SOIL&"PIMP"SESSIONSの約2年ぶりとなるニューアルバム『DAPPER』が完成した。今作はアジテーターである社長がコンポーズを担った楽曲が数多く収録されている。その結果、彼の真摯なミュージックラバー / ミュージックセレクター然とした視点がサウンドプロダクションに発揮されており、現在進行系のジャズやヒップホップ、R&Bなどを昇華した、今のSOIL&"PIMP"SESSIONSが鳴らすべき楽曲群が互いに共振するようにして有機的に連なっている。
そして、今作にはAwich、三浦大知、野田洋次郎(RADWIMPS)、Nao Kawamura、Shun Ikegai(yahyel)& Kiala Ogawa(Kodäma)、EGO-WRAPPIN'といった、日本の音楽シーンで独立した音楽力と立ち位置を示しているゲスト陣が参加しているのも大きなトピックである。
前作『BLACK TRACK』のリリース後、サックスの元晴が脱退。それに伴う充電期間や、テレビドラマ『ハロー張りネズミ』のサウンドトラック制作を経て、本作を完成させるまでの2年は、バンドにとって激動の時間だったともいえる。今回は社長がソロインタビューに応じてくれた。客演を招いた6曲を軸に本作の真髄を訊くだけではなく、彼の目に海外と日本の音楽シーンがどのように映り、またその耳にどのような音楽が響いているのかというところも語ってもらった。
SOIL&"PIMP"SESSIONSにとっての第1タームが終わり、セカンドシーズンに入ったという認識。
—前作『BLACK TRACK』(2016年4月)をリリース後、サックスの元晴さんが脱退(2016年10月)してからの約2年は、バンドにとって激動の時間だったのではないでしょうか。
社長:そうですね。『BLACK TRACK』のリリース後、SOIL&"PIMP"SESSIONS(以下、SOIL)にとっての第1タームが終わり、ライブ活動休止を挟んで、セカンドシーズンに入ったという認識で。ライブ活動の休止を余儀なくされた期間(2016年10月~2017年4月)から、「これから5人でどんな音を鳴らしていこうか?」って話し合いながら、ゼロから曲を作っていく作業を続けていました。
SOIL&"PIMP"SESSIONS。左から:みどりん(Dr)、タブゾンビ(Tp)、社長(Agitator)、丈青(Pf)、秋田ゴールドマン(Ba)
—確か、現体制で初めて録音した音源は、ペトロールズのカバーアルバム『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ』収録の“ホロウェイ”(2017年3月)でしたよね。当時はまだ、その先SOILとしてどういう音を鳴らしていくかは見えていなかったですか?
社長:あのときはまだ模索中でしたね。ライブ活動を再開する前のレコーディングだったし、とにかくあの曲は原曲が素晴らしいから、下手なことはせず素直にアレンジしようと思って(笑)。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“ホロウェイ”を聴く(Spotifyを開く)
—ブラックミュージックに多角的に接近することが大きなテーマでも、前作以上に今作『DAPPER』は、「DEATH JAZZ」というバンドの結成当初からのキャッチフレーズから解き放たれているなと思いました。むしろ「DEATH JAZZ」に新たな価値観を付与し、更新したと言ったほうがいいのかもしれない。
社長:いいことを言ってくれますね。これから「DEATH JAZZに新たな価値観を付け加えたアルバム」って言うことにします(笑)。DEATH JAZZという言葉は大事にしたいけど、完成したこのアルバムの音は真逆ですからね。
—それは1曲目の“A New Day”からあきらかで。あんなにオーガニックな感触のインストで幕開けするのは、驚きでもありました。アルバム全体を通してビートやサウンドプロダクションは、近年のヒップホップやジャズ、R&Bに目配せをしながら、今のSOILが鳴らす意義を重んじた音になっているなと思います。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“A New Day”を聴く(Spotifyを開く)
社長:今のSOILという意味では、メンバーが1人抜けたことはもちろんだけど、丈青が手をケガしたことも大きくて。やっとライブ活動を再開しようというタイミングで、丈青がピアノを弾けないということになった(参考記事:SOIL&"PIMP"SESSIONS・丈青に訊く、手の怪我はもう大丈夫?)。でも、バンドとしては前に進まなきゃいけないから。
今回、僕が作曲した曲が多いのは、そういう事情もあったんです。メンバーみんな曲を作るんだけど、結果的に僕の曲が数多く収録されることになりました。ライブでも、丈青の負担を減らすために僕がサイドギター的に鍵盤を弾く曲がちょっと増えていったんですけど、新しく作った曲も、丈青にあとでピアノを乗っけてもらおうという感じで僕がベーシックを作ったものが多いんですね。
センスももちろん重要だけど、僕も含め、めちゃめちゃ練習しなきゃなと思った。
—社長はSOILのアジテーターでありコンポーザーであると同時に、ずっとグッドリスナーでもあり続けていると思うんですね。今作は社長のグッドリスナーとしての視点、あるいはミュージックセレクターとしての感覚が大きく反映されていると思ったんです。
社長:まさにそれはあると思います。特にこのアルバムを制作している間、海外のジャズシーンも大きく変化して。UKは、よりDJと密接な関係を築くようになった。たとえば、もう解散してしまいましたけど、Yussef Kamaal(ヘンリー・ウーとユセフ・デイズのユニット)はトピックとして大きくて。生演奏でDJユースなビートとソリッドな音作りをしていて、UKにはそれに感化された音作りをするバンドが増えてきた。
一方、アメリカは引き続きロバート・グラスパーとカマシ・ワシントンが2大巨頭として引っ張っていて、ジャズとヒップホップがすごく近いところに位置しているシーンがある。それを踏まえて、ここ最近は特にミュージシャンの演奏スキル、テクニックがすごいなと思うんですよね。ある意味、曲がいいのは当たり前で、それをフィジカルで演奏できるほどの高いスキルを持った人々の曲は間違いないなと強く思うわけです。
—具体的に、社長が刺激を受けた高いスキルのミュージシャンというと?
社長:たとえばカリーム・リギンス(1975年生まれ、デトロイトを拠点に活動する)のビートとかね。彼はビートメイカーでもありドラマーでもあって、人々が彼のビートを聴いただけで狂喜乱舞する。
一方でホセ・ジェイムズ(1978年生まれ、現代ジャズシーンを牽引するボーカリスト)のツアーメンバーであるネイト・スミス。ホセが来日したときにBillboard Live TOKYOで行われたライブを観たんだけど、そのなかでネイト・スミスのドラムソロがあって。ひたすらエイトビートを叩くんですよ。でも、音色がジャズのエイトビートからSP1200(1990年代のヒップホップサウンドを彩ったサンプラーの名機)のそれに変わっていくんです。
—ああ、それはヤバいですね(笑)。
社長:でしょ?(笑) そこでお客さんが一斉に手を挙げ、声を上げるわけです。もうレベルが違うなと思って。やっぱり我々が日本にいてやるべきことは、そういう高みを目指すことだなと。センスももちろん重要だけど、僕も含め、めちゃめちゃ練習しなきゃなと思ったというか。
—あらためてそういう気づきがあった。
社長:そう。やっぱりテクニック的には全然向こうのミュージシャンに追いついていないし、説得力が違うなと。そういう思いがあって我々が今作でどういうレコーディングをしたかというと、生演奏なんだけど、それを細かくエディットするという手法なんです。絶対的なグルーヴを作るために、自分たちの音を加工するという発想で。レコーディングしたあと、僕が1回持ち帰って、パソコン上でエディット作業をしました。逆に言えば、今作は一発録りがないんですよ。
—とてもヒップホップ的な方法論ですね。まず作品でもって今後のライブで目指すべき目標値を提示するということですよね。
社長:そうとも言えるかもしれませんね。
—SOILにとって完全にニューフェイズですね。
社長:そうなんです。別バンドみたいな感覚もあるんですよ。それくらい、プレイヤーとして成長できる余地が、まだみんなにあったんだなって気づけました。「バカテク」とか言われることもありますけど、世界的な視野で見たら本当に全然下手ですからね。
今の日本には、20代の素晴らしいミュージシャンが多いですよね。レベルが高すぎると思う。
—それを、これだけ海外でも確かな評価を得ているSOILが言うのはリアルだなと思います。
社長:テクニックだけのバンドであるべきではない、という葛藤もあるんですよ。上手・下手だけが音楽のいい・悪いではないと思うから。でも、とりわけダンスミュージックに関しては、グルーヴでオーディエンスの身体が動くか動かないかが決まってくるから、グルーヴという絶対的な指標がある。
それに、やっぱり僕らはリアルタイムで海外でもツアーをしている以上、世界のシーンから置いていかれたくない。第一線の人たちの音を真似するのではなく、今世界のミュージシャンたちがどういう動きで音楽を奏でているのかを常に敏感に見たうえで、個性を出していかなきゃなと思いますね。
—今作は日本の音楽シーンでそれぞれが独立した音楽力と立ち位置を示しているゲスト陣が多数参加しているわけですが、今回SOILが特に20代のアーティストたちをフィーチャーすることで、ガラパゴス云々で語られる日本の音楽シーンに海外との橋が架かるような感覚も覚えるというか。
社長:本当に今の日本には、20代の素晴らしいミュージシャンが多いですよね。レベルが高すぎると思う。我々の世代のようになんでも器用にこなせるというわけではないと思うけれども、自分たちがやりたいジャンルの音作りやグルーヴに関しては、ものすごいレベルに達していると思いますね。
特にyahyelは、ドラムの(大井)一彌くんが正式加入してからすごい進化を遂げていますよね。山田健人くんというビジュアルのキーパーソンがいることも含めて、トータルでレベルが違うなと。WONKもどんどんバンドとしてよくなっているし。yahyelのMONJOEくん(杉本亘)と一彌くんがやっているDATSも面白い。
メンバーは被ってるけど違うプロジェクトをやっているバンドが今いっぱいいる感じも、すごくいいなと思うんですよね。たとえば、SANABAGUN.とSuchmosとか。SANABAGUN.の高岩(遼)くんなんて、ああいうレベルのフロントマンはしばらくいなかったなと思いますし、新しく入ったベースの大林(亮三)くんのことは個人的にずっと注目していたんですよね。
タブゾンビはFolder5の頃から三浦大知くんに注目していたみたいで。「和製マイケル・ジャクソンだね」って。
—ここからは『DAPPER』のゲスト参加曲について1曲ずつ訊いていきたいと思います。まずは2曲目の“Heaven on Earth feat. Awich”。Awichとの出会いは?
社長:Awichは彼女のアルバム『8』(2017年8月)にタブくん(タブゾンビ)が参加したのをきっかけに知り合ったんです。タブくんがAwichとのレコーディング翌日に「ヤバいボーカリストがいるから、絶対にSOILで一緒にやりたい」って言って、音を聴かせてくれて。彼女が参加しているヒップホップクルー、YENTOWNのミュージックビデオを見てもすごいなと。こんなフロウを日本人が出せるのかって思ったんですよね。
—本当に誰にも似ていない、色濃い血と土を感じさせるフロウですよね。
社長:そう。彼女は沖縄で生まれて、アトランタに渡ってから、波乱万丈な経験を積んできて。今回リリックを英語でお願いしたんだけど、まさかこんなに赤裸々に彼女の半生を綴ってくるとは、と思いましたね。「客演でそれやるの!?」みたいな。リリックにはかなり食らって、送ってきてくれた日はなにもできなかったくらいに衝撃的で。そのリリックをリアルなフロウに落とし込んでくれました。
サウンド面でいうと、今の時代はトラップっぽいビートが主流なんだけど、Chaki(Zulu / Awichのプロデューサー)から「この曲は思いっきり1990年代ヒップホップみたいなビートにしたほうがかっこいいんじゃないか」という提案をもらって。それがキーになりましたね。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“Heaven on Earth feat. Awich”を聴く(Spotifyを開く)
—続いて“comrade feat. 三浦大知”。そもそも三浦さんとはどういう流れで交流が始まったんですか?
社長:まず、僕とタブくんは大学が一緒なんだけど、大学の同級生に、2人とも信頼している耳のいいやつがいて。そいつが、大知くんがものすごいダンススキルを発揮しているリハーサル動画を教えてくれたり、タブくんはFolder5の頃から大知くんに注目していたみたいで。「本当に和製マイケル(・ジャクソン)だね」って言っていたんですよ。
社長:で、『BLACK TRACK』のリリースタイミングで、偶然テレビ局で会うことができてご挨拶したんですね。そしたら大知くんも、「SOILは昔から好きで聴いてます」と言ってくれて。その後、彼のアルバム(『HIT』、2017年3月)に参加してほしいというオファーをいただいて、“Rise Up feat. SOIL&"PIMP"SESSIONS”が生まれたんです。さらにその後『ミュージックステーション』(テレビ朝日系列)の特番で、彼の“Cry & Fight”をSOILで生演奏したんですけど、やっぱりすごいボーカリストだなと思って。
今回はこちらからオファーさせていただいて、スケジュールがタイトななか快諾してくれて実現しました。曲としては、ちょっと大人な三浦大知を見せられたらいいんじゃないかというアイデアが出て。声を張るというよりも低めな感じで歌うとか、メロウな感じだったり。
—すごくアンセム感のある曲だなと思いました。1990年代的なスクラッチの使い方も印象的で。
社長:スクラッチをちょっと大きめの音で多めに入れてみました。1990年代のヒップホップやアシッドジャズのパーティーアンセムにはスクラッチがよく入ってたりしたし、そういう雰囲気の曲にできたらなと思って。曲を作ってるときにずっと、The Notorious B.I.G.の“Big Poppa”のミュージックビデオが頭のなかに流れていて(笑)。
—仲間と握手して別れるというリリックの内容も、SOILのバンドとしてのストーリーを踏まえるとグッとくるものがあるなと。リリックの内容は三浦さんにリクエストしたんですか?
社長:しましたね。レコーディングの順番としては、これを最後に録ったんですけど、最初にまずAwichの曲が完成していて。彼女のリリックの内容が家族愛を描いていて、偶然、アルバム全体としても仲間、家族愛みたいなものがリリックに表されていたんですよね。
—偶然にもシンクロしていったと。
社長:そうなんです。で、最後の曲だけはテーマをこちらからリクエストをしました。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“comrade feat. 三浦大知”を聴く(Spotifyを開く)
僕は野田洋次郎くんの声をアシッドジャズの文脈で捉えている。
—続いて“ユメマカセ feat. Yojiro Noda”。テレビドラマ『ハロー張りネズミ』(TBS系列)の主題歌であり、シングルとしてもリリースされた曲ですが、個人的にはまだまだ過小評価されているなと思っていて。素晴らしい化学反応が起きていると思います。
社長:めっちゃいい曲ですよね(笑)。野田くんとは、この曲を制作する前まで面識がなかったんです。大根仁さん(『ハロー張りネズミ』の脚本・演出担当)とやり取りをするなかで提案をいただいて。もちろん、一方的には知っていたし、すごく耳に残る、印象深い声の持ち主だから、このオケにハマるだろうなと思って。
—SOILと野田さんからのアシッドジャズへのアンサーを感じました。あとはちょっとGファンク感もあるなと。
社長:僕は野田くんの声をアシッドジャズの文脈で捉えていて。ちょっと早口な歌いまわしとかも、「こういうの、昔アシッドジャズにあったよな?」と思ったんですよね。歌とラップの間を取る感じのフロウ。そういう解釈でメロディーを書いたんですけど、それを全部説明しなくても野田くんが理解してくれてラップっぽく歌ってくれたり、歌詞をはめてきてくれたりして。僕が書いたメロディーを素晴らしい形でトリートメントしてくれて、さすがだなぁと。彼の懐の深さを感じました。音楽の知識も深いですしね。はるか斜め上みたいな、すごい完成形を作ってくれました。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“ユメマカセ feat. Yojiro Noda”を聴く(Spotifyを開く)
僕が2017年に一番多く観たライブはNao Kawamuraさんかも。
—そして立て続けにくるのが“Drivin' feat. Nao Kawamura”です。絶妙な流れですね。
社長:DJだったらこの2曲を間髪入れずに繋ぐと思うんですよね。
—Naoさんは、いわゆるJ-POP的なディーバの概念を超越した歌の魅力を表現できるシンガーですよね。
社長:まさに。2016年の『FUJI ROCK FESTIVAL』でyahyelがROOKIE A GO-GOに出たとき、同じ日に彼女も出演していて。SuchmosのTAIHEIくんがゲストでキーボードを弾くというので、Naoさんのライブを観に行ったんですよ。
そこから交流が始まって、僕が2017年に一番多く観たライブはNaoさんかも。その都度いろいろダメ出しもしているんだけど(笑)、どんどんライブがよくなっていって。楽曲としては、インストと歌モノの中間くらいに位置するようなものを作りたいなと思って、デモができたときにNaoさんの声が浮かんだんですよね。
—まさにオケに対するコーラスが気持ちのいい曲で。
社長:Naoさんに「一緒にコーラスができる声の馴染みがいい人いる?」って相談したら、ものんくるの(吉田)沙良さんと、いつもNaoさんのライブでコーラスをしてる大坂朋子さんをブッキングしてくれて。Naoさんが見事に3人のラインを書いてきてくれました。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“Drivin' feat. Nao Kawamura”を聴く(Spotifyを開く)
—11曲目には、yahyelのボーカリストも招いた“Glitch feat. Shun Ikegai from yahyel & Kiala Ogawa from Kodäma”が収録されています。
社長:ガイくん(池貝峻)とはずっと一緒にやりたいなと思っていて。お互い名古屋でライブがあったとき、打ち上げ後に合流して、そこで一緒にやりたいということと、それも男女デュエットでやりたいということを伝えました。そこで「Kialaとデュエットってのはどうかな?」という話になったんです。
Kodämaとyahyelって、それぞれ最初のEPをHOT BUTTERED RECORDという同じレーベルからリリースしてるんですよ。なので2人は普段からも交流があって、「たぶんKialaの声と俺の声、馴染みがいいと思いますよ」ってガイくんが言ってくれて。
—ガイくんはなかなかそんなこと言わないイメージがありますよね。自分の歌の世界であり哲学が揺るぎないから。
社長:そうですよね。だから嬉しかったです。この曲も基本ワンループなんだけど、ひとつ強く思っていたのは、Bメロをスカスカにしておいて、サビにだけベースを強く入れるというコンセプントで。あと、ループに対して、ドラムのみどりんが後ろでナイスな暴れ方をしてくれているというのも曲のキャラクターになってますね。
—2人のボーカルの交わり方も素晴らしいですね。
社長:最高にハマりましたね。あまりこういうことを言うのはよくないかもしれないけど、個人的にはこの曲を一番聴いてます。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“Glitch feat. Shun Ikegai from yahyel & Kiala Ogawa from Kodäma”を聴く(Spotifyを開く)
AwichとEGO-WRAPPIN'が、示し合わせてないのに、シンクロしてアンサーを返してるみたいになってるんですよね。
—そして、ラストの“drifter feat. EGO-WRAPPIN'”です。満を持してのコラボレーションですよね?
社長:もう、満を持してですよ。EGO-WRAPPIN'とは2003年、まだ僕たちが「SOIL&HEMP SESSIONS」名義だったときに、西麻布のYELLOW(2008年6月に閉店)で対バンしたのが最初で。それからずっとほどよい距離感でいて。実は過去にもEGO-WRAPPIN'をイメージして曲を書いたことがあったんですけど、なかなかスケジュールやタイミングが合わなくて、やっと今回実現しました。
—SOILとEGO-WRAPPIN'とのコラボレーション曲ということで、多くの人が想像するのはアッパーな曲だと思うんですね。
社長:そこね!
—でも、この曲はトラップのフィーリングを取り入れた現代的なビートでメロウで深淵なサウンドスケープを描いていて。そこにグッとくるというか。
社長:そこは重要なポイントで。トラップに上手いことジャズを混ぜられないかなと思って作ったビートに、自分の手癖のコード進行を弾いたら、ハマって。しかも、そのコード進行のなかにメロが内包されていて。一番いい状態で曲が降りてきた感じでした。
デモをメンバーに聴いてもらったら、ダブくんが「これ、よっちゃん(中納良恵。EGO-WRAPPIN'のボーカリスト)の声がハマるんじゃない?」って言ってくれて。僕は森くん(雅樹 / EGO-WRAPPIN'のギタリスト)とたまに飲むんですよ。なので、CD-Rにデモを焼いて、「SOIL × EGO Mellow」って盤面に書いて、森くんがよく行くバーまで持って行ったんです。で、そのCD-Rを出したら、「え、メロウなん?」って。それで、他のお客さんがいなくなったタイミングで曲をかけてもらったら、「ああ、ええやん」「やっぱメロウやな。やろう」って言ってくれたんですよ。
—メロウな面が、森さんのアンテナに引っかかった。
社長:そう。今の彼らのモードもそっち寄りだったからハマったんじゃないかな。もしこれで僕らがアッパーでイケイケな曲を作っていったら、完成に至らなかったと思う。
SOIL&"PIMP"SESSIONS“drifter feat. EGO-WRAPPIN'”を聴く(Spotifyを開く)
—歌詞自体もダブ的な深淵さを内包しているなと思ったんですね。中納さんの母性力みたいなものをものすごく感じます。
社長:一応、こちらからキーワードをいろいろ投げたんだけど、やっぱりそれをはるかに上回る言葉のチョイスをしてくれました。レコーディングのときに歌詞を持ってきてくれて、「あんな、地球を水槽に見立ててん」って言われて。もう、それだけでキュンと射抜かれますよね(笑)。そんなの、悪いわけないじゃん! って。
Awichの<love once, love forever>というパンチラインに対して、よっちゃんが偶然にも<あまりにも一途な愛が 流れだしてる>と書いてくれていて、お互い示し合わせてないのに、シンクロしてアンサーを返してるみたいになってるんですよね。アルバムってよく、1本の映画を撮るような感じで制作するっていうじゃないですか。今作は特に生活のすぐ横にあるサウンドトラックみたいな感じで聴いてもらえたらという思いは強いし、それを深い形で表現できたと思いますね。
—今後のSOILの音楽性を占う意味でも、すごく可能性が広がったと思います。
社長:そう思います。実はもうちょっとハイテンションな曲もできていたんですよ。新しいアイデアもあるので、次の作品にはそういう曲を入れられたらいいかなと。今までやってきたことと新しいアプローチが上手く混ざっていけたらいいなと思います。
あとは、ツアーですね。今までは自分たちの音やパフォーマンスありきでレコーディングしてきたけど、今度はこのアルバムに自分たちが追いつかなきゃいけないから。楽しみにしていてください。
SOIL&"PIMP"SESSIONS『DAPPER』ジャケット(Amazonで見る)
- リリース情報
-
- SOIL&"PIMP"SESSIONS
『DAPPER』初回盤(CD+DVD) -
2018年5月9日(水)発売
価格:3,888円(税込)
VIZL-1327[CD]
1. A New Day
2. Heaven on Earth feat. Awich
3. Explorer
4. comrade feat. 三浦大知
5. Deform Reform
6. Bond
7. Interlude
8. ユメマカセ feat. Yojiro Noda
9. Drivin' feat. Nao Kawamura
10. Dusk
11. Glitch feat. Shun Ikegai from yahyel & Kiala Ogawa from Kodama
12. Pride Fish Ball
13. Method
14. drifter feat. EGO-WRAPPIN'[DVD]
『LIVE SESSION at Little Nap MUSIC STAND』
1. Awesome Knowledge
2. Heaven on Earth feat. Awich
3. A New Day with Takeshi Kurihara
・“ユメマカセ feat. Yojiro Noda”ミュージックビデオ
- SOIL&"PIMP"SESSIONS
-
- SOIL&"PIMP"SESSIONS
『DAPPER』通常盤(CD) -
2018年5月9日(水)発売
価格:3,132円(税込)
VICL-649531. A New Day
2. Heaven on Earth feat. Awich
3. Explorer
4. comrade feat. 三浦大知
5. Deform Reform
6. Bond
7. Interlude
8. ユメマカセ feat. Yojiro Noda
9. Drivin' feat. Nao Kawamura
10. Dusk
11. Glitch feat. Shun Ikegai from yahyel & Kiala Ogawa from Kodama
12. Pride Fish Ball
13. Method
14. drifter feat. EGO-WRAPPIN'
- SOIL&"PIMP"SESSIONS
- イベント情報
-
- 『リリースワンマンライブ「DAPPER ONE」』
-
2018年5月10日(木)
会場:東京都 渋谷 WWWX - 『TOUR 2018”DAPPER”』
-
2018年6月8日(金)
会場:北海道 札幌 cube garden2018年6月15日(金)
会場:福岡県 福岡 イムズホール2018年6月16日(土)
会場:岡山県 岡山 YEBISU YA PRO2018年6月17日(日)
会場:広島県 広島 CLUB QUATTRO2018年6月21日(木)
会場:宮城県 仙台 darwin2018年6月23日(土)
会場:静岡県 浜松 Live House 窓枠2018年6月28日(木)
会場:愛知県 名古屋 ボトムライン2018年7月8日(日)
会場:大阪府 味園ユニバース2018年8月1日(水)
会場:東京都 中野サンプラザ
- プロフィール
-
- SOIL&"PIMP"SESSIONS (そいる あんど ぴんぷ せっしょんず)
-
メンバーは、タブゾンビ(Tp)、丈青(Pf)、秋田ゴールドマン(Ba)、みどりん(Dr)、社長(Agitator)。2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンが集まり結成。ライブを中心とした活動を身上とし、確かな演奏力とクールな雰囲気をただよわせながらも、ラフでエンターテイメント、バースト寸前の爆音ジャズを展開。2005年には英BBC RADIO1主催の『WORLDWIDE AWARDS 2005』で「John Peel Play More Jazz Award」を受賞。以降、海外での作品リリースや世界最大級のフェスティバル『グラストンベリー』『モントルージャズフェスティバル』『ノースシージャズフェスティバル』など、数々のビッグフェスに出演、これまでに29か国で公演を行うなど、ワールドワイドに活動を続けている。
- フィードバック 2
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-