RAMMELLSの快進撃は猛スピードで進む。自信と怒りを起爆剤に

今年2月に、CINRA.NETでインタビューを行った際、RAMMELLSのギタリスト・真田徹は今後の活動について「夏にアルバムを出して、その先ぶち抜く予定」と語っていた。その宣言の通り、数多のレーベルから声がかかり、自身初の全国流通盤となる『natural high』を10月19日にリリースする。

ドラマーとして彦坂玄も加入し、より強固で肉体的になったバンドアンサンブル。RAMMELLSの未来に期待したくなる、挑戦的なサウンドが詰まっている。大言壮語ながらも有言実行という恐ろしいアンファンテリブル――黒田秋子、真田徹、村山努、彦坂玄の四人に彼らの今のムードについて、そして今後の展望について話を聞いた。

何社からお誘いをいただいて……まぁ、僕らからしたら当然の流れですね(笑)。(真田)

―前回のインタビュー(RAMMELLSインタビュー 結成わずか半年で注目の的へ駆け上がる)で、「早くドラムも正式メンバーを見つけたい」とおっしゃっていて。実際、春にドラマーの彦坂さんが加入しました。ドラマーがしっかりと決まったことがバンドに与えた影響ってありますか?

村山(Ba):ドラマーってバンドの色に大きく関わる存在だと思っているんですけど、サポートじゃなくなったおかげで、「RAMMELLSの音」というのがよりはっきりとした気がします。

黒田(Vo,Key):まとまったよね。人間関係的にも……そうじゃない? どう?(笑)

真田(Gt):どうだろう……それはないかもな(笑)。

左から:村山努、黒田秋子、彦坂玄、真田徹
左から:村山努、黒田秋子、彦坂玄、真田徹

真田:彦坂が入る前のことがあんまり記憶にないというか。そもそも僕ら、音源をその前にいっぱい出していたわけじゃないし、ライブも数えるほどしかやってなかったから、違和感はまったくなく、「最初からいたよね?」という感じです。

―彦坂さんがバンドに加入したきっかけは何だったのでしょうか?

彦坂(Dr):Chiriponさん(村山)と前にバンドをやっていたことがあって、それがきっかけで呼んでくれたんです。RAMMELLSのことは、ChiriponさんがTwitterに「バンドを組んで、MVができました!」って呟いていたことで知って、すごくかっこいいなと思ってました。僕もバンド組みたいと思ってたし、「いいなぁ~」って(笑)。

―ドラマーとして、どのような要素をバンドに持ち込みたいと思っていましたか?

彦坂:加入する前にライブの音源をもらって聴き込んだら、意外と……ポップス感があったので、自分の好きなブラックミュージックの要素とかをこっそり織り込みたいなとは思ってましたね。

―『natural high』はRAMMELLSにとって初めての全国流通盤になるわけですが、まさに前回のインタビューの通り、有言実行でレーベルからアルバムを出すことになって。リリースに至るまでの経緯を教えてください。

真田:今年の4月ぐらいに、何社かからマネージメントやレーベル加入に関するお誘いをいただいて、「どうする?」ってバンドで話し合ったんです。ただその前から、『natural high』はレーベルから出すか出さないかは別として、とにかく録ろうと決めてはいて。そうしたらマネージメントの話が来たので、その流れでレーベルも決めて、「じゃあ、全国流通盤で出そうか」っていう……まぁ、僕らからしたら当然の流れですね(笑)。

真田徹

左:黒田秋子

―(笑)。初めてバンドメンバー以外の人たちが入った現場でのレコーディングだったと思うのですが、いかがでしたか?

真田:何ひとつ変わらなかったですね。レコーディングの現場に会社の人が来てるなぁ~ってくらいで。何か言われることもなかったし、言われても僕は聞かなかったと思います(笑)。

村山:まあ、マネージメントやレーベルの人たちも、僕らの意思を尊重してサポートしてくださって。実は、僕らが今のマネージメントに声をかけてもらえることになったのは、今年の2月にEggs×CINRA主催の『exPoP!!!!!』に出演させてもらったことが関係しているんです。今の僕らの担当者が、そのライブに来ていて、僕たちのことを観てくれていたんですよね。

仕事のこととか、お金のこととか……怒りに限らずですが、思ったことは基本曲にして消化してる。(黒田)

―『natural high』を作るにあたって、何かコンセプトはありましたか? 前作よりもBPMの速い曲や展開が複雑な曲も増えて、よりRAMMELLSのカラーがはっきりするアルバムになったのかなと思うのですが。

黒田:特にコンセプトを設定して作ってはいなくて。「いい曲を作って、いい演奏をする」という、いつも心がけていることをきちんとやったアルバムだと思います。

村山:曲間がシームレスにつながっている部分もあって、全体的にこの並びで聴くことをあらかじめ決められているようなアルバムだから、シャッフル再生ができないんじゃないかなって思ってます。

真田:コンセプトはなかったけど、7曲通して聴いてもらうと、ひとつ筋が通ってると思ってもらえるんじゃないかと思います。ジャケットは誰がどう見てもかっこいいし。

真田徹

RAMMELLS『natural high』ジャケット
RAMMELLS『natural high』ジャケット(Amazonで見る

―1曲目“Holiday”は、RAMMELLSにとっても新機軸となる曲だったんじゃないかと思います。爽やかでかつ、かなり速いロックな曲で。メロウなRAMMELLSのイメージとはまったく違う曲ですよね。

彦坂:もともと黒田が曲を作ってきて、それはこんな感じのアレンジじゃなくて、ブルージーな曲調だったんです。

村山:アレンジは僕がやったんですけど、別に狙ってこういう曲を作りたいと思ったわけじゃなくて。ただアルバムの中での起承転結は意識しました。いつもと雰囲気が違う曲も作らなきゃなって。

真田:“Holiday”でお客さんを惹きつけて、他の曲も聴いてもらおうという思いもあるかもしれないですね。ポップで間口の広い曲があれば、僕らのサイケデリックな部分とかブラックな部分にも興味を持ってもらえる可能性が増えるから。

村山:ライブでも、“Holiday”をやるとお客さんのノリがいいもんね。

黒田:歌詞はいい意味で、かなり「浅い」と思います(笑)。髪の毛ボサボサのまんま、昼間から酒を飲んで、ダル着でいる人の曲なんですよ。

―今回、全曲黒田さんが作詞を担当していますね。歌詞を書く際に、何をテーマにしようと思っていたのですか?

黒田:歌詞は常にギリギリまでやってましたね。私は体験したことしか書けないので、何を書くのか結構考えないといけなくて。ちまちま毎日のことを積み重ねて歌詞にしていくんですよね。

村山:いつも怒ってるよね?

黒田:いつもではない(笑)。でも曲によっては、結構叱咤しているような歌詞もあると思うんですけど、それは自分に言い聞かせてるのかもしれない。

左:黒田秋子

―前回お話を伺った時も、「怒り」については関心があるというふうにおっしゃっていて。対して恋愛の歌詞がないことについても伺ったと思うのですが、今回も恋愛が明確にテーマになっているものってないですよね?

黒田:ないんです。やっぱり今恋愛してないからですかね。書けたらいいなぁとは思うんだけど。

真田:いやでも、恋愛の曲は無理して書かなくてもいいんじゃないですかね? 他のアーティストがもうたくさん書いているし、別に今、彼女が書かなくてもいいんじゃないのかなって思います。

―でも、やっぱり黒田さん、怒ってるんですね。

黒田:今回の歌詞に関しては、身近で具体的な対象があるんですよ。仕事のこととか、お金のこととか……怒りに限らずですが、思ったことは基本曲にして消化してるかも。

あと、私、怒っている人を見ると「セクシーだな」「魅力的だな」って思うことも多くて。人の感情が分かりやすく湧き立っているところを見たいんだと思います。

僕がデモを作っても、そこに大体ぶち壊すような要素を(真田が)付け足してくるんですよ。(村山)

―“tower”と“Banoffee”は先ほどお話しされていたように、曲間がシームレスにつながっていて。RAMMELLSの肉体的なプレイアビリティーが発揮されている部分だと思うのですが、これはどなたがイニシアチブをとって曲作りをされたのでしょうか?

村山:あそこの部分は僕が作ったんです。浮遊感のある綺麗なコード進行で攻めたいと思ってやったんですけど。真田にデモを渡したら、そこにディストーションがかかった激しいギターが乗っかって返ってきて……僕がこうしたいと思うデモを作っても、そこに大体ぶち壊すような要素を付け足してくるんですよ。

村山努

真田:それぐらいやるの、当たり前だろ!(笑)

彦坂:“tower”のアウトロは、本当だったらピアノとビートだけで完成する予定だったんですけどね。作曲者の意図があまり汲まれていない(笑)。

彦坂玄

真田:全曲ちょっとギターがうるさい部分を入れているんです。みんなが予想してないことをやりたいなって思うんですよね。聴いてる人をいい意味で裏切りたい。この三人は否定的なこと言って来ますけどね。「そこ、もうちょっとクリーンなギターで弾いてくれない?」とか(笑)。

村山:そりゃそういうコンセプトで作ってるんだから、いろいろ言うでしょう(笑)。

真田:リズム隊の二人はロバート・グラスパーとかホセ・ジェイムズが好きなんですけど、僕はあんまりそういうのに興味がないので。そもそも今生きている人でブラックミュージックやってる人で、好きな人がいないんです。ジェームス・ブラウンとかは大好きなんですけど。

今のR&Bとかブラックミュージックの「分かる人だけ分かればいい」みたいな雰囲気は好きじゃないんですよね。あ、でも、エスペランサ・スポルディング(1984年生まれ、アメリカ出身のミュージシャン)のアルバム『Emily's D+Evolution』(2016年3月発売)はよかったなぁ。

―あのアルバムは、あんまりジャズ一本調子って感じでもなく、いろんな音楽の要素が入ってますもんね?

黒田:うん。私もあのアルバムはよかったと思う。私は、曲作りにおけるそんな三人の攻防を、「超面白いな」と思って聞いてました。「どんどん、やれ!」って。

黒田秋子

―それをまとめてるのが黒田さんの歌詞や歌?

彦坂:黒田の歌詞や歌に関しては、誰もあんまり何も言わないけど、「バンドの最終決定機関が黒田秋子」みたいなところはあるかもしれない。

RAMMELLS

本を読んでいると、第六感が刺激される気がするんです。いつも持ち歩いているから、もうボロボロ。(黒田)

―音楽以外で、みなさんが影響を受けているものってありますか?

黒田:私は、同じ本を何回も読むんです。読むのがめちゃくちゃ遅いから、すごく長い時間をかけて、少しずつ読んでいて。この3冊はずっと大事にしています。パウロ・コエーリョの『アルケミスト―夢を旅した少年』(角川文庫)と星野道夫の『旅をする木』(文春文庫)、それから、西加奈子の『サラバ!』(小学館)。

これらの本を読んでいると、第六感が刺激される気がするんです。いつも持ち歩いているから、もうボロボロですね。でも、よく人に自分のお気に入りの本をあげるから、そうするとまた同じ本を自分で買い直しています。

左から:『アルケミストー夢を旅した少年』『旅をする木』『サラバ!』(すべて黒田の私物)
左から:『アルケミストー夢を旅した少年』『旅をする木』『サラバ!』(すべて黒田の私物)

真田:僕は国語の授業が結構好きで。答えがひとつじゃないところがいいなと思っていたんです。川端康成(1899年生まれ、1972年逝去。小説家・文芸評論家)と、あとは武者小路実篤(1885年生まれ、1976年逝去。小説家・劇作家・画家)も好きかな。日本語の使い方がとても好きです。端正で分かりやすいんだけど、それが陳腐になっていないというか。ギタープレイもそういうのが好きですね。

村山:僕はガンダムシリーズが好きですね。ネガティブな感情に、どうしても感動しちゃうんですよ。誰かが戦死したりとか、やりきれない気持ちになる瞬間が多い作品が好きなんです。主人公が全力で戦うんだけど、力を使いすぎて植物人間になっちゃう……そういう救えない展開に心動かされることが多いです。

―彦坂さんは、前回のインタビューで他の三人には聞いた、影響を受けた音楽について聞かせてください。

彦坂:みんな好きだから、あえて言うのが少し恥ずかしいんですけど、中学時代に初めて出会ってから、椎名林檎さんはずっと聴いていますね。飽きないというか、発見がいつもあるし、年代によってきちんと更新されているところがすごいなと思います。

直近の目標としては、『FUJIROCK』のレッドマーキーですね。(真田)

―冒頭からRAMMELLSは有言実行という話をしてきましたが、最後に今後の展望をお聞かせいただけますか。

真田:活動歴はまだそんなに長くないですが、周りのバンドに負けないようなスピードで駆け上がれていると思うんです。ライブ自体は、最高なときもあるんですけど、自分の理想の域にまだ達していないときもあるから、もっと鍛錬が必要だなとは思っていますね。直近の目標としては、『FUJIROCK』のレッドマーキーですね。

村山:やっぱり常に一歩先を行くような音楽を作り続けたいなと思いますね。本来そういうものは意図して作るんじゃなくて、できてくるものなのだとは思うんですけど。「これは誰もやってないな」ということをやりたいと思っています。

彦坂:上辺だけで骨が細いバンドが多い気がしているので、骨太なドラマーとバンドでありたいなと思いますね。

RAMMELLS

黒田:これからいろんなことを求められることもあるのかもしれないんですけど、私たちの基本である「いい曲を作って歌う」という部分はぶれないでいたいなと思っています。常に何が自分にとって正しいのか、大事なのかを考え続けて、何事に対しても自分の意見を持っていたいと思いますね。

リリース情報
RAMMELLS
『natural high』(CD)

2016年10月19日(水)発売
価格:1,836円(税込)
Mastard Records / LNCM-1160

1. Holiday
2. anna
3. tower
4. Banoffee
5. Night cap
6. Black dot
7. Blue

イベント情報

『RAMMELLS「natural high」リリース インストアイベント』
2016年10月22日(土)18:00~
会場:東京都 渋谷 HMV & BOOKS TOKYO 7F イベントスペース

『ららぽーと豊洲 インストアミニライブ』
2016年10月29日(土)12:30~
会場:東京都 アーバンドックららぽーと豊洲 1F シーサイドデッキ メインステージ

『RAMMELLS 1st mini album "natural high" release tour』

2016年11月17日(木)
会場:福岡県 Queblick

2016年11月19日(土)
会場:大分県 club SPOT

2016年11月21日(月)
会場:大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE

2016年11月22日(火)
会場:広島県 CAVE-BE

2016年11月28日(月)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UP SET

2016年11月30日(水)
会場:新潟県 CLUB RIVERST

2016年12月1日(木)
会場:石川県 vanvanV4

2016年12月6日(火)
会場:宮城県 仙台 MACANA

2016年12月8日(木)
会場:東京都 渋谷 CHELSEA HOTEL

プロフィール
RAMMELLS
RAMMELLS (らめるず)

ギターの真田徹がSuchmosのYONCEらと組んでいたOLD JOEの解散後、自分の求める最高の音楽を実現させるために大学時代の先輩である黒田秋子(Vo,Key)、村山努(Ba)を誘って2015年8月に結成したバンドがRAMMELLS。2016年彦坂玄をドラムに迎え、ライブ活動を本格的にスタート。変幻自在のボーカルで表現される中毒性たっぷりのメロディーと個性溢れるリリックに、ロック、ファンク、ソウル、ジャズ、シューゲイザーなど様々な音楽性が絡み合った新世代オルタネイティブサウンドを響かせる。2016年10月19日デビューミニアルバム『natural high』をリリース。



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