ORESAMAが作る非日常の世界 ぽん×うとまるのアートワーク談義

ORESAMAが楽曲やライブで提示する非日常のワンダーランド。それを作り上げるにあたって欠かせないのが、イラストレーター / アートディレクター・うとまるの存在だ。彼女の描き出すポップでカラフルなイラストは、ジャケット、ミュージックビデオ、ライブでの映像演出と、メディアを横断しながらORESAMAのイメージを支え続けてきた。

結成当初から存在したという“ワンダーランドへようこそ”が満を持してリリースされるこのタイミングで、デビュー時からの付き合いであるORESAMAのぽん、うとまるの対談が実現。お互いのルーツや価値観について、過去のアートワークやミュージックビデオを振り返りながら、じっくりと語り合ってもらった。

ORESAMAの曲を初めて聴いたときには、すでに完成してる感じがあった。(うとまる)

—ORESAMAのアートワークにはデビューから一貫してうとまるさんのイラストが使われていて、今や「ORESAMAといえば、うとまるさん」みたいな感じもありますよね。

ぽん:1stシングル(2015年発表の『オオカミハート』)をリリースするときにご紹介いただいて、初めてイラストを見たときすぐに惚れ込んで、ずっとお願いしています。でも最初、うとまるさんっていうアーティストの人物像を暴いてはいけないものだと思っていて……。

うとまる:どうしてですか?(笑)

ぽん:イラストとお名前からは性別も、年齢も、どういう方なのかもわからなかったし、聞いてはいけないものだと勝手に思い込んでいて(笑)。なので、初めてお会いしたときに、こんなに柔らかい雰囲気の女性の方なんだって、驚いた記憶があります。

うとまる:特に考えてそうしようとしてたわけではないんですけどね(笑)。

CAP:左から:ぽん(ORESAMA)、うとまる

うとまる:ORESAMAの曲を初めて聴いたときには、すでに完成している感じがあって、ここに絵をつけられるのは楽しそうだなって思いました。ポップでカラフルな雰囲気は私の作風とリンクする部分もあったし、当時ぽんちゃんは金髪で、キャラクターとしても絵にしやすいなと。

ぽん:小島くん(ORESAMAのギター&サウンドクリエイター)がずっとサングラスをしているのは、うとまるさんのなかでのイメージですか?

うとまる:イラストで2人を描くにあたって、漫画のキャラクターみたいにパッと覚えられるようにしたかったので、金髪のぽんちゃんに対して、小島くんには試しにサングラスを着けてみたんですけど……それが延々と今も続いてるっていう(笑)。

『オオカミハート』リリース時のアートワーク

—ぽんさんが、うとまるさんのイラストをいいなって思ったのは、特にどんなところでしたか?

ぽん:まず、テイストが大好きなんですよね。子どもの頃によく見ていた1980年代とか1990年代のアニメに通じるものがあるというか。懐かしさも感じるんですけど、今の香りもするハイブリッド感が「相性いいね」って言っていただける一番の理由なんじゃないかなって。女の子が着ている服も本当に可愛くて、そのセンスや色彩感覚も、懐かしさと新しさを感じさせる要因のひとつだと思う。だから、うとまるさんの目で世界を見てみたいなって、すごく思います。

うとまる:ありがとうございます。めちゃめちゃ嬉しいです(笑)。

ぽん:いろんな色がひとつの絵のなかに散りばめられているのに、まとまって見えるのもすごくよくて。ORESAMAに興味を持ってくださった方のなかで、うとまるさんのイラストから入ってくださった方もとても多いですし……好きなところを言いはじめたらキリがないです(笑)。

うとまるのイラストレーション集『Something Wild』。2018年11月9日のライブ会場販売分に付属した会場限定特典のブックカバー仕様

女の子って、自信を持ったら最強じゃないですか?(ぽん)

—ぽんさんから「1980年代や1990年代のアニメに通じる」というお話がありましたが、実際にうとまるさんの作風はどんなものに影響を受けて作られていったのでしょうか?

うとまる:私はどちらかというと1980年代に活躍した海外のイラストレーターに好きな人が多くて、そういった作家たちから影響を受けています。当時の日本のイラストレーターたちもおそらく同じように同時代の海外の作家からインスピレーションを得ていたんじゃないかなと。

たとえば、私はウィリアム・スタウトというイラストレーターが大好きなんですが、おそらく『Dr.スランプ』の鳥山明もスタウトのことが大好きに違いないと思うんですよね。私は『Dr.スランプ』も大好きなので、どちらからも大きな影響を受けています。ぽんちゃんはどういうアニメを見てたの?

ぽん:私は人生のなかで一番好きな作品が『うる星やつら』(放送期間は1981年10月~1986年3月。原作は高橋留美子)で、ずっとラムちゃんが好きだったので、うとまるさんの描く女の子のラインもすごく好きで。かわいいんだけど、色気があるというか。

うとまる:ラムちゃんいいですよね。ラムちゃんって、男ウケや世間ウケを考えるんじゃなくて、自分の思うままにガーッと行動するじゃないですか? ああいう感じはすごく好きです。

ぽん:私もそこにとても憧れるんですよね。自分を信じている感じというか、その強さが可愛いし、憧れでもあって。

うとまる:自分の作風とはちょっと違うんですけど、私は『少女革命ウテナ』(1997年放送のテレビアニメ)が超好きで、あれも主体性のある主人公の物語なんですよね。高橋留美子のキャラクターもそういう芯の強いところがいいなって。

ぽん:我が道を突き進むというか、『うる星やつら』はそれが顕著ですよね。女の子って、自信を持ったら最強じゃないですか?

私は自信がない側の人間なので、その強さにすごく憧れていて、そういう等身大の自分が歌詞にも表れることが多いかなって思います。私の歌詞には、自分を励ますというか、自分の背中を押すような言葉も多いんですけど、それが結果として、聴いてくれる女の子の背中を押せていたらいいなって思っているんですよね。

私は自分の日常をベースに、いろんな世界を見に行くっていうスタンスがすごく好きなんです。(ぽん)

うとまる:でもどうやって、その時代のアニメを見てたんですか?

ぽん:子どもの頃は家に1人でいることが多くて、CSのアニメチャンネルをずっと見てたんです。あの頃のアニメってわかりやすいものも多いじゃないですか? 1話完結だったり、いろんな世界に連れて行ってもらえるのがすごく楽しくて。セル画の感じも人間味があって、今もそういう作風の作品を見るとワクワクします。

ぽん:それにバブル期に対する憧れもあったと思うんですよね。景気がいい感じというか、はちゃめちゃな感じ。

あとは、ずっとアニメしかやらないっていうのも、子どもとしては信じられなくて。普通は夕方18時から2本やって、次はニュースになってしまったりするけど、ずっとアニメばっかりやっているっていうのは夢のようで、すごく楽しかった記憶がありますね。『うる星やつら』の舞台は友引町っていうんですけど、私は子どもの頃からずっと友引町に住みたいと思っています(笑)。

—「いろんな世界に連れて行ってもらえる」っていうのは、今のORESAMAの表現ともリンクがあると言えるかもしれないですね。友引町への憧れも含めて。

ぽん:そうですね。私は自分の日常をベースに、いろんな世界を見に行くっていうスタンスがすごく好きなんです。ORESAMAのライブでも、みんなの生活がありつつ、ほんの少しの間、別の世界を、ワンダーランドを見せたい。自分たちにとっても、そういう場所でありたいし、そこに共感してくれる人もたくさん遊びに来てくれているんじゃないかって思うんですよね。

“銀河”のMVに出てくるモンスターは1950年代の低予算のモンスター映画がモデルになってるんです。(うとまる)

—うとまるさんの作風は、映画からも大きな影響を受けているそうですね。

うとまる:そうですね。アニメーションも好きですが映画からの影響も大きいと思います。

—1950年代のSFと、1980年代のホラーがお好きだとか?

うとまる:他にもギャング映画やミュージカル映画なんかも好きなんですが、SFとホラーは好きな作品が多いです。そういうジャンル映画って、大きい嘘が絶対必要なんですよね。人が死んだり、モンスターが出てきたりするシーンで、当然ですけど、実際に人が死んだり実在しないモンスターを連れてくるわけにはいかないですよね。それを撮るためには必ずギミックが必要で、想像もできない仕掛けとアイデアで驚くような映像を見せてもらうと感動します。現実にはありえないめちゃくちゃな色彩をライティングで表現したりとか、そういう表現主義的な作品が特に好きです。モンスターのデザインも、ちょっとコミカルだったり、デフォルメが効いてるデザインのものが好きですね。

ぽん:“流星ダンスフロア”のミュージックビデオ(以下、MV)に出てくる星人間もそういう感じですか?

うとまる:星人間はなんだろう、偶然出てきた何かですが(笑)。わかりやすいところだと、“銀河”のMVに出てくるモンスターは1950年代の低予算のモンスター映画がモデルになってるんです。“銀河”の世界観は、そういうモンスター映画とか、パルプ雑誌の表紙みたいな、カラフルなSFの世界観にしたいと思ったときに、1950年代のモンスターの感じが合いそうだなって思って、オマージュを入れたんです。

ぽん:リアルなタッチから可愛くなるのが最高です!

“オオカミハート”は、こんなふうに音と私のイラストを合わせてもらえるんだって、感動が大きくて、すごく思い出深いです。(うとまる)

—やはり、映画好きのうとまるさんからすると、MVの仕事は楽しいですか?

うとまる:映像は楽しいですね。最初の“オオカミハート”は、今見るとイラストが甘いところもあるんですけど、こんなふうに音と私のイラストを合わせてもらえるんだって、感動が大きくて、すごく思い出深いです。

ぽん:“オオカミハート”はフルサイズがYouTubeに上がっていなくて、ラストの夏祭り感のあるイラストや、お正月感のあるイラストがとても好きだったのに、そこがみんなに見せられないことにずっと悶々としていたんですけど、『Hi-Fi POPS』(2018年リリースのメジャー1stアルバム)の初回盤にこれまでのMVを全て収録していただけたので……その気持ちは成仏しました(笑)。

—“ワンダードライブ”のMVからは、実写との融合がスタートしましたね。

ぽん:“ワンダードライブ”は私の実写からうとまるさんのイラストになったり、その逆もあったり、うとまるさんの世界と共演している感じで、とても感動しました。あと、“Trip Trip Trip”の中盤くらいで、うとまるさんに描いていただいたキャラクターが下からワーっと出てきて、私とダンサーさんが真ん中で踊るシーンがあって。

うとまる:あのぎゅうぎゅうにいろんなイラストが入ってる感じが私もすごく好きですね。

うとまる:MVを作るときは、まず曲から映像のコンセプトを決めて、ぽんちゃんたちの衣装を見ながら「この色と形ならこういう世界が合うかな」という感じで、キャラクターイラストとサブのイラストをいっぱい作ります。監督である映像作家の佐伯(雄一郎)さんがモーションを作ってくれるので、それを見ながら一緒に詰めていく感じで完成させました。3DCGとかも、すごく楽しいですね。

ORESAMAのときはポップな絵を描いてくださっているけど、うとまるさんご自身の作品のときは、女の子も鋭い顔つきが多い印象です。(ぽん)

—2月2日に新木場STUDIO COASTで開催されるワンマンライブ『ワンダーランドへようこそ!~in STUDIO COAST~』を前に、1月3日に配信シングル『ワンダーランドへようこそ/秘密』が配信されました。“ワンダーランドへようこそ”は結成当初からあった曲で、満を持してのリリースになりますね。

ぽん:ライブではちょこちょこ演奏していたり、オープニングのBGMとしても使っていました。なので、知っている人は「やっとリリースされるのか!」と思ってくれるだろうし、知らなかった人も「イベントのタイトルになってる曲はどんな曲なんだろう?」って楽しみにしてもらえると思うし、早くみんなと一緒にライブで歌って踊りたいです。

—リリースの発表と合わせて、新たなビジュアルも公開されました。

うとまる:「ワンダーランド」っていう言葉がまずあったので、どこか別の世界に繋がる扉っていうイメージなんですけど、私のなかでの「ORESAMAの王道」みたいな感じのイラストになったと思います。ポップで、色彩豊かで、ちょっとSFっぽい要素がある、賑やかな感じ。

ORESAMA『ワンダーランドへようこそ!~in STUDIO COAST~』ビジュアル

ぽん:小島くんはいつも楽屋で本当にこの体勢でギターを弾いてるので、すごくリアル(笑)。こういう衣装も映画からのインスピレーションが大きいんですか?

うとまる:具体的に何かというわけではないですが、映画やアニメの影響は大きいと思います。ファッションはそんなに自信ない分野なんですよ。

ぽん:え、そうなんですか!

うとまる:『バーバレラ』(1968年に映画化もされた、ジャン=クロード・フォレ原作のSFコミック)のセクシーな宇宙服のコスチュームとか、映画のイメージはあるんですけど、ORESAMAで服を描く機会がたくさん増えたから、リアルなファッションの知識は勉強中なんです。

—ぽんさんを描くことが、うとまるさんにとって勉強になっているんですね。

うとまる:そうなんです。ORESAMAとの仕事を重ねていくなかで、2人のイメージが私のなかでどんどん膨らんで、実際に2人から受けるイメージと、私の好きな世界観とが、だんだん混ざってきてますね。“オオカミハート”の頃は、曲のイメージを反映させつつ、私の好きな感じでやっていたけど、だんだん映像に実写が入ってきたりして、今はORESAMAの世界と私のイラストがちょうどいいバランスにミックスされてきてると思います。

うとまる『The Holiday』(2016)
うとまる『BFF』(2016)

ぽん:確かに、うとまるさんご自身の作品のときは、女の子も鋭い顔つきが多い印象です。ORESAMAのときはポップな絵を描いてくださっているけど、“オオカミハート”のときはもうちょっと鋭かったから、それがだんだん変わってきているっていうのは、うとまるさんのなかのORESAMA像がだんだん変化してきているのかなと思っていて。

うとまる:はい、その感じはありますね。

—徐々に本人とイラストが近づいてるっていうのは面白いですね。そう思って、過去の作品を見返すと、きっとまた新たな発見があるでしょうし。では最後に、2月2日のワンマンに向けて、改めて意気込みを話していただけますか?

ぽん:私たちのワンマンとしては過去最大規模ですし、絶対成功させたいと思っています。(STUDIO COASTには)一度イベントで出演させていただいたことがあるんですけど、低音の感じもすごくよくて、チームのみんなで「ここでワンマンができたら最高だね」と話していたので、それが実現できるのは本当に嬉しいです。演出についてもこれからさらに話し合いつつ、演奏も含め今までをさらに超えたワンダーランドを作るつもりなので、ぜひ遊びに来ていただければと。

—会場が大きくなれば、さらにいろんな演出もできますよね。そのなかには当然、うとまるさんのイラストも含まれているでしょうし。

うとまる:演出面でバックアップできるようなこともできたらいいですね。ライブに来た人がもっとORESAMAの世界観に没入できるように、映像はもちろん、ステージのセットとか、そういうこともいずれやってみたいなって思います。

ぽん:ライブで本物の星人間が動き出したら面白いですよね!

リリース情報
ORESAMA
『ワンダーランドへようこそ/秘密』

2019年1月3日(木・祝)配信

1. ワンダーランドへようこそ
2. 秘密

イベント情報
ORESAMA
『ワンダーランドへようこそ~in STUDIO COAST~』

2019年2月2日(土)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST

プロフィール
ORESAMA (おれさま)

渋谷から発信する音楽ユニット。80s'Discoをエレクトロやファンクミュージックでリメイクしたミュージックを体現!その新感覚はイラストレーター「うとまる」氏のアートワークやミュージックビデオと相乗効果を生んで新世代ユーザーの心を捉えている。2018年4月、メジャー1stアルバム「Hi-Fi POPS」をリリース。

うとまる

日米のポップカルチャーの影響を色濃く受けたキャラクター造形と色彩表現が特徴の作家。CDジャケット、MV、雑誌への作品提供から、キャラクターデザイン、コスチューム原案、漫画制作、プロダクト開発など幅広く活動中。アメコミを彷彿とさせるポップなイラストレーションで、ポップカルチャーシーンで活躍するアーティストへのアートワーク提供も行なう。クリエイティブチーム《POPCONE》所属。



記事一覧をみる
フィードバック 2

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • ORESAMAが作る非日常の世界 ぽん×うとまるのアートワーク談義

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて