブをやることも考えたんだけど、そうするとVRでの表現とライブでの表現の中身がかち合ってしまうことに気づいて。もしかしたらこの先、VRとライブの融合というのもあり得るかもしれないけれど、今はそこで理想的なかたちが見出せなかったから、今回はDJとして参加することにしたの。
『Bjork Digital ―音楽のVR・18日間の実験』ビジュアル
前の作品で得た利益は、次の作品の活動にすべて投入する。1993年にソロになってから、私はこれまでずっとそうやってきた。
―なるほど。『Biophilia』(2011年)でもスマートフォンアプリで作品をリリースするという新しい試みをやっていましたが、2010 年代に入ってからのあなたは、新しいアートフォームとそのための新技術を開拓する使命感に取り憑かれているようにも見えます。そこでは、きっと大きな開発コストもかかっていますよね。ちょっと立ち入った話になりますが、そうした制作活動にともなうコストと利益のバランスはどのようにとっているのですか?
ビョーク:まず、私は人類やアートのために創作活動をしているわけじゃないわ。使命感だけで音楽をやるほど寛大な人間ではないの。ミュージシャンとして自分が成長できると思えることをやりたいから、やる。基本的な動機はそれだけよ。そういう意味で、私はとても自己中心的だと思う。
私の音楽活動における運営方法はとてもシンプルなの。前の作品で得た利益は、次の作品の活動にすべて投入する。1993年にソロになってから、私はこれまでずっとそうやってきた。華やかで贅沢な生活にはまったく興味がないから、それですべてがちゃんと回るのよ。
ただ、90年代と今がまったく違うのは、レコード会社が湯水のようにお金をかけて作品のプロモーションをしなくなったということ。レコード会社のお金をつかって、有名な映像作家や映画監督にミュージックビデオを撮ってもらって、MTVでそれが流れて話題になるなんてことは、もうほとんど恐竜時代の話みたいに思える。でも、「あの頃はいい時代だった」なんてまったく思わないのね。今の時代には、素晴らしい新しい世代のミュージシャンたちと、新しい世代のリスナーたちがいて、そこで音楽はとても健全に進化をしていると思う。
私は、テクノロジーって21世紀の新しい楽器だと思っているのね。そのツールを開発できる立場にいるのなら、それをしない理由はないわ。
―では、その新しい環境の中で、あなたは自分の役割はどこにあると考えているのですか?
ビョーク:点と点をつなぐこと。それが私の役割だと思っている。世界中に星のように点在している才能や技術をつなぎ合わせて、星座のように大きな絵を浮かび上がらせる。私はそういうことに長けていると思うし、それってすごく女性的な表現のやり方だと思うのね。自分のエネルギーをそこに注ぐことによって、新しい絵が、新しい流れが生まれる。その流れをまとめ上げたものが、今の私にとっての作品なの。
『Vulnicura』収録“notget”のVR映像より(REWIND VR)
ビョーク:例えば、『Biophilia』ではアプリ会社と新しいアプリの開発をしながら作品を作っていったし、『Vulnicura』ではVRの研究所と一緒に作品を作っている。そこでは、私だけじゃなくてみんなでコストやリスクを背負っていて、そこで生まれた収入もみんなで分け合っているの。それって、1990年代の音楽業界にはなかった考え方だし、新しいようで、実は昔からある共同体と同じような考え方でもある。10代の頃、私はアイスランドのパンクシーンにいたけれど、そこでのDIY精神を私はまだ実践しているというわけ(笑)。
Bjork『Vulnicura』ジャケット(Amazonで見る)
ビョーク:ありがたいことに、今の私のもとには、テクノロジー系の企業からいろんなアイデアの提案がくるの。それは、他のアーティストでは実現できないことだから私のところにくるのだろうし、そこで何か新しいものが実を結ぶ可能性が高いならば、私はその可能性をどこまでも追求していきたい。なぜなら、それがアーティストとしての自分の成長になるから。
―それは、企業からスポンサードを受けているのとは違うわけですね。
ビョーク:そう。そこは大切なこと。これまで私は世界的な大企業からCMに曲を使わせてほしいとか、ツアーの協賛をしたいとか、本当にたくさん提案を受けてきたけれど、そういうものは全部断ってきた。中には私の表現をちゃんと尊重してくれそうな提案もあったけれど、それは私にとって最初から選択肢にないことだったの。精神はずっとパンクだから(笑)。
でも、テクノロジー系の企業と一緒に仕事をするのはそれとはまったく違っていて。私は、テクノロジーって21世紀の新しい楽器だと思っているのね。今の時代の音楽を形作る上で、それらは必要なツールなの。そのツールを開発できる立場にいるのなら、それをしない理由はないわ。それは、今の10代や20代のミュージシャンにとって新しい道を切り拓くことにもなると思うから。
特に今のヨーロッパの若い子は経済的にとても逼迫しているの。昔とは違って、自分で家やアパートを購入するみたいな将来的なビジョンを持てない子たちがほとんどで。ましてや、音楽で生計を立てるなんて夢のような話になってしまった。日本でもそう?
―そうですね。
ビョーク:でも、とてもラッキーなことに、私は音楽業界にとてもたくさんのお金が回っていた90年代に、膨大なプロモーション費をかけてもらってソロデビューをすることができた。とても素敵なミュージックビデオを作ることもできて、それが世界中に広がって、そのおかげでレイキャビークとブルックリンに2つの家を持つこともできた。私にとって、もうそれだけで十分なの。
さっき使命感はないって言ったけど、そうね、やっぱり私たちのように恵まれた時代を過ごしてきたミュージシャンは、若いミュージシャンのために新しい方法論を提示していく責任はあるかもしれない。それに、最近一緒に音楽を作っているArcaのように、世界のいたるところにとても優れた才能を持った若いミュージシャンがいて、それが今の私にとって一番の大きな刺激になっている。
だからこそ、次の世代のミュージシャンのために、先を見通して新しいテクノロジーや新しいプラットフォームを用意しておくことが、私の役割なのかもしれない。もちろん、そこで誰にも魂は売らずにね(笑)。シェイクスピアは、まだみんながうまく使いこなせていなかった「英語」というテクノロジーを駆使した。それは、英語という言語の体系を作る上でとても重要な役割を果たしたの。
―あなたくらい魂を売ったことのないミュージシャンは見たことがありません(笑)。
ビョーク:でも、魂の問題はとても大切なの。今、私が一緒にVRを作っている企業は、きっと70年代のアップルってこんな感じだったんだろうなって思えるような、自由で生き生きとした空気と、ただ競争するのではなく、新しいものをみんなでシェアしていこうという精神が感じられるのね。でも、新しいテクノロジーって気をつけてないと、すぐに軍や、政府や、大企業のものになってしまうの。そういう場所で生まれる新しいテクノロジーには魂がない。
『Bjork Digital』オーストラリア・シドニーでの模様 撮影:Santiago Felipe
ビョーク:私は、アーティストの本当の役割って、新しいテクノロジーに命を吹き込むこと、魂を注ぎ込むことにあると思っているの。例えば、16世紀にシェイクスピアが舞台芸術でやったことって、当時はまだ発展の過程にあった「英語」という新しいテクノロジーに――
―シェイクスピア!?
ビョーク:別に自分のことをシェイクスピアと並べて語ろうとしているわけではないの。ただ、16世紀の英国では、まだ英語って形成過程にある言語で、シェイクスピアはみんながうまく使いこなせていなかったそのテクノロジーを駆使して、そこで新しい言葉も生み出して、優れた芸術へと昇華させた。それは、英語という言語の体系を作る上でとても重要な役割を果たしたの。
彼が英語に命を吹き込んだことが、今こうして私たちが話している英語にそのままつながっている。自分も今、そうしたテクノロジーが発展していく過程に立ち会っている。今回私が日本でやるVRの展示は、シェイクスピアにとっての舞台みたいなものなの。
―……その視座の広大さに、ちょっと感動してしまいました。
ビョーク:あ、私は自分をシェイクスピアと同じくらい重要な存在だと考えているわけじゃないわよ。そこは誤解しないでね(笑)。
実は私のマネージャーやスタッフって、16歳の頃からずっと同じなのよ。彼らは私のこと、そして私の創作活動をずっと外部のコントロールから守ってくれている。
―はい(笑)。今回のVRの展示は、アルバム『Vulnicura』から生まれたものですが、『Vulnicura』はCDだけでもオリジナルの『Vulnicura』、『Vulnicura Strings』、そして7月にリリースされる『Vulnicura Live』と3種類の作品が存在します。ダウンロードやストリーミングでのリリースが当たり前となった近年は「アルバム」という概念そのものが大きく揺さぶられていますが、現在のあなたにとって「アルバム」という表現フォーマットはどのような意味を持つものなのでしょうか?
Bjork『Vulnicura Live』ジャケット(Amazonで見る)
ビョーク:いい質問ね。私は今の音楽業界の変化をとても歓迎しているの。昔はアルバムを作ってからリリースされるまで10か月もかかって、その間にプロモーションだとか、ミュージックビデオだとか、いろいろ準備をしなくてはいけなかった。でも、今はアルバムを完成させたら、それをすぐに自分の判断でリリースすることができる。実際、今回の『Vulnicura』のレコーディングにかかった時間は18か月で、それは、これまでいつも3年くらいかかっていた私にとって、とても短いものだった。
今は、まずアルバムをリリースしてから、こうしていろんなプロジェクトに発展させていくことができる。それは、とても自分の本能に合っているの。友達の舞台の演出家やダンサーは、上演ごとに少しずつ作品を変化させていく。そういうアプローチがどうして自分にはできないんだろうって思っていたんだけど、それは「アルバム」という時間のタームに縛られていたからだとわかったの。
実はもう『Vulnicura』の次の新しいアルバムにも着手していて、今回のVRを含めて、すべて同時に取り掛かっているんだけど、そうやって間隔を開けずに制作に打ち込める今の環境は、自分にとってとても自然で、こうあるべきだと思えることなの。
―一応まだレコード会社から作品はリリースしているけれど、もうそのコントロール下にはないということですか?
ビョーク:もともとかなり自由だったけれど、その自由がさらに広がったという感じね。実は私のマネージャーやスタッフって、16歳の頃からずっと同じなのよ。
―それはすごい。
ビョーク:彼らは私のこと、そして私の創作活動をずっとそうした外部のコントロールから守ってくれている。そういう意味でも、私はとても恵まれた環境で音楽をやってきたんだと思う。だからこそ、私は私の責任において、自分の作品を自分の子供のように守り続けていかなきゃいけないと思っているの。中には、もうすっかり成長して、まるで友達のような存在になっている曲もあるけれど(笑)。ライブで久々に昔の曲をやる時は、ずっと会ってなかった友達に久しぶりに会ったような気持ちになることもあるわ。
私が何らかの音楽のファミリーツリーに属しているとしたら、それはエレクトロニックミュージックの世界であり、クラブカルチャーの世界だと思っているの。
―まだ半分しか経っていませんが、2016年というのは、ポップミュージックにとってとても奇妙な年だと自分は感じています。アノーニ(トランスジェンダーであるアントニー・ヘガティが名乗った女性名)やジェイムス・ブレイクやRadioheadの新作をはじめ、例年になく素晴らしい作品がたくさん生まれている一方、ポップミュージックの歴史においてあまりにも重要な存在であったデヴィッド・ボウイやプリンスが相次いでこの世を去ってしまいました。あなたからは、そのような現在のポップミュージックの状況はどのように見えているのでしょうか?
ビョーク:そうね……。ボウイとプリンスについてはあとで話していい?
―はい。
ビョーク:まず、私はジャーナリストじゃなくてミュージシャンで、まさにそのど真ん中にいるから、あなたのように客観的には音楽シーンのことが見られないの。それはわかる?
―もちろん。
ビョーク:その上で言うなら、この5年間はポップミュージックが再びとてもエキサイティングなものになってきた時代だと思う。あなたが挙げた作品の他にも、そう、例えば最近はリアーナのアルバム(『Anti』)をよく聴いているわ。あれはとても音楽的に勇敢な作品だと思う。 ジェイムス・ブレイクの新しいアルバム(『The Colour In Anything』)が出た時も、毎日取り憑かれたようにずっと聴いていた。あれは「エレクトロニックミュージックには魂がこもってない」なんてまだ寝呆けたことを言っているヤツらに、中指を立ててみせたような作品ね(笑)。エレクトロニックミュージックとテクノロジーが描くことのできる感情の奥行きとその深淵を、彼は鮮やかに証明してくれた。この数週間あまりにもずっと聴きすぎていたから、ちょうど今は飽きてきちゃったところなんだけど(笑)。
ジェイムス・ブレイク『The Colour In Anything』ジャケット(Amazonで見る)
―(笑)。
ビョーク:そして、もちろんアノーニのアルバムね。彼女は私のとても大切な友達で、この3年間くらい、ニューヨークで頻繁に一緒に過ごしていて、毎晩のように現在のアメリカ政府についてや世界情勢についての話をしていた。今回の『Hopelessness』は本当にアメージング。でも、あの作品は私にとってちょっと近すぎて、ジェイムス・ブレイクの作品のように気安くは聴けないの。知り合ってからの12年間に彼女の身に起きてきたことや、作品の中で彼女が歌っている絶望のことが、私には全部わかってしまうから。
ANOHNI『Hopelessness』ジャケット(Amazonで見る)
―なるほど。アノーニの『Hopelessness』には、あなたの音楽からの強い影響が聴き取れましたが、それは気のせいではなかったのですね。
ビョーク:そうね……。あとは、そう、ボウイも、プリンスも、もちろん尊敬しているミュージシャンだし、彼らがこの世界からいなくなったことをとても悲しく思っている……でも、本当に正直なことを言うと、10代の頃の私には、彼らの音楽はまったく響かなかったの。何故なら、私はパンクで、女性で、それってつまり、当時のアイスランドではとても政治的な存在であることを意味していたから。
10代の頃の私は、自分が女性としてこの世界で音楽をやっていく意味をずっと探していた。そんなふうに潔癖で意固地になっていた当時の私にとって、彼らの音楽は男性的すぎて、意味がよくわからなかったの。私が10年間在籍していたバンド(The Sugarcubes。92年に解散)から脱退したのもそれと同じ理由で、ロックンロールやバンドの世界って、それ自体がとても男性的なものだと思うのね。バンドがレコーディングをするスタジオの環境でも、既にとても男性社会的なヒエラルキーが出来上がっていて、ずっと私はそこから抜け出すにはどうしたらいいのか考えていた。
ビョーク:アイスランドのパンクシーンにいながら、私はジョニ・ミッチェルやケイト・ブッシュに深く傾倒しながら、彼女たちの音楽からその糸口を探していたの。だから私は、ミュージシャンとしてボウイやプリンスがいるファミリーツリーには属していない。彼らについて語るなら、まずそれをはっきりさせておいた方がいいと思うの。
―なるほど。そして、90年代になってあなたはエレクトロニックミュージックと出会ったことで、その男性社会的な音楽シーンから解放された?
ビョーク:その通り。わかってほしいのは、私はなにも音楽に白黒をつけようとしているわけではないの。ボウイもプリンスもとても繊細なアーティストで、彼らは決して男性社会を代表するような存在ではないこともわかっているし、パティ・スミスのようにロックの世界でも女性らしい表現をしてきたミュージシャンがいることもわかっている。
でも、私にとってその後にエレクトロニックミュージックと出会えたことは、何ものにも代えがたいほど大きなことだったの。自分一人でシンセサイザーやコンピューターを使って音楽を作るようになってから、急に視界が開けて、それまでのいろんなことから自由になることができた。私にとってエレクトロニックミュージックって、とても母性的で非キリスト教的な音楽なの。
ビョーク:それは、デトロイトテクノを聴いていてもそう思うし、Pet Shop Boysを聴いていてもそう思う。実際、ディスコの時代からLGBTのカルチャーとエレクトロニックミュージックは密接に関わってきたわけで。アノーニの音楽がエレクトロニックミュージックへと移行したのも、私にはとても自然なことに思えた。
私が何らかの音楽のファミリーツリーに属しているとしたら、それはロックンロールではなく、きっとポップミュージックでさえなく、エレクトロニックミュージックの世界であり、クラブカルチャーの世界だと思っているの。
―とても興味深い話ばかりで、今日はお話ができて本当に嬉しかったです。VRももちろんですが、あなたのDJもとても楽しみにしています。
ビョーク:日本のファンの前でDJやるのは初めてだから、私もとても興奮しているわ。インタビューも楽しかった。ありがとう。
- イベント情報
-
- 『Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験』
-
2016年6月29日(水)~7月18日(月・祝)
会場:東京都 お台場 日本科学未来館 7階 イノベーションホールほか
時間:10:00~17:00(金~日曜は22:00まで)
休館日:火曜
料金:2,500円
※入場時間指定制、整理番号付
- 『Björk Digital Opening Party』
-
2016年6月29日(水)OPEN / START 19:30
会場:東京都 お台場 日本科学未来館
DJ:Bjork
料金:9,000円
- 『Björk Digital Opening Party』追加公演
-
2016年6月30日(木)OPEN / START 19:30
会場:東京都 お台場 日本科学未来館
DJ:Bjork
料金:9,000円
- リリース情報
-
- Björk
『Vulnicura』日本盤(CD) -
2015年4月1日(水)発売
価格:2,592円(税込)1. stonemilker
2. lionsong
3. history of touches
4. black lake
5. family
6. notget
7. atom dance (feat. Antony)
8. mouth mantra
9. quicksand
- Björk
『Vulnicura : the acoustic version - strings, voice and viola organista only』日本盤(CD) -
2015年12月23日(水・祝)発売
価格:2,592円(税込)1. mouth mantra
2. lionsong
3. black lake
4. atom dance
5. stonemilker
6. quicksand
7. notget
8. family
9. mouth mantra(the haxan cloak remix)
10. black lake(bloom remix)
※特殊スリーブケース仕様、解説、歌詞、対訳付
- Bjork
『Vulnicura Live』日本盤(CD) -
2016年7月13日(水)発売
価格:2,592円(税込)
SICX-521. stonemilker
2. lionsong
3. history of touches
4. black lake
5. family
6. notget
7. undo
8. come to me
9. i see who you are
10. wanderlust
11. quicksand
12. mutual core
13. mouth mantra
- Björk
- プロフィール
-
- Bjork (びょーく)
-
アイスランド出身のシンガー/ソングライター/プロデューサー/女優。1980年代後半より、ザ・シュガーキューブスのヴォーカルとして活躍し、UK、ヨーロッパを中心にブレイク。1993年にファースト・アルバム『デビュー』でソロ・デビューを果たして以来、2千万枚のアルバム・セールスを誇り、その先鋭的かつ多様なサウンドで世界中の音楽ファンの絶大な支持を受けている。これまで8枚のスタジオ・アルバムに加え、映画サウンドトラック、リミックス盤、ライヴ盤など含め、20作品以上をリリース。これまで、トム・ヨーク、ティンバランド、べック、アレキサンダー・マックイーン、スパイク・ジョーンズなど、音楽にとどまらず多岐にわたるジャンルの著名人とのコラボレーション歴も誇る。2000年にはミュージカル映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に主演し、初出演映画にして、カンヌ国際映画祭<パルムドール>賞と<最優秀女優賞>を獲得。2015年4月にリリースした8作目アルバム『ヴァルニキュラ』は全世界24カ国のiTunesチャートで1位を記録し、第58回グラミー賞で<最優秀オルタナティヴ・アルバム>にノミネート。2015年3月には、自身のソロ・キャリアを衣装や映像の展示と共に振り返る大回顧展をニューヨーク現代美術館(MoMA)にて開催。2016年4月には、『ヴァルニキュラ』の360°VR映像作品の展示プロジェクト『Björk Digital』を開催。
- フィードバック 7
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-