BiSHのアユニ・Dによるソロバンドプロジェクト、PEDROが、8月28日に1stフルアルバム『THUMB SUCKER』をリリースした。
今年7月からは初の全国ツアー『DOG IN CLASSROOM TOUR』も行ってきたPEDRO。アルバムのレコーディングにも、ツアーでも、田渕ひさ子(NUMBER GIRL、toddle)がサポートギタリストとして大きな役割を果たしている。それだけでなく、田渕ひさ子との出会い、NUMBER GIRLというバンドとの出会いは、アユニ・D自身にとって人生の大きなターニングポイントになったようだ。
今回の記事ではアユニ・Dと田渕ひさ子との対談が実現。昨年のライブからアルバム制作までの流れ、ツアーの裏側と共に、再結成後の今、改めてNUMBER GIRLというバンドが与えた影響を語ってもらった。
田渕さんと出会ってからNUMBER GIRLのライブ映像を見て、「バンドってこんなに格好いいんだ」と衝撃を受けたんです。(アユニ)
―まずは昨年9月にPEDROが初めてライブしたときの話を振り返ってもらえればと思うんですが、終わってどう感じました?
アユニ・D(以下、アユニ):正直、いっぱいいっぱいでした。「楽しかった!」という思いは一切なくて。それまで必死な毎日を過ごしてたんで、終わっての解放感はありました。
―『zoozoosea』の初回限定盤に収録されたドキュメンタリー映像にもありましたが、PEDROはそもそもBiSHのマネージャーの渡辺淳之介さんに「やれ」と言われて、無茶ぶり的に始まったバンドだったわけですよね。
アユニ:はい。
―実際にやってみて、どういうものを得たと思いますか?
アユニ:最初のライブをやるまでは、自分のこと……歌を覚えたりベースを練習したりするのでいっぱいいっぱいだったんです。で、ライブが終わってから、ギターを弾いてくださった田渕さんのことをもっと深く知ろうと思ってNUMBER GIRLのライブ映像を観たら、衝撃を受けてしまって。「こんな格好いい女性がこの世に存在するんだ」って思った。そこからすごく好きになって。その瞬間で、自分の人生観とか、音楽に対しての思いも全く変わったんです。
―どういう変化だったんですか?
アユニ:もともと私は音楽にあまり興味がなくて、バンドのライブもほとんど観たことがなくて。でもNUMBER GIRLを観て「バンドって、こんなに格好いいものなんだ」って思ったんです。
そこから掘り下げて、DVDとか本とかも買って。田渕さんの音楽のルーツになったものや、コラムに出てくる他の海外アーティストも調べて聴くようになって。そこで「あ、自分ってこういう音楽が好きなんだ」と気付いた。音楽の感じ方が180度変わった感じがあったんです。
―なるほど。言ってみれば半ば無理やりバンドをやらされて、その隣にいた人が憧れの人だった、と。大袈裟に言うと、初めて音楽と出会った、みたいな実感があった。
アユニ:大袈裟でなくそういう感じです。本当に特殊だと思いますし、運がいいですよね。
SpotifyでNUMBER GIRL『LIVE ALBUM 感電の記憶』を聴く(Apple Musicはこちら)
―田渕さんとしてはどうでしょう? そういう話を聞いて。
田渕ひさ子(以下、田渕):嬉しいです。たいへん嬉しいです(笑)。
―アユニさんは、NUMBER GIRLのどういうところを好きになったんでしょうか。
アユニ:まず曲がむちゃくちゃ格好よくて。自分はこういうタイプの音楽を聴いてこなかったので、そこに衝撃を受けたんですよね。どこがサビかもわからないんですけれど(笑)、ギターの音に対しても「こんな音、聴いたことない」と思って。アルバムは全部聴いて、ライブ映像のDVDも全部買いました。
田渕:買ってくれたんだ。
アユニ:あとは田渕さんの過去のインタビューが掲載されている雑誌も買いました。そこからPixiesとか、いろいろ聴くようになりました。
SpotifyでPixies『Doolittle』を聴く(Apple Musicはこちら)
―そういう風に、体系立てて音楽を聴いたことも以前はなかった?
アユニ:なかったですね。歴史を知りたいというバンドに出会ったのが初めてだったので。シンプルに、音楽が楽しいっていう感覚を知ったような。そういう感覚でしたね。
田渕:なんだか、嬉しいですね。ギターを弾いててよかったって思います(笑)。
―田渕さんから見たアユニさんの第一印象はどんな感じでした?
田渕:人見知りっていうのか、フレンドリーなタイプではないなという感じはしたんですけど。でも「これは伝えとかなきゃいけない」ということはちゃんと伝えてくれるし、すごく周りを見てるというか、気がつく人だと思いましたね。音を出してる時も、すごく他の楽器の音を聴いている。すごいなと思いました。
―今年に入ってPEDROはツアーも行われました。バンドって、ライブを重ねるごとに変わっていくものだと思うんですが、PEDROの場合はどういう感じでした?
田渕:メンバー間のおしゃべりが多くなりました(笑)。最初にリハーサルした時も、アユニさんやドラムの毛利くんに対して勝手に「こういう人か」と思ったりもしたんですけど、最初は何をしゃべっていいかわからない、という感じで。
アユニ:そうでしたね(笑)。最初は“自律神経出張中”っていう曲のMV撮影で初めてお会いしたんです。そのときの3人のロケバスがすごい静かでした(笑)。
田渕:そこから距離感がだんだん近づいてきた気がします。ライブとかツアーをするようになると、楽屋でおしゃべりしたりして、ちょっとずつ距離が近づいてくる。そんな感じと、演奏をしてる最中の感じって、同じなんです。
―同じというと?
田渕:「ここでこの人がこう来る」みたいなものを理解し合えるようになって、お互いなんとなくタイミングを把握しあうようになるんです。アイコンタクトもするようになって。それでバンドが固まってきた感じはします。
19歳でNUMBER GIRLに入ったら、まずメンバーが喋ってるバンド名がわからない(笑)。その名前を覚えて帰って、CDを買いに行く、みたいな日々でした。(田渕)
―田渕さんはいろんなバンドをやってきたわけですが、どんなバンドもそういうものなんですか?
田渕:本当にそうですね。メンバー全員演奏技術の優れたミュージシャンの人が集まったバンドだったら、もちろん最初に合わせた時からみんな上手ではある。でも、たとえばご飯を食べに行った次の日とかは全然違うんですよ。喋って人となりがわかってくると、演奏もまとまってくる感じがしますね。
Spotifyでtoddle『Vacantly』を聴く
―アユニさんは、そのあたりはPEDROで初めて実感していることなんじゃないですか?
アユニ:そうですね。ライブ中の感覚としては全然違うものがあって。バンドだと自分たちで音を出してるので、一人じゃできないなっていう感覚が理解できました。そこに面白さもあるんだなって。
―バンドをやったことで、BiSHの曲のサウンドの聴こえ方も変わってきた感じはあります?
アユニ:めちゃめちゃあります。楽器のことがわかってきたから、「ここのギターはこんなに繊細な音作りをして、だからこういう音が出てる」というのもわかるようになったし。あとは、今までは「ドラムの音を聴いてリズムを取れ」とか言われても全く分からなかったんですよ。だけどそういう基本的なことも、楽器を自分でやるようになったらわかるようになったし。自然と、音楽に身体が乗る感覚がありました。
―ということは、PEDROで得たものがBiSHの活動にもプラスになった。
アユニ:完全にプラスになってますね。音のとり方も全然前と変わったし。「この曲のここはめっちゃ格好いい」とか思うようになりました。音をちゃんと聴くというか。そういう意味でも音楽が純粋に楽しくなったんですよね。
―話を聞いていると、本当にPEDROをやってよかったですねって感じがします。逆に、田渕さんが今のアユニさんと同じ年齢の頃は、どんな感覚で音楽をやっていたんでしょうか。
田渕:私は19歳のときにNUMBER GIRLに入ったんですよ。思い返すと……NUMBER GIRLでやっていたのはそれまで私が聴いてきた音楽と全然違ったので、必死でしたね。
まず、メンバーのメンズ達が喋ってるバンド名がチンプンカンプンでわからない。「こないだ買ったあのアルバムが格好よかったよ!」っていう話が一つもわからないわけです。「そのバンドはなんですか?」みたいな(笑)。だから、まずはその名前を覚えて帰って、CDを買いに行く、みたいな日々でした。
アユニ:そうなんですね。私と同じように、新しい音楽にどんどん出会っていった時代が田渕さんにもあったんですね。
田渕:もちろん。必死でしたよ(笑)。
今までの人生は、好きなものもなくて。でも、PEDROを始めて確実に変われたと思う。(アユニ)
―しかも田渕さんがNUMBER GIRLに入った頃は、今みたいにネットで調べられる時代、ストリーミングサービスで聴ける時代じゃないですからね。
田渕:そうなんですよ。YouTubeもないから。「教えて」とかも言えなかったんで、必死に記憶したり、バレないようにメモったりして。それを持ってCD屋さんにCDを買いに行ってました。だってね、私は中学、高校とすかんちのファンで、追っかけだったので(笑)。そこから1970年代のイギリスのロックを聴いてました。QUEEN、Led Zeppelin、T-REXから始まり、そういうものを沢山聴いていて。
―すかんちのルーツにあるグラムロックも聴いてました?
田渕:はい。SWEETとかも聴いていました。だからNUMBER GIRLに入って、いきなり「The Wedding Presentがさあ」とか言われてもチンプンカンプンで。しかも買って聴いても、「これってロックなんですか?」っていう(笑)。それまで聴いていたロックがあまりに濃かったし、ギターのプレイも全然違うんで。
―バンドに入ってから聴いたのは?
田渕:みんなが喋ってる会話に出ていたのは、もちろんPixiesがあって、ほかにはSuperchunk、Dinosaur Jr.とかも。そういうのをいろいろ聴きました。あの頃に一気に音楽の世界が広がりましたね。
―世代と時代は違うけれど、10代後半でいきなり聴く音楽が広がったという体験は、アユニさんも田渕さんも共通している。
アユニ:確かにそうですね……!(笑)
田渕:お互い、確変が起きた(笑)。
―ではアユニさんは音楽と出会って、自分自身どう変わった感覚がありました? それまで社交的な方ではないし、アクティブではなかったと言ってましたけれど。
アユニ:自分はもともと根が暗いんですけれど、確実にPEDROが始まってから自分の性格が変わりました。それこそ、ついこの間まで、こんなに喋れなかったし。一人の仕事が増えたりインタビューするようになったのもあるんですけれど。
私は、今までの人生の中で、趣味とか、好きなもの、尊敬できる人がなかったんです。なので、「つまらない人生だな」って思う毎日を過ごしていたんですけど。でも、好きなものや尊敬できるものができて、変わりました。
―好きなものができたことによって、自分の芯ができたというか。
アユニ:そうですね。辛い時にこれを聴いて元気を出す、これを見て元気を出す、みたいなものもなかったんです。探そうとしなかっただけかもしれないんですけれど、どちらにせよ自分にはなにも見つからなかった。でも、今はすごく辛いときとか、眠れないときとか、toddleの曲を聴いたりしています。
ずっとギターを弾くのが楽しい。しかもPEDROは自分が経験していない感じの音楽性で、それも楽しんでできています。(田渕)
―田渕さんに出会って、初めて好きなものができたと。めちゃくちゃいい話ですね。
アユニ:最初はこういうの、(田渕さんに対して)出さないでおこうと思ったんです。絶対隠し通そうって。だって、隣に田渕さんがいるのに、いきなりこんな話をし始めたらキモいじゃないですか(笑)。バンドもやりづらくなるだろうし。
……でも、今年wowakaさんと対談することができて。そのとき、ヒトリエが好きな気持ちを素直に伝えることができたんですよ。その後から、ちゃんとその人が生きているうちに気持ちを沢山伝えたいと思うようになって。だから気持ち悪くなるくらい言っておこうと。
田渕:いやいや、全然気持ち悪くないですよ! だって、こんな可愛い子に好きって言われて嬉しくない人、います?(笑)
―ははははは。自分が作った音楽がこんな風に響くというのはミュージシャン冥利に尽きると思うんですが。
田渕:本当にそのとおりですね。自分が作った作品、自分が出してる音を聴いて、何かを感じてくれた。伝わったんだなという感じがして。シンプルに嬉しいです。
―田渕さんは、自分の10代や20代前半の頃の自分に置き換えて、自分にとってのギターヒーロー的な人はいましたか?
田渕:この人の弾くフレーズが好きという、演奏面で好きなギタリストはいたとは思います。ギターヒーローというより、自分のアイデンティティとしてのギターですね。
―NUMBER GIRLのデビュー当時から田渕さんの鳴らしている音は突き抜けていた感じがありますし、NUMBER GIRLが解散した後も、田渕さんはギタリストであり続けている。その理由って、どういうものでしょう。
田渕:結果として、ですね。すごく頭悪そうな言い方で恥ずかしいんですけど、ずっとギターを弾くのが楽しいんですよ(笑)。それにまつわる全てが楽しいんです。だから、プロとして仕事をしているっていう意識がたぶん他の人に比べて薄いと思います。
ただただ楽しいって思ってやってることが多いんですね。弾いてるだけで楽しいし、フレーズを考える、練習する、ライブをする、レコーディングをする……その全部が好きなんです。仕事としての感覚がないのが、ちょっといけないとこかなって思うこともあるくらい。それくらい楽しくやってるんです。
―ギタリストにもいろんなタイプの人がいるじゃないですか。たとえば、どんなハウスバンドに呼ばれてもそこで合わせるセッションギタリストみたいな人もいる。求められる場所でなんでもやりますという。そういうタイプでもないですよね。
田渕:私の場合は、自分の好きなものが、そのつどハッキリ見えるんですよ。だから自然と「自分はこれがいい」っていう選択をしちゃうんで。何でもいいっていうわけではなくて。でも、やってほしいと言われたら喜んでやります。
―求められる場面としては、田渕さんらしいギターを弾いてほしいというのが多い?
田渕:そうですね。「もっとこうしてほしい」って言われないことが多いかもしれない。でもPEDROは、自分の中では経験していない感じの音楽性だし、ライブだとコーラスもある。それも楽しんでできています。
―アルバム『THUMB SUCKER』の話も聞かせてください。前の作品はエイベックスで、あくまでBiSHのアユニ・Dのソロプロジェクトという位置付けでしたが、今回はEMI Recordsに移籍して、本格的にバンドとしての活動が始まった感があります。まず、そのあたりの実感はどうでしょうか?
アユニ:移籍して大幅にチームが変わったとか、自分のやり方が変わったとか、そういうのはないですね。ただ、前からPEDROのツアーをやりたいって思ってたんですが、移籍など色んなきっかけがあって、今回の全国ツアーとリリースが決まって。そのことに対してはずっとワクワクしていました。
―アユニさんとしては、アルバムを作りたい、ツアーをやりたいという思いがあった。
アユニ:ありました。とにかくツアーがやりたくて。そもそも『zoozoosea』は7曲しかなかったので、ライブをやるために今回のアルバムを作った、みたいな感じです。
―レコーディング制作は、どういう感じだったんでしょう。
アユニ:まず松隈ケンタさんとSCRAMBLESのみなさんにデモを作ってもらって、それを田渕さんにお送りして。田渕さんのギターは宅録だったんですよ。
田渕:そうですね。デモの状態で松隈さんの仮歌とギターが入っていたんですけど、この通りじゃなくてもいいし、同じでもかまわないし、とにかく田渕さんの好きなように弾いてくださいという感じだったので。1曲ずつ取り掛かっていきました。
―お題を出されているみたいな感じ?
田渕:ある程度のフレーズは入ってるんですけど、それを変えるかどうかは、曲によってバラバラでした。ソロは大体自分で考えたフレーズが入っているかな。
アユニ:で、宅録したものをスタジオでアンプから鳴らしてレコーディングしていったんです。私は別にそこには来なくていいって言われてたんですけど、聴きたかったので、そこに行って。
田渕:そうそう! 来てくれてたよね(笑)。
アユニ:近くで聴きながら、「田渕さん、こんなギター弾くんだ」っていちいち感動してました。PEDROでしか聴けないギターの音を入れていただいていて、興奮しましたね。
田渕さんと出会った今は、「好きすぎて、この人になりたい」っていう気持ちもわかるんです。(アユニ)
―歌詞はアユニさんが書いていますよね。これも前とは少し違う書き方になっていると思うんですが。
アユニ:今までのBiSHの曲とか前作の『zoozoosea』では、自分のことだけをなぐり書きするような書き方しかできなかったんです。でも、今回は、妄想で誰かになりきって書いてみたり、好きな映画の脇役からインスピレーションを広げて書いてみたりとか。いろんな書き方をしてみようと思いました。
SpotifyでPEDRO『zoozoosea』を聴く(Apple Musicはこちら)
―好きな映画というと、例えば?
アユニ:『ローズ・イン・タイドランド』っていう、お母さんもお父さんもヤク中で死んで、誰もいない田舎の小屋で一人で暮らす女の子の物語なんですけど。そこにディキンズという、脳を取り除いた男の子が出てくるんですね。それが“Dickins”という曲になっていたり。聴く曲の幅が増えたことで「こういう表現の仕方があるんだ」って思えるようになって、自分のことを書かなくてもいいんだって思いました。もっと自由に表現してもいいんだなって思わせてもらったというか。
―それで言うと、歌詞の書き方にもNUMBER GIRLの影響はあるんですか。
アユニ:そこはもう、NUMBER GIRLばっかり聴いてたんで、自然に出てしまいました。田渕さん本人がいるから、ちょっとやっても許されるかなって(笑)。
―今、この取材をしている時点で、NUMBER GIRLは再結成のツアーをする直前です。まずニュースを聞いてアユニさんはどう思いました?
アユニ:嘘だと思いました。
田渕:ははははは。
―田渕さん、当事者として、NUMBER GIRLというバンドが現在進行形のバンドになったことを、ご自身の中でどういう風に捉えていますか。
田渕:「元」が消えたなって思います。よく「田渕ひさ子(元NUMBER GIRL)」って表記されていたわけですけど、その「元」がなくなったなって。
私はいろんなバンドに所属していたので、たとえば自分の名前に注釈がつく時に「(元NUMBER GIRL、bloodthirsty butchers、toddle)」っていうふうになって、長くて申し訳ないなって思ってたんですよ(笑)。それに、今やっているバンドじゃなくて「NUMBER GIRLが好きでした」って言われてイヤだと思ったことも全くないんです。でも……やっぱり「今やってるバンドになったんだな」っていう実感がある。それはやっぱり全然違いますね。
―PEDROの昨年の9月のライブで“透明少女”をやったときは、NUMBER GIRLは「過去の伝説」だったわけですよね。でも、それが現在進行形のものになった。それはどういう実感なんでしょうか。
田渕:不思議なめぐり合わせだと思います。去年の9月にPEDROで“透明少女”をやったときは、またNUMBER GIRLをやるって決まっていたかどうか、微妙な時期で。本当に偶然なんですよね。
しかも今、PEDROとNUMBER GIRLのツアーも併走している。自分の中ではいいバランスでやれている感じがします。PEDROのギターがすごく難しくて、今もツアーに向けて練習しているところですし、そうなるとギタープレイとしてはどっちにもいい効果がある感じがします。
―NUMBER GIRLの再結成を発表してからの反響って、どうでした?
田渕:復活するというアナウンスの後の反応の大きさはすごかったですね。その中には、賛否両論みたいなものもあったんです。熱狂的に好きだと言ってくれている方の中には「再結成してほしくなかった」という人もいて。
それもわかるんですよ。過去のライブの印象が強烈で、そこから何かが少しでも下がっていたら許せないだろうし、それが嫌だっていう気持ちがあるんだろうなと。でもまあ、そういう人こそ観てもらえればと思いますけれど。
アユニ:私も、めちゃくちゃ楽しみです。
―それこそアユニさんがそうであるように、NUMBER GIRLは、いろんな人の人生を変えて、たくさんの人に影響を与えてきたバンドだと思うんです。それを田渕さんはどう捉えていますか?
田渕:まあ……いろんな人の人生を変えた自覚はないです(笑)。でも当時、そのくらいのエネルギーを持ってメンバー全員やっていたと思うので。今PEDROでやっていても、アユニさんが時を経て作品に触れて、自分のギターが好きだと言ってくれたりする。
10何年前の作品を今聴いて感動してもらえるのは嬉しいし、やってきてよかったって、本当にそういう感覚があります。胃を痛くしながら、身を削ってやっていたバンドがそう言ってもらえるのはミュージシャン冥利に尽きるというか。
―アユニさんは、NUMBER GIRLに出会って、自分の人生はどう変わったと思いますか?
アユニ:単純なことを言うと、私の女の子のファンに、たまに握手会とかで「好きすぎてアユニちゃんになりたい」みたいなことを言う子がいるんです。前はそれが理解できてなかったし、「ライブ映像を見て泣いた」とか言われても、そういう感情がなんだかわからなかったんです。でも、今はその気持ちがわかるようになった。ライブ映像を見て泣くし、「好きすぎて、この人になりたい」っていうのもわかるし。そういうのはあると思います。
―新しい扉が開いた実感がある。
アユニ:そうですね。なんか、明るくなっちゃったんですよ。
田渕:明るくなっちゃった(笑)。
―そうやって自分が知らなかった自分の扉を開いてくれるのが音楽の素敵な力のひとつですよね。
アユニ:そう思います。今はとにかく、音楽が楽しいので。ライブでも、自然に笑うってことが今まで一切なかったんです。だから無表情な人みたいな印象がまわりにあったと思うんですけど。でも、今は笑いたくなくても自然と笑っちゃう。……やっと、「楽しい」という感覚がわかったのかもしれない。そういう自分になったと思います。だから、何度でも伝えたいですけど、本当に感謝してるんです。
田渕:ふふふふ。……ほんと、ギター弾いてきてよかったなあ(笑)。
- リリース情報
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- PEDRO
『THUMB SUCKER』初回限定版BOX仕様(2CD+Blu-ray+photobook) -
2019年8月28日(水)発売
価格:10,800円(税込)
UPCH-29339DISC1
1. 猫背矯正中
2. Dickins
3. STUPID HERO
4. NIGHT NIGHT
5. SKYFISH GIRL
6. EDGE OF NINETEEN
7. ボケナス青春
8. おちこぼれブルース
9. NOSTALGIC NOSTRADAMUS
10. ironic baby
11. 玄関物語
12. アナタワールド
13. ラブというソングDISC2『super zoozoosea』
1. ゴミ屑ロンリネス
2. GALILEO
3. 自律神経出張中
4. 甘くないトーキョー
5. MAD DANCE
6. ハッピーに生きてくれ
7. うた
※『zoozoosea』を現在の編成で再録Blu-ray
2018.09.25 新代田FEVER
「PEDRO first live “happy jamjam psyco”」
「Document of THUMB SUCKER」
2019年春のアルバム制作開始から、7月17日に行われたツアー初日までの舞台裏に完全密着。膨大な映像を1時間に収めた作品。
- PEDRO
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- PEDRO
『THUMB SUCKER』映像付通常盤(CD+DVD) -
2019年8月28日(水)発売
価格:6,458円(税込)
UPCH-205261. 猫背矯正中
2. Dickins
3. STUPID HERO
4. NIGHT NIGHT
5. SKYFISH GIRL
6. EDGE OF NINETEEN
7. ボケナス青春
8. おちこぼれブルース
9. NOSTALGIC NOSTRADAMUS
10. ironic baby
11. 玄関物語
12. アナタワールド
13. ラブというソングDVD
2018.09.25 新代田FEVER
「PEDRO first live “happy jamjam psyco”」
- PEDRO
-
- PEDRO
『THUMB SUCKER』通常盤(CD) -
2019年8月28日(水)発売
価格:3,240円(税込)
UPCH-205271. 猫背矯正中
2. Dickins
3. STUPID HERO
4. NIGHT NIGHT
5. SKYFISH GIRL
6. EDGE OF NINETEEN
7. ボケナス青春
8. おちこぼれブルース
9. NOSTALGIC NOSTRADAMUS
10. ironic baby
11. 玄関物語
12. アナタワールド
13. ラブというソング
- PEDRO
- イベント情報
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- 『DOG IN CLASSROOM TOUR』FINAL
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2019年8月29日(木)
会場:東京都 TSUTAYA O-EAST
- プロフィール
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- PEDRO (ぺどろ)
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BiSHのメンバーであるアユニ・Dによるバンドプロジェクト。アユニ・Dがベースボーカルを執り、全楽曲の作詞から一部作曲までを行う。ライブは、ギターに田渕ひさ子(NUMBER GIRL、toddle)、ドラムに毛利匠太をサポートメンバーに迎えたスリーピース形態で展開する。2018年に『zoozoosea』でデビューし、2019年8月28日に1stフルアルバム『THUMB SUCKER』をリリース。
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