横浜の街を舞台に約300もの音楽イベントが繰り広げられる『横浜音祭り2016』が、9月22日から11月26日まで2か月にわたり開催される。今年のテーマは「スーパーユニバーサル」。音楽ジャンルのみならず、世代、国籍、ジェンダー、障害の有無、そして全国区で活躍するプロから地元のアマチュアまで、さまざまなミュージシャンが奏でる音楽で横浜の街が彩られる。
今回は10月31日に横浜開港記念館で『DEARSTAGE presnts 横浜音祭り2016 でんでんハロウィン』に出演するでんぱ組.incから、古川未鈴と相沢梨紗の二人にインタビュー。「萌えきゅんソングを世界にお届け」をキャッチコピーに、秋葉原出身のアイドルグループとして国内外で活躍する彼女たちは、まさにスーパーユニバーサル。『東アジア文化都市2014横浜』で広報親善大使を務めたことをはじめとして、横浜との関わりも深い彼女たちに、『横浜音祭り2016』への意気込みや、街とアイドルの関係性について語ってもらった。
でんぱ組.incはアニメの『プリキュア』がライバルだと勝手に思っていて。二次元と三次元の境界線を越えたいんです。(相沢)
―でんぱ組.incは秋葉原で誕生したグループですが、横浜との縁が深いですよね。でんぱ組.incにとって、横浜はどういう街ですか?
古川:本当に第二の故郷感があるんです。横浜は街でのイベントがたくさんあるイメージで、昔から行かせていただく機会が多かったんですけど、そういうことがないとでんぱ組.incはあんまりお外に出ないタイプのメンバーが多いので(笑)、横浜のおかげで街のイベントのよさがわかったなと思っています。
相沢:『東アジア文化都市2014横浜』の広報親善大使のときは、特に深く関わらせていただいて、横浜市を背負って、そして日本を代表して、海外にも行かせていただけたことに感動しました。でんぱ組.incは秋葉原出身なんですけど、でんぱ組.incのポップカルチャーやオタクな部分を含め、横浜は外の文化を受け入れて、もっともっと盛り上げようとしてくれるので、すごくやさしい街だなと思っています。
―今年の『横浜音祭り』では、10月31日の『DEARSTAGE presents でんでんハロウィンナイト』にご出演されますが、どんな内容になるのでしょう?
古川:ハロウィンは(相沢)梨紗ちゃん大好きだもんね。
相沢:でんぱ組.incは秋葉原ディアステージというお店に所属しているんですけど、以前ディアステージで横浜に出張カフェを作ったことがあって。そこで私が好きなアーティストさんに来ていただいて、ハロウィンパーティーを1週間やったことがあるんです。それが今回は開港記念会館という大きな場所で、規模を拡大してやる予定なので、本当に楽しみなんです。 前回はディアステージの一部の女の子たちしか参加できなかったんですけど、今回はもっと広い範囲で女の子に協力してもらって、各フロアをそれぞれにプロデュースしてもらう予定なので、間違いなく素敵なハロウィンになると思います。
―今回の横浜音祭りは「スーパーユニバーサル」がテーマになっていますが、でんぱ組.incとして越えたい垣根はありますか?
古川:『横浜開港記念みなと祭』の『ザ よこはまパレード』に参加したときは、小さな子どもやお年を召された方も見に来てくれた気がしていて。アイドルのイベントは男の子が多いイメージを持たれると思うんですけど、せっかく「スーパーユニバーサル」をテーマに掲げているので、たとえば親子とか、年齢や性別の垣根を越えて、たくさんの方々が見に来てくれたらいいなと思います。
相沢:でんぱ組.incはアニメの『プリキュア』がライバルだと勝手に思っているんですけど、二次元と三次元の境界線を越えたいんです。それと、海外でライブをしたときに「でんぱ組.incは小さな秋葉原みたいだった」と言ってもらえたことがあって、言葉は通じなくても何かを感じてもらえたと思うんですね。たとえば普段はクラシックしか聴かないよっていう方にも、秋葉原のアイドルやアニメっぽさ、漫画っぽさみたいなところが少しでも伝わるといいなと思っています。
『コミックマーケット』や『東京ゲームショウ』のように、同じ楽しみを持った人が集まるところってパワーがあるなと思うんですよね。(古川)
―お二人は横浜以外で街のイベントに参加された経験はありますか?
相沢:私は母が沖縄の宮古島出身で、お盆以外にも定期的にご先祖様にお祈りしに行く風習があったんです。母の弟が神社の宮司さんをやっているんですけど、お祭りに行くと、小さい子から大人まで、ご先祖様を大事にしていて、東京にいるときには感じられない気持ちにさせてくれるんですよね。
古川:私は『酉の市』が大好きなんです。すごく活気があって、いろんなところで三本締めが鳴ってて、実はそういう人混みが好きなんですよね。「みんな元気だな」って、一人で行って見ているんです。
―一人で行くんですか?
相沢:未鈴ちゃん、誘ってくれないんですよ。というか、でんぱ組.incはみんな、バラバラに行動することが多いんです。
古川:私、お祭りは一人で行きたいタイプですね。で、こっそり熊手を買ったりして(笑)。
―お祭りの人混みに一人で行くのって、なかなかハードルが高い気がしますけど。
古川:『コミックマーケット』や『東京ゲームショウ』もそうなんですけど、同じ楽しみを持った人が集まるところが好きなんです。そういう場所ってパワーがあるなと思うんですよね。
相沢:横浜も行けば何かしらあるから、一人で行っても寂しいことはないですよね。ご飯もおいしいし(笑)。
―ちなみにプライベートで横浜に行かれることはあるんですか?
古川:私はカップ麺が好きだから、カップヌードルミュージアム。
相沢:私は横浜三塔が好きなんです。建物に名前がついていて、ジャック(横浜市開港記念会館)、クイーン(横浜税関)、キング(神奈川県庁)って、3つあって。場所によって雰囲気が違って、景色を見ているだけでも楽しいし、公園もきれいなので、ただのんびりしたくて行くこともあります。
アイドルやアニメは「街おこし」っぽくなっている。自分たちが、誰かの行ったことのない場所に行けるきっかけになれたらいいなと思うんです。(相沢)
―でんぱ組.incは秋葉原という街を背負って活動している部分があると思いますが、街とアイドルの関係性について感じていることはありますか?
相沢:秋葉原のディアステージというお店は、自分で働いていて思うんですけど、入りづらいんですよ(笑)。ただ、入るまでにはちょっと勇気がいるけど、一度入ってしまえば、スタッフの女の子たちも実はうれしいから、すごくおもてなしをするし、来てくれた人を楽しませようと全力でライブをやっているんです。
アイドルやアニメって、いま「街おこし」っぽくなっているところもあるので、自分たちが、誰かにとって行ったことのない場所に行けるきっかけになれたらいいなと思うんです。初めての場所に行くのは怖いけど、その怖さが軽減されたり、アイドルが垣根を柔らかくする効果を持っていたりしたらいいなと思います。
古川:最近はアイドルをやろうと思ったら、どこかの地域のアイドルをやったほうがいいみたいな風潮がありますよね。それは街のみなさんがアイドルを盛り上げれば街も活性化すると考えているということなのかなと思うと、昔では考えられなかったことだなって。それくらいアイドルという職業が認められ始めているということですよね。
ただ、街を背負うことは、うれしいことでもあり、不安なことでもあります。うちらが無責任なことをやっちゃったら、街のイメージも悪くなってしまうじゃないですか。だから覚悟は必要だなと思います。でんぱ組.incは秋葉原から生まれたし、いまも秋葉原に本拠地があるし、これからも秋葉原を背負う覚悟を持って、世界にもアキバを発信していきたいですね。
相沢:街といい関係が築けるかも重要だなと思います。でんぱ組.incは秋葉原に本当にお世話になったので、この恩を返さなきゃという気持ちがあるんです。横浜も同じですよね。そこでパワーが生まれて、パフォーマンスにもつながっているので、街を盛り上げるためだけにやるっていうよりは、恩返ししあう関係が築けてくると、もっともっとお互いに盛り上がるのかなと感じています。
やっぱり街は人でできていると思うので、受け入れてくれる人がいたり、自分と合う人がいたりすると、安心して街にいられるようになる。(相沢)
―でんぱ組.incは2014年の冬から『秋葉原電気街まつり』のイメージキャラクターをやられているじゃないですか。あれを見ると感慨深いものがあるんですよね。
古川:あれ、めちゃくちゃ夢だったんですよ。
相沢:本当にうれしかった!
古川:ずっと他のアイドルさんがやっていて、うちらのほうがアキバアキバしてるのに……と思いながら見ていたんです(笑)。本当に念願だったし、目に見えて恩返ししている感もありますよね。
相沢:私は毎回ポスターが変わるたびに写真を撮りに行っています(笑)。
―さっき、秋葉原に最初に飛び込むのは勇気がいると言っていたじゃないですか。でんぱ組.incが秋葉原で活動するなかで、アウェイからホームに変わる瞬間みたいなものはあったんですか?
相沢:どこからだったんだろう?
古川:昔は「秋葉原から来ました」って言うと、それだけで変な目で見られがちだったんですよね。「こいつらアキバ系かよ」みたいな。でも、いつからか変わったよね。
相沢:それがネックになって、アイドルイベントに出演するのが難しかった時期もありました。
古川:だから「秋葉原から来た」って言わないようにしていた期間もあったんですよ。
相沢:あったね(笑)。
古川:でも、いまでは堂々と「アキバから来ました!」って言っていますね。なんだったんだろう?
相沢:私は街というか、人に安心できた部分があって。私が秋葉原に行き始めたときは、オタクしかいなかったんですけど、自分がオタクだったから受け入れてくれる人がいたっていう感じだったんですよね。やっぱり街は人でできていると思うので、受け入れてくれる人がいたり、自分と合う人がいたり、そういうのが1個見つけられるだけで安心してその街にいられるというか、ホームに感じられるのかなと思うんです。
―アニメやゲームって、たとえば都内だと中野や池袋にも文化があるじゃないですか。なんでお二人は秋葉原だったんですか?
相沢:確かに。なんでだろう?
古川:私はもともとゲームセンターが大好きで、もちろんアキバ以外のゲームセンターにも行くんですけど、やっぱりディアステージという居場所が大きかったのかなと思います。あと、秋葉原に来ると、家に帰ってきたような感覚になるんですよね。街行く人の会話が全部わかるんですよ。私も梨紗ちゃんも、もともとメイドをやっていたので、秋葉原をちょっと歩いただけで知ってる人に会うし。
相沢:絶対会うね(笑)。
古川:「あ、ご主人様だ!」みたいな(笑)。
相沢:私の場合、メイドさんになろうと思ったとき、秋葉原しかお店が見つからなくて。でも、実際に入ってみたら秋葉原の匿名感が合っていたというか、安心できたんです。10年近く会っているご主人様もいるんですけど、いまだに本名を知らないんですよ(笑)。でも、すごく信用してる。そういうちょっと不思議な感覚は、秋葉原独特のものなのかなと思います。秋葉原のなかだけでは、自分に正直にいられたり、理想の自分を作って誰かと交流できたり、そういうところが魅力なのかなと感じています。
―先ほど横浜は外の文化を受け入れるという話をされていましたけど、秋葉原も似ているのかなと思いました。
相沢:どうなんでしょう。秋葉原はオタクがただただ集まっていたところに、「面白いものがありそう」っていろんなところから来てくださる感じがしていて。どちらかというと秋葉原自体はありのままで、もともといたオタクの人たちは変わらずにいる感じがしています。そういう意味では、横浜の外から招き入れる姿勢は見習わないといけないのかもなと思いますね。
―最後に、『横浜音祭り2016』に来ようと思っている方々に、メッセージをいただけますか?
古川:横浜って、すごく近未来な街だなと思っていて。街並みもそうだし、こういう『横浜音祭り』みたいなイベントもそうだし、港の街だから、いろんな文化を取り入れる土壌があるんだなと。ちょっと不思議というか、東京にいるだけではわからない感覚になれるんですよね。そういう横浜独特の感覚を楽しんでいただきたいし、横浜にお住まいの方も親子やご夫婦でいらっしゃってくださるとうれしいです。
相沢:横浜に住んでいる方は、自分の街をすごく好きな方が多い印象があって、それがなぜなのか行く前はわからなかったんですね。でも、行ってみたら間違いなくわかると思うんです。それはでんぱ組.incが実際に横浜に行って経験したことなので、絶対に来ていただきたいです。でんぱ組.incが出演するハロウィンだけじゃなくて、長期間やっているイベントだし、思い出作りでも、ほんの些細なきっかけでもいいので、ぜひ足を運んでください。お待ちしています!
- イベント情報
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- 『横浜音祭り2016』
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2016年9月22日(木・祝)~11月27日(日)
会場:神奈川県 横浜市内全域
- 『DEARSTAGE presents でんでんハロウィンナイト』
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2016年10月31日(月)
会場:神奈川県 横浜市内
出演:
でんぱ組.inc
ワークショップの参加者
- プロフィール
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- でんぱ組.inc (でんぱぐみいんく)
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古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、最上もが、藤咲彩音の6人組ユニット。メンバーはもともと、アニメ・漫画・ゲームなど、自分の趣味に特化したコアなオタクでもある。シングル『W.W.D / 冬へと走りだすお!』が、マイナスからのスタートなめんな!というキャッチフレーズで話題になり日本武道館で1万人動員。国立競技場代々木第一体育館2days単独公演を大成功させた。2014年度は東アジア文化都市2014横浜親善大使を務め、2015年度は「Dance Dance Dance@YOKOHAMA 2015」にも出演。2015年はワールドツアーも敢行。MTV「ワールド・ワイド・アクト賞」の日本部門「ベスト・ジャパン・アクト」のウィナーに。2016年4月27日には待望のNEWアルバム『GOGO DEMPA』をリリース。いま大注目のアイドルグループ。
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